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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第六章【聖都】
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操作と光牢



 ディアネイラが片手を高々と挙げると不気味に光だした。



「ふふふふフフフフ、天の裁きをその身に受けなさい」

「っ!?」


 俺はヤバイと感じ、すぐに【魔名宝空】の羽を拡げた。



 突如、天井を貫いて無数の光の矢が降ってきた。もはや流星雨と言ってもいいだろう。

 暫くの間、流星はディアネイラを除いて修練の間に降り注いだ。辺りは土煙に覆われた。


 土煙が晴れるとディアネイラは何事もなかったように悠然と立っていた。



「ああ、忌ま忌ましい……天の裁きを防ぐなんて」

 ディアネイラは、緑の球体に包まれた無傷の魔族を見て、恨めしそうに呟いた。



 天井からは未だにパラパラと石や土が落ちてきている。恐らく城は大変な事になってる筈だ。いつ崩れても可怪しくないかも。



「まぁランクZEROなら、この程度は当然ね……さてどうしようかしら……」

 ディアネイラは不気味に微笑んだ。まるで遊んでいるかのように。


「!?」

 俺は寒気を覚えた。

「皆逃げろ!!」

 俺は強く叫んだ。右眼のあまりの痛みで未だに動けない。もういっそ、眼が無い方がいいくらいだ。


 俺の声で魔族の皆は、地下通路(抜け道)に向かって駆け出した。まだ結構な数が残っている。



「妾も今はこの神器しか持ってきていないし……人の体って本当に不便ね……」

 ディアネイラはぶつぶつと呟いている。



「竜斗様!」

「竜斗さん!」

 ララとリリスが、俺とヒュースの元に駆け寄ってきた。ヒュースはまだ横たわったままだ。



「そうだわ! 折角だからアレを使いましょう」

 ディアネイラは顔の近くでポンと両手を叩いた。そして、パチンと指を鳴らした。


「ふふふふフフフフ、これは中々いいわよ」

 ディアネイラが微笑むと、後ろから見たことのない奴等が3人現れた。


「ぐっ……」

「うぅ……」

「く……う……」

 3人は苦しそうにしながら、ぎこちない動きをしながら徐々にディアネイラの前に歩みでてきた。


「アーシャ小飼の3人……中々面白いスキルを持っているから楽しめそうね……フフフフふふふふ」

 ディアネイラは両手の指を細やかに動かしている。



「まさか……操っているのか?」

「ご明察、妾の天……ではなくてスキル【操作】よ。いきなさい、妾の可愛い人形」


 ディアネイラは嬉しそうに、無邪気な子供のように、3人を操っていた。

 3人はぎこちない動きで俺達に向かって駆け出してきた。



「くっ!」

 痛みで満足に動けそうにない。でも俺は無理矢理立ち上がった。

 俺は刀を発動させて迎え撃とうとした。



(あるじ)!」

 すると、一人の男が俺達を庇うように3人に立ちはだかった。


「レインバルト!?」

「守護を任されておきながら申し訳ない……」


 レインバルトはボロボロになりながら3人を相手にした。




「本当に愚かねレインバルト……救いようがないわ……妾に楯突き、(あまつさ)え穢らわしい魔族まで庇うとは……本当に……愚かね……」

 ディアネイラは少しだけムスッとしている。


「女王よ……な、何故ここまで魔族を……」

 レインバルトは3人の攻撃をギリギリで受けながら、ディアネイラに問うていた。


 傷だらけだがレインバルトはSランクだ。普通なら3人の攻撃にそこまで苦戦することはない。

 原因は3人の異常な動きと連携にあった。休むことなく、隙を与えないように攻撃を繰り出している。神器も発動させずに、その身だけでレインバルトに攻撃を繰り出している。

 手も足もボロボロで、血が噴き出している。それでも攻撃を止めない。


 ディアネイラが無理矢理操っているからだ。



「痛っ……もう止めてくれ……」

「ひぃ、ひぃ、ひぃ……」

「うぅ……アーシャ様……」

 3人は悲痛な叫びをあげ、涙で顔はボロボロだ。爪も剥がれて、腕の形も段々とおかしくなっていってる。


 酷すぎる……



「もう止めろよ!!」

 俺はディアネイラに向かって強く叫んだ。


「おかしな事を……魔族を庇う人間を粛清するのよ? 妾の役にたっているのに、これ以上に名誉なことはないのよ」

 ディアネイラは本気で首を傾げている。


「だからなんでそこまで魔族を!」

「…………」


 ディアネイラは黙った。



「まさか貴方達……神話を……天魔戦争を……信じていないの?」


 ディアネイラが何を言っているのかさっぱりだった。



「まさか、あんたの方こそ神話なんて信じてこんな馬鹿げた事を」

「神話なんて、ですって?」

 ディアネイラのどす黒い魔力がどんどん濃くなってきた気がした。


「神話は……あれは実際に起こった事実よ」

「なっ!?」


「数百年前……いえ、正確には999年前……この世界アルカで、悪魔と天使は争いあったのよ」

「!?」


 ディアネイラの言葉に全員が驚いた。


「本当に嘆かわしいわ……妾達が、まさに命を賭してまで貴方達人間を護ってきたのに……たかだか数百年で、もう記憶から薄れていくなんて……」

 ディアネイラは俺達の反応を見て嘆かわしいそうに呟いた。


「お前……何を、言っているんだ……?」

「神話の最後を覚えてる? (しゅ)がお造りになった人を、喰い漁った愚かな悪魔共は魔族に転生したのを?」


「まさか……?」

「そうよ、だから妾達は魔族を根絶やしにするの。主の命は絶対なのだから……」


「あんた、まさか……」

「フフフフふふふふフフフフふふふふ、ようやく気づいた? そうよ、妾はディアネイラ・スレイヤルではないわ」


「「!?」」

 ディアネイラの言葉に全員が驚愕した。もはや声にすらならなかった。



「ふふふふフフフフ、そうだわ。良いことを思い付いた。今からゲームをしましょう」

「なっ!?」


「妾が何者か教えてあげてもいいのだけど、それだとつまらないわ。だから……そうね、ゲームの参加者は貴方よ」

 そう言ってディアネイラは俺を指差してきた。


「今からそこにいる魔族共を捕まえて聖都に連れていくわ、貴方はそれを取り返しに来なさい」

「な、何を言ってんだあんた……」


「だからゲームよ。ここから聖都まで転移しなければ3日はかかるわ、だから貴方は2日で聖都まで来てみせなさい。2日後、聖都で大々的に処刑を執り行うわ。それに間に合えば妾の事を教えてあげるし、魔族も解放してあげるわ……ただし、間に合わなければ貴方は妾と共に今後魔族を根絶やしにするのに協力しなさい」

「そんなことっ!!」


「フフフフふふふふ、折角のZEROの領域者……殺すには惜しいわ」

「てか、そもそも皆を捕らえさせると思ってんのか?」


 俺は刀の神器に魔力を込めて、脇構えをとった。まだ右眼は痛むけどさっき程ではない。これならなんとか戦える。



「ふふふふフフフフ、ならゲーム開始ね……スキル【天啓】!」

 ディアネイラがそう口にした瞬間、辺りを光が包んだ。


「何をっ!?」

「スキル【天啓】よ……ああ、そうだったわね。貴方の【神眼】はまだ<解放>だったわね…………スキル【天啓】は誓約よ、このスキルには絶対に逆らえないわ。だから、もし貴方がゲームに敗けた場合、貴方の意思とは関係なく貴方は妾のものよ」


「なっ!?」

 なんてスキルだ。


「フフフフふふふふフフフフ、楽しみだわ。ラファエルを倒した貴方が妾と共に魔族を駆逐する日々……想像しただけでイキそうだわ」

 ディアネイラは恍惚な表情を浮かべていた。



 いくなら一人で勝手にいってろ変態。そもそも皆を聖都なんかに連れていかせるか!



「極みの位……」

「させないわ」


 ディアネイラは指を更に細やかに動かした。操られた3人は俺の後ろに向かって三方向から襲い掛かった。

 まるで次元属性の攻撃を防ぐ為に、バラバラに行動させているようだ。



「あんたを倒せば済む話だ! 極みの位・終!」

 俺は刀を無造作に振り抜こうとした。

「っ!?」

 だけど刀が振りきれる前に、3人の内の一人が刀に直接斬られにきた。


「がっ……」

 一人はそのまま気を失った。が、倒れることはなかった。そのまま宙に浮くような感じで力なく無理矢理立たせられたままだ。



「甘いわね、攻撃の手を緩めるなんて」

 ディアネイラはニヤリと微笑んだ。



「スキル【牢獄】」

「スキル【結界】」

「ス……キ……ル……【光……糸……】」

 3人は無理矢理口を動かさられる様に呟いた。まさか舌の動きまで操るなんて。



 光の糸が俺を捕らえた。


「ぐっ…」

 でも、魔名宝空はまだ発動中だ。風の結界が皆を護ってくれている筈だ。


「フフフフふふふふ、これで開幕よ」

 ディアネイラは指を動かすのを辞めた。3人は糸の切れた人形の様にその場に倒れ込んだ。



 瞬間、ディアネイラは姿を消した。俺は体に力を入れて、体に絡まった光の糸を無理矢理引きちぎった。

 俺は後ろを振り返ると、信じられないものを目にした。



「竜斗様!!」

「竜斗さん!」

「竜斗殿」


「ララ! リリス! 皆!!」


 宙に浮く巨大な牢屋に、皆が捕らえられていた。魔名宝空は発動中なのに、皆を護る球体は消えていた。

 そして牢屋の外から、そっと手を添えるディアネイラの姿があった。



「残念だったわね……ふふふふ、聖都で待ってるわ天原竜斗」

 ディアネイラは転移の神器を発動させて、牢屋ごと転移しようとしていた。


「させるか! 終天!!」

 俺は刀をディアネイラに向かって振り抜こうとした。



 しかし、またしても刀を振りきる前に操られた一人が、自分から直接刀に斬られにきた。



「油断大敵ね……妾がスキルを解除したと思ったのかしら、ふふふふフフフフふふふふハハハハははははハハハハ!!」



 ディアネイラは高笑いし、そのまま姿を消した。皆を連れて……



 修練の間に俺一人だけが取り残された。



 抜け道には魔族の姿があった。恐らく、修練の間にいた魔族だけが捕まったみたいだ。それだけでも救いだ。



 でも、でも俺は……ララを……リリスを……ヒュースを……レインバルトを……皆を…………護れなかった……





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