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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第六章【聖都】
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人雨と飛翔



「う、ぐ、がああああぁぁああああっ!!」

 俺は叫んだ。唇は切れ、口の中に鉄の味が少しした。



 泣きそうな気持ちを必死に堪えた。こんなとこでクヨクヨする資格なんて俺にはない、皆を助けに行かないと。



 俺は地下の抜け道を再度飛翔し外へと向かった。



 こんな時に転移の神器があったら……てか、ゼータは何してんだ?


 だけど、ジェガンの時より深刻な状態なのに、猶予があるからなのか、まだどこか冷静な自分がいる。まだ俺は戦えるし、絶対に皆を助けてみせる。


 てか、ディアネイラ?は絶対に許さない。聴きたいことは山程あるが絶対に許さない。そもそも、あんな危険な奴を倒すだけで許すつもりはない。


 それだけ、ディアネイラ?は危険だ。今いち確信は持てないが、会話の中から多分あいつの正体は分かった。

 もし俺の予想が正しいなら、あいつはレイナの夢の最大の障害だ。


 俺はそっと右眼辺りに手を添えた。



 戦えるのか?



 俺はハッとなり、首を横に振った。

 言い訳しそうになった。また右眼が痛んだらどうしよう……って。まともに戦えるのかって。



 そんなの関係ねぇ!!



 痛んだら痛んだだ!捕まった皆はもっと苦しい筈だ!絶対に助けてみせる!!



 そんなことを、考えていたら外の光が見えてきた。俺は更に加速して外へと飛び出た。



「ゼータ、転移だ!! って、おわっ!?」

 俺は空に向かって叫んだが、目の前の光景に驚愕した。



 人がゴミのようだ……て、違うな。親方、空から女の子が!……これも違うな。

 空から人が降っていた。それも無数に。アルカディアの空を覆いつくす様な数の、灰色の鎧を纏った騎士達が森に降り注いでいた。



「竜斗ちゃん!?」

「竜斗様!?」


 見下ろすとゼータやルル、他の皆はその灰色の騎士達と戦っていた。


「皆!? 魔名宝空、全開!!」

 俺は皆を魔名宝空の球体で守護した。


 俺はゼータとルルの傍に着地した。


「一体何が!?」

「いきなし降ってきたのよ……しかもこいつら神国の【本軍】。弱いけど、この数に苦戦してたの」



 俺は空を見上げた。まだ降ってくる。一体何人いるんだ……?



 そして、ぎこちない動きで騎士達はどうにもならない球体を攻撃してきている。休むことなく。



「まさか、こいつらにも【操作】を?」


 多分俺の予想は合ってる。さっきの3人と同じで騎士達は、苦しそうな顔で、球体を攻撃してくる。ランクの違いでどうにもならないのに、それでも攻撃してくる。



「操作って?」

 ゼータが訊ねてきた。


「地下にディアネイラ・スレイヤルが現れたんだ」

「なっ、なんですって!?」


 ゼータだけではなく、皆も驚きを隠せずにいた。予想していたことより最悪な状況だ。



「ディアネイラが操作を使って……ごめん、何人かを聖都に連れていかれた……」

 俺は申し訳なさそうにルルを見つめた。


「ま、まさか……お姉ちゃん……も?」

 ルルは察したのか体を震わせていた。


「でも今ならまだ間に合う! スキル【天啓】でディアネイラも2日後までは手を出さない筈なんだ!」

「ちょ、ちょっと待って頂戴! 女王は【天啓】も持っているの!?」


「ああ」



 俺は手短に修練の間で起こった事を皆に話した。その間も騎士達は俺達を攻撃してくる。でも球体はびくともしない。なんともシュールな絵面だった。



「まさか……地下でそんな事が……」


「ディアネイラお姉さま……」

「ごめん、ネム……俺は、皆を助けるためにディアネイラを……ネムのお姉さんを倒すよ」


 ネムは首を横に振った。


「分かって……います……この作戦が始まった時から覚悟はしてました……」

「ネム……」


「でも、もし……いえ、なんでもありません……」

 ネムは言いかけてやめた。



「……それで、聖都まで転移したい……頼めるかゼータ?」

「う~ん、厳しいわね……私は聖都には行ったことないし、行けたとしても恐らく、多重発動による結界が聖都を護ってる筈よ……」


「そうか……なら、あいつらに頼むか」

「あいつら?」


「ゼータ、レイナ達の所に転移してくれ」

「! 了解よ」

 ゼータは今ので察してくれた。てか、この状況ならなんとなく分かるか。



「竜斗様……」

 ルルは声を震わせながら呟いた。


「ごめんルル……俺は皆を……ララを護れなかった……でも、絶対に助け出してみせる」

「…………信じてます」


「ルル?」

「私は竜斗様を信じてます! だから、お姉ちゃんを、皆を絶対に助けて下さい!」


 俺はルルだけじゃなく、皆を見渡した。皆は小さく微笑んでいた。



「行ってこい竜坊!」

「ララちゃん達を助け出すのよ」

「リリスお姉ちゃんもね!」

「お兄ちゃん気を付けて!」

「無理をしてはダメですよ!」

「竜斗様」

「竜斗殿」

「竜斗様」


 ボブおじさんが、ジュンちゃんが、ルークが、ソラちゃんが、マナさんが、シューティングスターが、テトラが、皆が俺を励ましてくれた。ヤバイ……泣きそうだ……こんな、頼りない俺を皆はまだ信じてくれてる。



「俺は……」

「頑張って……は変ですかね? 皆さんをお願いします竜斗様」


「ルル……俺は……うん、いってきます!」

「いってらっしゃい、竜斗様」

 俺は泣き言を言うのをやめた。ルルはそんな俺を笑顔で送り出そうとしてくれた。



 俺は刀の神器【絶刀・天魔】と籠手の神器【森羅万象】を再度発動させた。そして【炎・雷】属性を刀に付加させた。



【上段の構え】+【<爆>属性】


「上段・爆の位 バンカーバスター!!」



 俺は未だに無駄な攻撃をしてくるウザい騎士達を、刀を巨大化させて降り下ろし地面ごと斬り飛ばした。そして今度は【炎・地】属性を付加させて、脇構えをとった。



【脇構え】+【<鋼>属性】


「陽金・鋼の位 ウルツァイト!!」



 巨大化させた刀を逆袈裟斬りで振り抜いて、更に騎士達を斬り飛ばした。取り敢えず皆の周りに騎士達はいなくなった。


 そして皆が見守る中、俺はゼータと共にレイナ達の元へ転移した。





 俺は知らなかった。ルルがその場で泣き崩れたのを……俺は知らなかった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「レイナ!」

 俺は、ゼータと共に転移してくると、レイナの元に駆け寄った。


「竜斗様!」

 レイナは嬉しそうだが、どこか不安そうな顔で、こちらに気づいた。


 みると、レイナ達と、鎖に繋がれたままの七極聖の面々がいた。そして、アーシャ・スレイヤルも。



「彼が……天原竜斗……?」

「みたいですね」

「本当に……子供……」

「ふぅむ、こやつもイケメンだのう……」

(ひが)むなよヒレン」

「うるせー根暗野郎! 僻んでんのはてめーだろ!」


 騒がしい奴らだ、俺はそれどころじゃないのに。てか、闇王に子供とか言われたくない!



「遅かったですね竜斗様」

「ごめん、レイナ……俺は……」

「?」



 俺は皆に、修練の間で起きたことを簡潔に話した。内容は結構省いた。




「竜斗、お前っ!!」

 バアルが俺の胸ぐらを掴んできた。


「止さぬかバアル!」

 ガオウがバアルを俺から引き剥がした。


「なんで……なんで、お前がいながらリリスをっ!!」

 バアルは今にも泣き崩れそうに叫んだ。


「ごめん、バアル…………後で好きなだけ殴ってくれて構わない……でも今はっ!」



「それでどうするんだ竜斗?」

 ゼノがどうするか尋ねてきた。ゼノも真剣にどうするか考えてる。


「取り敢えず……皆の魔力は?」


「少しは回復してきましたが、あまり残っていません……七極聖も同じかと……」

 サラが申し訳なさそうにしている。



「なら、やっぱ直接行くしかないか……」

 俺は言いながらアーシャに近づいた。


「どうかしまし…きゃっ!?」

 アーシャは可愛い悲鳴をあげた。


 それもその筈……だって俺は今、アーシャの腰を片手で抱き抱えているのだから。


「な、何をっ!?」

 アーシャは足をバタバタとさせている。



「一体どうする気だ?」

 ルキが冷静そうに尋ねてきた。


「どうするもこうするも……」

 俺は言いながら、今度は空いている片手をレイナの腰に手を回して抱き抱えた。


「りゅ、竜斗様!?」

 レイナは驚いていたが、同時にどこか嬉しそうでもあった。


「皆は森の方をなんとかしてくれ、俺の魔名宝空もいつまで持つか分かんないし……俺は、3人で聖都を目指す!」



「それなら皆の回復を待ってから、聖都の近くまで転移すればいいのでは?」

 アトラスは冷静に状況を分析していた。


「それはやめた方がいいです」

 意外にも俺に抱き抱えられたままのアーシャが提案してきた。


「なんで?」

「理由は解りませんがお姉様は貴方を欲して、スキル【天啓】を使ったのです。なら全力で貴方を聖都に間に合わせないようにする筈です」


「だから?」

「転移に頼った作戦は愚策です、それなら貴方がおっしゃった様に直接向かう方が良いかと」


「根拠は?」

「……七極聖の神器は全てお姉様が創造してます、どんな仕掛けがあるかわかりません」


 なるほど……有りうるかも……そんなこと出来るのか知らないが、七極聖の転移の神器を封じられたら大変なことになる。例えば発動出来なくなるとか、遠隔で壊されるとか……出来るのか知らないが。



 ならやっぱ直接行くしかない。



「ゼータ魔力は?」

「…………正直に言ったら流石にもう限界……転移は得意だけど流石に使いすぎたわ」


 ゼータは手でバツを作ってる。諦め早いな!まぁ流石に頼りすぎた。仕方ないか。



「竜斗ちゃんこれ」

 ゼータはそう言って転移の神器【帰巣本能(マクロ・ス)】を渡してきた。


 つまり、自分は行く気がないと……


「か、勘違いしないでよ! 皆のためにも私は残った方がいいと思ったの、それだけよ!」


 そんなツンデレキャラみたいに言うな!殺すぞ!


 そんな訳で俺はレイナとアーシャを連れて行くことにした。後から思えば直接行くことになったのもスキル【天啓】によるものの気がしてきた。




「……僕も絶対に行くからな」

 魔力が回復しアルカディアが落ち着いたらバアルも絶対に来るそうだ。


「バアルだけではない、我々も必ず駆けつける」

 ガオウも真剣な表情で歯がゆそうにしている


「こちらは安心して下さい、きちんと護ってみせます」

 過去の経験からかサラは今度こそはと意を決している。



 他の皆も俺が安心する様な言葉がけをしてくれた。



「よくわかんねーが気を付けろよ、女王陛下はやべーぞ、マジで」

 何故か炎王が励ましてくれた。


「不敬ですよ、ヒレンさん」

 風王が炎王を睨んでる。


「アーシャ様……気を付けて……」

「そもそも私は強制なのですね……ありがとうございますプリンガさん」


 アーシャは呆れた顔で項垂れている。当然だ。道案内はいるし、こいつを放っておくのも危険だ。




 俺は魔名宝空を発動させて、森羅万象で属性を付加させた。七極聖は変わった形状(羽根だけど)の魔名宝空に驚いている。



「あの……一体何を……?」

 アーシャはキョトン顔をしていた。



 待っててくれ皆……絶対に、絶対に、絶対に助け出してみせる。



「あの……聞いてますか……?」



 期限は2日……絶対に間に合わせてみせる。俺は嵐属性を魔名宝空に付加させた。辺りには砂塵が舞っている。



「えっ……?」



 俺は脚に力を込めてスレイヤ神国・聖都スレイヤの方を鋭く見つめた。ん?なんか……()眼が熱い……まさかな……?



「ちょ、ちょっと、待って……き!?」



 俺は神器でできてる羽根(盾)を羽ばたかせて飛翔した。




「ゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ………………ぁ」




 皆は、あっという間に俺達がその場にいなくなったのを、アーシャの悲鳴が段々と小さくなっていく事で感じていた。






 どーもです。

 好きなCMが、JTの折鶴のCMでお馴染み、DAXです。改めて、あれ良いですよね?

 演出も、音楽も、言葉も、モデルのリヴさんも美しくて好きです。


「遊んでいるようで、祈っている。指先から願いを吹き込んでいく」



追伸、三太郎も好きです。



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