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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第一章【はじまり】
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流星と空



「さてと、次はランク【ZERO】だな」


「もう創造されるのですか?」

 レイナが尋ねてきた。



「ああ、正直【刀】(こっち)はもうどんなのにするか決めてあるんだ。属性や能力も大体イメージ出来てるし」


 無駄に美術の成績だけは良かったんだから、今こそ俺の中にある妄想力を発揮する時だ!



「どうぞ竜斗様」


 ララがランク【ZERO】の神珠をそっと渡してくれたので、軽くお礼をした。

 俺は両手で神珠を受け取った。

 手にはまだ少し血が流れていた。



 先程と同じように想像して創造する!!





「…………出来た」

 俺は指輪を指にはめ〈発動〉と念じた。



刀の神器【絶刀・天魔】、属性【次元】、能力【巨大化】、ランク【ZERO】



 (つか)は黒一色、(つば)は無し。

 刀身は白銀に輝き、柄の先端には装飾として朱紐がくくられている。

 鞘も黒一色。

 一見、黒い棒のようにも見える。



「へ~それがランク【ZERO】の神器か……こりゃまた黒一色だな」

「でも少し近寄り難い雰囲気を出してますね」


 ゼノとレイナが各々感想を述べると突如ララの様子が急変した。

 口とお腹を抑えてうずくまる。まるで必死に嘔吐を抑えこむかのように……しばらくすると息を切らしながらララは口を開いた。



「大丈夫ですか、ララ?」

「ハァ……ハァ……ハァ……申し訳ありません姫様……正直に申し上げてよろしいでしょうか?」


「どうしたのです?」

「…………」


 ララの体が震えだし、腕を交差させて両腕を押さえた。



「はっきり申しまして、あの神器はおかしいです。この世の物ではありません。1秒でもこの場にいたくないですし、視界にも入れたくないです」


「えっ!? それって、この神器を視界に入れたくないほどショボいってこと? 結構自信作だったんだけど……やっぱ黒一色だと寂しかったかな?」


 今度は俺がララに尋ねた。

 するとララは首を横に振った。


「違うのです竜斗様……その神器が凄すぎるのです。どれほどの想像力があれば、それほどの神器が出来るのか分かりませんが……まるで死神の鎌を常に喉元に突きつけられている感覚なのです」



「…………」

 俺も含め3人ともが黙った。



「竜斗、お前一体どんな能力にしたんだ?」

「いや、別に普通だと思うけど……スパーンって斬れて、能力【巨大化】で刀を大きく出来るようにしただけなんだけど……」


「おかしいですね? 確かに能力【巨大化】は殲滅系の能力としてはトップクラスですが、ララが怯えるほどでは……」

「と、なると属性【次元】か……だが【次元】はレア属性で便利ではあるが、戦闘系の属性じゃないしな」


「えっ!? 使えないの? かなり強いと思ったんだけど……」



 レイナとゼノはお互いの顔を見合わせて小さく笑った。



 な、何がそんなにおかしいんだ?

 訳が分からない。



「そうですね……そうだ! 誰かいますか?」

 レイナはパンっパンッと手を叩き兵士を呼んだ。


「はっ、失礼します」

 すると見たことのある獣人の兵士が入ってきた。


「あっ、あなたは確か……(最初に出会った一般兵士くん)」


「こ、これは竜斗様、先日は失礼いたしました……改めて自己紹介させて下さい。私はシューティングスター・ダダ。この国の兵士をしております」


「……どうも、天原竜斗です。こちらこそよろしくお願いします……」



 特撮モノに出てきそうな名前って突っ込もうと思ったけど、何だよシューティングスターって!

 こいつに名前をつけた親は馬鹿なのか!?

 いや、待て……名前がダダという可能性もある!

 シューティングスター家のダダという者ならギリギリ納得できる!



「そういえばこの者も紹介していませんでしたね。彼はこの国に代々仕える名門ダダ家のシューティングスターです」

 レイナが説明してくれた。



 ふざけんな!!


 心の中で突っ込んだ。



「シューティングスター、--と--を持ってきて頂けますか?」

「かしこまりました、少々お待ちを」


 シューティングスターは勢いよく飛び出し何やらとりにいった。

 その間に俺は深呼吸し、心を落ち着かせた。





 しばらくしてシューティングスターが戻ってくると神器を2つレイナに渡した。

 神器を渡すと、うずくまるララをチラ見してシューティングスターは部屋を出ていった。



 チラ見するシューティングスターを俺は見逃さなかった。

 怪しい……



「竜斗様、こちらをご覧ください」


 俺はレイナの方に振り向いた。

 レイナは神器を発動させた。



袋の神器【5648】、属性【無】、能力【収納】、ランク【E】


袋の神器【1783】、属性【次元】、能力【収納】、ランク【D】



 2つの袋の大きさは、ほぼ同じだった。


 袋の神器なんかもあるのか……

 しかも2つめは銀叉とランクが同じだし……



 レイナが1つ目の神器を使うと部屋にあった本棚から本が吸い込まれてゆく。

 ただ袋のサイズまで本が入ると、それ以上収納出来なくなり、その力を弱めた。


 2つ目の方を使用したら、同じように本を収納していった。

 どんどん本は吸収され、結局本棚ごと収納された。



 で、伝説の〇次元ポ〇ット……素晴らしい!

 この目で拝めるとは!

 これは是非とも欲しい!



「このように属性【次元】は別の空間的な役割を果たしており、収納等には便利ですが基本的には、【無】属性と捉える者しかおりません」


「あっ、やっぱ空間的な意味で良かったんだよね」

「? どういうことです?」



 俺は【絶刀・天魔】を片手に、何もない空気に向かって縦に一振りした。

 すると、レイナが持っていた、袋の神器【5648】が横に斬り裂かれた。



「はっ!?」

「えっ!? どういうこと?」


 レイナとゼノは理解できなかった。

 ララはガクガクと震えていた。



「えっと……今その袋の神器のあった空間を斬ったんだけど……」



 黙ったまま少し考えて、ようやくレイナとゼノは理解した感じだった。

 この神器はヤバイ……と。

 言ったら回避がほぼ不可能、防御無視、まさしく一撃必殺の神器であった。


 人は身体を鍛えることが出来る。

 魔力により身体を強化することが出来る。

 だけど空間を鍛えることなんか出来ない。

 ましてや、この神器はランク【ZERO】。

 今、現在この神器に勝てる神器なんてこの世に存在しない……筈。



「ははっ、【次元】にそんな使い方があるなんて思わなかったぜ」

「そうなの? 割りと思いつきそうだと思うけど」


「いや、そもそも戦闘系の神器に【次元】属性が付いてること自体が珍しいしな。よく知らないが英雄トウマの神器には有ったとか無かったとか、そんなレベルだ」

「へ~」


 英雄トウマか……

 なんとなくだけど、俺のいた世界の日本人の名前っぽい。

 もしかしたら彼も異世界人だったのだろうか?


 そんな事を考えていたら、レイナが俺に袋の神器を渡してきた。

 袋の神器は元々俺にくれるつもりだったらしく、俺は壊れた銀叉をレイナに返して、袋の神器【1783】を受け取った。


 大事に使おう。






 そして、まぁなんやかんや有って準備も無事終わり、俺達は【S】ランクの迷宮に向けて出発することにした。


 メンバーは俺、レイナ、ガオウ、ゼノ、そしてルルの5人だ。

 ランクは順に(ZERO)1人、(A)3人、そして(B)1人である。



 現在この国での最強パーティーらしい。



 俺達は城を出て町の中にある中央道路みたいな大きな道を歩いていた。

 両脇には幾人もの魔族の人達が、俺たちを見送っていた。

 表向きは……


 実際には人間である俺を見ていたのだろう。

 嫌なものでも見るかのようにジッとこちらを睨んでいた。

 所々で小さく「人間が……」という声が上がり、その度にレイナが立ち止まりそうになるが、なんとか(なだ)めながらそのまま歩いた。



 すると突如、脇の方から1人の女の子が駆け寄ってきて、俺の前で立ち止まった。

 この国にはあまりいない、エルフの女の子だ。

 髪は金色で、可愛らしい髪止めで髪を結んでいた。


 母親らしき綺麗なエルフの女性が「ソラッ!!」と叫びながら女の子を止めようとしていたが、ゼノが母親の前に立ち、それを制止させた。



 周りの魔族は固唾を呑んで見守る。


 俺は女の子から罵声を浴びせられると覚悟した。



「どうしたの?」

 俺は女の子に尋ねながら目線を合わせられるよう、しゃがみこんだ。


「…………お兄ちゃんは人間なの?」


「そうだよ」


「…………こ、怖い人なの?」


「ソラちゃんはどう思ってるの?」

 然り気無く神眼を発動させて名前を確認した。


「よく分かんない。大人の人達が人間は怖いんだって、よく話してたから……」


「そっか。お兄ちゃんはね、こことは違う世界……えっと、すごくすごく遠い国からここに来たんだ」


「どうして?」


「そこにいる、君達のお姫様に無理矢理連れてこられたんだ」


「…………」


「そしたらね、お姫様に私達の国を助けて下さいってお願いされたんだ」


「人間なのに私達を助けてくれるの?」


「そうだよ。お兄ちゃんには、人間とか魔族とか関係ないんだ。確かにこの世界の人間は怖い人達かも知れない。けど、全員がそうじゃないんだって思ってくれたら嬉しいな」


「…………」


「少なくともお兄ちゃんは、魔族のみんなが好きだよ。レイナもガオウもゼノもルルも、この国にいる全員が。もちろんソラちゃんも」


 俺はソラちゃんの頭にそっと手をおいた。


「ソラちゃんはお兄ちゃんのこと怖い?」


 ソラちゃんは首を横に振ってくれた。

 俺はくしゃくしゃと頭を撫でた。


「えへへっ」

 可愛らしい笑顔が太陽のようだった。



 母親がソラちゃんの元に駆け寄り、一礼してから離れていった。

 ソラちゃんは大きく手を振ってくれたので、こっちも手を振って返した。




「不潔です、竜斗様」


「はっ!?」


「まさかあんな小さな子にまで手を出そうとするなんて……」


「いやいや、違うから! 撫でただけだよ!」

(ルル、君は突然何をいいだすんだ)


「そうですね。エルフの女性は美人の方が多いので、今の内に唾をつけとこうとか思ったんじゃないですか?」


「へっ!?」

(レイナまで……)


「やるじゃないか竜斗、姫さんっていう婚約者がいながら」


「ちがっ……」

(くそっ、チャラ男まで)


「竜斗よ、男として……」


「違うから!!」

(それは前に聞いたよ、猫科人型動物!!)



 そんなやり取りを繰り返すと、自然に笑い声が増えていった。


 みんなが笑っていた。

 勿論、困惑している者もいたし、今のやり取りだけで人間を信じてもらえるとは思っていない。

 それでもこの瞬間はみんなが笑顔になっていた。


 街を出るまでに、俺に声をかけてくれる人や、「帰ってきたら店に来い」って言ってくれるおっちゃんまでいた。



 きっと大丈夫!

 いつか魔族全員が心から笑って暮らせる日が来る。

 俺はそう確信した。



 俺達は迷宮を目指し、アルカディア国をあとにした。




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