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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第六章【聖都】
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懐かしいと懐かしい



純白の神城(ホワイト・パレス)



「陛下っ! 陛下は何処(いずこ)へ!?」

 赤い衣を纏った大臣……男達は血眼になって自分達が仕える主人を探していた。



 綺羅びやかな城の中では、慌ただしく人が右往左往していた。



(くっくっくっ、もうすぐ吉報が届く……そうなれば私が……いや、我が一族がこいつらより……くっくっくっ)


 一人の大臣は、周りで必死に叫びながら陛下を心配する素振りをみせる大臣達を見て、心の中で笑わずにはいられなかった。



(くはっはっはっ、バカな奴らだ。心配なんかせずとも、あの陛下に何かあるわけがない。それこそ不敬というものだ)

 



「随分と冷静なのですな、ダコバス殿……」

 一人の若い大臣が、心の中でほくそ笑む大臣に声をかけた。


「き、貴殿は陛下が心配ではないと?」

 ダコバスと似たような……豚みたいな体型の大臣も若い大臣と一緒にダコバスに、少しだけ声を荒げて声をかけた。


「……あの陛下ですぞ、何を心配することがあるのです。きっと少し息抜きに出掛けられただけなのでは?」

 ダコバスは不敵に笑って見せた。



「まるで陛下がどこに行かれたか知っている様な口ぶりですね?」

「ふん、一家臣である私がそこまでは知りませんよ。今は亡きレインバルト殿と違って【追跡】なんてレアスキルも持っていませんしね」


 ダコバスは本当に知らなかった。何処か散歩にでも行っているのでは……そう思っていた。



「仮に持っていたとしても、陛下を追跡する度胸なんて私にはありませんよ。貴公らならしますか?」


「そ、それは……」

「……ま、まぁ私は陛下がご無事ならそれで……」



 二人はそそくさとダコバスから離れ、再び陛下と叫びながら城の中を探しにまわっていった。



(ふん、雑魚が……しかし、確かにおかしい……侍女達でさえ陛下の行方を知らないとは……秘密の地下に?)


「あそこは確かネム…おっと!」

 ダコバスは慌てて口を抑えた。



 今では神国民のほとんどからその存在を忘れ去られた第三王女ネムリス。女王の唯一の弱味と言っても良かった。だが今の女王には然してなんの弱味にもならない。

 今の女王体制は磐石。寧ろ下手にその名を出した方が命に関わる。



(あと数年……その秘密に早く気づいていれば、サウズ家は……)



 ダコバスは少しだけ過去を思い出した。



 幼い頃の女王はそれはもう妹君達を溺愛していた。



 王位継承の儀でもある【Eランク】の迷宮攻略……今思えばあの頃から女王陛下は変わられた。


 まだこの国にも少しだけ存在していた魔族の奴隷……あの頃から女王陛下は徹底的に排他……いや、排除し駆逐していった。


 私が飼っていた魔族も数年は隠し通せたが、それもバレそうになりホウライ王国へと売り飛ばそうとした。しかし準備が足りず、魔族には逃げられ金も手に入らず散々な結果となった。



 もし、陛下が変わられなかったのなら……恐らく神国の政策はガタガタだった気がする。おまけに体の弱い妹……政策どころではなかった筈だ……


 大臣達からは、際限なく責められていた筈だ。もしそうなら私だって責めていた筈だ。その地位を奪う程に……


 だが幸か不幸か、そうはならなかった。あの頃の陛下は本当に恐ろしかった……今でも恐ろしいが……なんせ【断罪の魔女】とまで呼ばれる程だったのだから……


 それまでの陛下は、良く言えば心優しく、悪く言えば気の弱いお方だった。魔族を嫌う気はあったが今程ではなかった……なんせ民から【微笑みの聖母】とまで言われていたのだから。



 恐らく陛下は魔族を最低でも一匹は飼っている……城の中の全ての人の流れを調べたが、誰もネムリス様のお世話をしていない。ならば、恐らく魔族を使っている筈だ……


 弱味につけこめる……だが、出来ない……今、そんなことをすれば間違いなく消されるのは私だ……いや、私だけならまだいい……もし、妻や子、孫にまで及んだら……



「……あと数年早く気づいておれば……」

 ダコバスはボソッと誰にも聞こえない声で呟いた。すると、




「陛下だ!陛下が見つかったぞ!」


 そんな声が城内に響き渡り、誰もが女王のいる城の中庭へと向かった。



「中庭か……まさか転移の神器を? ならば外へ?」

 ダコバスは何故か一抹の不安を覚えた。そして他の者達同様、中庭へと向かった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




【純白の神城・庭園】



「へ、陛下ご無事で何よりです……し、しかし、一体どちらへ?」

 一人の大臣が頭を垂れながらオズオズと女王に尋ねた。


「その様なこと、そなたには関係ない」

 長い髪を(なび)かせながら、ディアネイラは大臣に見向きもしなかった。



 大臣達が徐々に集まりだすと、誰もがその目を疑った。



 ディアネイラの後方にある巨大な牢……その中に閉じ込められた大勢の魔族。そして……女王の片手に掴まれ傷だらけで意識のない見知った顔。



「あれから、まだ抵抗するとは……」

 ディアネイラは自分が掴んでいるその人物を大臣達の方へ放り投げた。


「「レ、レインバルト殿っ!?」」

 誰もが驚きを隠せずにいた。うまく頭が回らなかった。何故?と。


「裏切り者よ……何処かに閉じ込めておきなさい」



 大臣達が困惑する中、ディアネイラが一睨みすると大臣達は体を震わせ、言われるがままレインバルトを引きずるように何処かへ連れていった。



「ダコバス、前へ」

 ディアネイラは静かにそう呟いた。


「は、はい……」

 少し後ろにいたダコバスはオズオズとディアネイラの傍へと寄っていった。

(ば、馬鹿な……何故、陛下が魔族を!?まさか戦場に!?い、いや……それよりも魔族狩り(やつら)は失敗したのか!?ま、まさか……私にではなく、直接陛下に献上したというのか!?)



「こいつらを2日後に処刑します、貴方が仕切りなさい」

「わ、私がですか?」


「ええ、そうです……」

 ディアネイラはそっとダコバスの耳に顔を近づけた。

「貴方が雇った連中をつけたお陰で捕らえられたのです、貴方の手柄です」


 ディアネイラは不気味に微笑んだ。ダコバスはそれだけで何が起こったのかを察した。


「は、はは……」

(ば、ばれていたのか……)

 結果オーライではあったが、ダコバスはディアネイラの恐ろしさを改めて痛感した。



 ディアネイラは大臣達を置いて、城の中へと進んでいった。

「2日後までは1匹も絶対に殺すな……いいですね?」

 そしてディアネイラは2日間の魔族の管理もダコバスに任せその場を後にした。




「誰か【捕縛】所持者をありったけ連れてこい!ギルドにも依頼しろ!」

 ざわめき収まらぬ中、ダコバスは指示を飛ばしながら牢へと近づいていった。

「さ、流石は陛下だ……30匹はいるか? これほどの魔族を一気に捕らえると……ん?」


「お、お前は!?」

「あ、あなたは!?」


「兎人族の…ララか!?」

「ダコバス……サウズ……ヒュバイン……」


 牢の中、リリスと抱き合うララをダコバスは見つけた。


「……くはっはっはっはっはっ!なんとも懐かしい顔だ!」

「…………っ」


 ダコバスは高笑いし、反対にララは苦虫を噛むような顔で体を震わせた。



「妹はどうした?ええ?くくくっ、楽しい2日間になりそうだな」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




【純白の神城・王の間】



 玉座に座り、少しだけ疲れた様に息を吐く女王の姿があった。



「お疲れの様ですね?」

 ふと、女王以外には誰もいない筈の間に男の声が聞こえた。


「…………ふふふふフフフフ、今日はなんて日でしょうか?」

 ディアネイラは嬉しそうに微笑んだ。

「頑張っている私に、(しゅ)がご褒美をくれたのではと錯覚します」


「おやおや、貴女にそう言って頂けるとは……ふふっ、光栄ですね」

 男も嬉しそうに小さく微笑んだ。



 見ると、ディアネイラと相対するように少し離れた所に黒いフードを被った一人の男が立っていた。



「お久し振りですね……あの戦争以来ですか?」

「そうですね……存在は認識していましたが、こうして会うのは数百年ぶりですね」


「王国にその存在は確認していましたが、中々会えませんでしたからね……ええと……」

「ふふ、今は【死神】と呼ばれています……」


「あらあら、あの四傑の一人だったとは……」

「そういう貴女こそ今は女王ですか……」


「……主を差し置いて【神】を名乗るのは些か不本意ですが……」

「……主を差し置いて【王】を名乗るのは些か不本意ですが……」



 二人は、ふっと小さく微笑んだ。



「ところで今回はかなりの魔族を捕らえたとか?」

「耳が早いですね……神聖なるアルカ大森林に巣くっていました」


「みたいですね……盲点でした……」

「仕方ありません……あそこはラファエルさんの領域でした」


「……気づいていましたか?数か月前にそのラファエルさんの存在が消えたことに?」

「原因に会いましたよ」


「なんと!」

「一人の若者がZEROの領域に到達していました……」


「馬鹿な!? ラファエルさんを人間が!?」

「信じ難いですが事実です……()の眼で視たので間違いありません」


「そ、そんなことが……」

「ですが【天啓】を使いました……直に彼も私達の新たな同胞です」


「それならいいのですが……」

「何か不安でも?」


「? 気づいてなかったのですか? あの国に奴らがいた事に……」

「奴ら?……ま、まさか!?」


「気づいてなかったのですか……ええ、いましたよ……それも七匹全員」

「馬鹿な!?」


 ディアネイラは立ち上がった。


「くそっ、今すぐにでも!!」

「やめた方がいい」


「何故です! 今なら奴らを一網打尽に!」

「もしあの【スキル】を目覚めさせたらどうするのです?」


「うっ……そ、それは……」

「今はまだ覚醒していない様子……下手に悪魔どもの尾を踏むことはないでしょう……それに……」


「それに?」

「我々は圧倒的に数が足らない……ラファエルさんは消え、新たな転生を終えたのは我々だけです……せめてミカエルさんがいなくては」


「……そう、ですね……」

 ディアネイラは悔しそうに歯軋りしながら玉座に座り直した。


「ですが、吉報もあります」

「?」


「メタトロン様の迷宮を見つけました」

「なっ!?」


「あの方が目覚めてくれれば少しは攻勢になります。その知恵もお貸し頂けるでしょう」

「ふ、ふふふふフフフフ……それはなによりです。しかし、(にえ)は?」


「貴女の所のハクアさんでしたか?彼女でどうです?資格は充分です」

「フフフフ、貴方の眼も流石ですね……彼女に目をつけるとは……そういえば戦場は?」


「全く貴女ときたら……抜け目ないのか抜けているのか……負けてしまいましたよ」

「そう……まぁ別に構わないわ……」


「しかも偶然なのか……ハクアさんを倒したのはあの【ルシファー】でした……我々を裏切りメタトロン様を殺したあの……」

「…………ルシフェル様…………っ」



 二人の間に沈黙が流れた。




「……まぁ、ラファエルさんを倒した人間は貴女に任せます。メタトロン様の方は私に任せてもらえますか?」

「……分かりました」



 男はその場を去ろうとした。



「ではまた、ガブリエルさん」

「ではまた、ウリエルさん」






 あ、あれ?もしかして話が少し大きくなってきた?書ききれるのか……不安になってきました。


 〇〇エルが出てくる以外は、妄想通り書いてます……一応、ネムリス地下幽閉?とかの補完(90%)は出来たかな……?残り(10%)はこの章の最後に。


 ララとルルを知ってる、懐かしき神国大臣が登場。彼の運命は決まってます。


 アリスを殺した黒男(死神)も早々に再登場。この辺りの設定はアトラスが出てきた辺りから考え始めたので、矛盾がないよう話を書きたいと思います…………か、書けるのか……な……?


 今のところは予定通り(50%):予定外(50%)で話を進めていきます……笑


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