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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第一章【はじまり】
12/318

夢想と想造



 俺は夢の中にいた。



ージャブジャブジャブー



 昨日は疲れた。

 話を聞くだけではあったが、頭の中がごちゃごちゃし、まるで脳が休ませてくれ……と言わんばかりであった。



ージャブジャブジャブジャブジャブジャブー



 異世界に来て初めてゆっくり寝た気がした……当然だな、こっちに来て初日にドラゴンと闘いあとはほぼ意識不明だったのだから。



ージャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブー



 俺は夢の中でスライムと戦っていた。

 決して減ることがなく、俺を取り囲むようにして襲い掛かるスライムを軽いジャブで吹き飛ばす。

 そんな夢だった。



ージャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブー



 一体何匹のスライムをジャブで吹き飛ばしただろう。流石に腕が疲れてきた。

 段々意識が遠くなってきた。



ージャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブ……



 もう無理……限界だ…………






俺は目を覚ました……



 目の前には横になったままの状態で、起こしに来てくれた【レイナの胸】(スライム)にジャブしている自分の右手があった。


 レイナの顔は真っ赤だった。



「お、おはようレイナ……」

 俺は何事もなかったかのように、そっとジャブを止め、挨拶をした。


 なぜだ!?

 なぜ俺は寝ながら的確にレイナのスライムだけを狙えるのだろう……これも【神眼】の為せる力なのか!?



「お、おはようございます竜斗様……朝食の準備が出来ていますよ……」

「あっ、うん、ありがとう……今起きるよ……」


 そういえばドラゴンと戦ったあとの俺を看護してくれたのはルルだと聞いた……何かしてないか不安になってきたが、恐くてルルには聞けそうにない。



 俺はレイナが用意してくれた服に着替えた。上は黒い長袖のハイネックに、下は膝くらいまである黒いパンツ(ズボン)。それにハイカットみたいな黒い靴。

 気に入ったのでこっちの世界での基本服にした。



 食事の場所に向かう途中で城の窓から街の景色を見下ろした。


 広いのに……小さい……


 この国の第一印象は小さいであった。

 この城に寄り添うようにして、街の建造物は立っていた。



「小さな国ですよね。国というよりは小さな街の中にお城がたってるだけで、みなが寄り添うようにして暮らしてる様を、そのまま街が体現してくれています」

 レイナの顔は悲しそうだった。



「みんなに俺の事は?」

「ええ、伝えてあります。兵たちの情報によれば、みな困惑はしてるそうですが、今のところ批判や苦情といったものは届いておりません」


「……そっか、レイナはみんなから愛されてるんだな」

「そんなことは……」


「いや、じゃなかったらとっくに暴動が起きてるよ。ララやルルを見ても魔族が人間を嫌悪してるのがよく分かるし、本当なら殺したいほど人間が憎いはずだよ」

「…………」


「でもそれが起きないのは、やっぱレイナがいるからだよ…………でも見ててくれ。とりあえず全ての人間とは言わないけど人間にもマシな奴がいるってみんなに思わせてみせるよ」

「竜斗様…………はい」



 2人で小さく笑った。





 食事を済ませて談笑していると、荷物を持ったゼノとララが部屋に入ってきた。


「おはようございます。姫様、竜斗様」


「よ~竜斗、姫さん、朝からイチャイチャしてんのか?」



「…………」

「…………」

「…………」


 ゼノ以外の3人は黙った。

 なぜか人から茶化されるとうざい気持ちが芽生えてくる。

 俺はそう感じた。



「……悪いって、冗談だよ」

「……ところでゼノ、例のあれは?」


「ああ、今さっき届いたぜ。瓦礫の中を探すのは結構苦労したみたいだ」

 ゼノは持っていた荷物をテーブルの上に広げた。


 見たこともない程綺麗で、虹色に輝く煌めく宝玉が4つ、テーブルの上に転がった。

 4つの宝玉はそれぞれ大きさが異なっていた。



「これは?」

「これが【神珠】です、竜斗様」


「…………」

 俺は言葉にならなかった。

 レイナの次くらいに綺麗だと思った。


「竜斗様が倒した【竜種】(ボスモンスター)から出てきた神珠です。基本的に1つしか神珠は出てこないとされているのですが、まさか4つも出てくるとは思いませんでした」


「もしかしたらSやSSとランクが上がると手に入る神珠の数も増えるのかもな」


「かもしれないですね……ララ、お願いします」


「かしこまりました」

 ララは神珠を見つめた。よく見ると瞳がうっすら光っているようにみえた。



「す、凄いです…………このような神珠初めて見ました。間違いなく【変わる世界】(ワールド)級です」


 ララは特殊スキル【鑑定眼】を使用し神珠の詳細を説明してくれた。



「小さな神珠から説明しますね。


種類【短刀】、属性【無】、ランク【E】


(しょぼ!…………まぁ色々と役にはたちそうだけど)



種類【首輪】、属性【闇】、能力【移動】、ランク【A】


(……よく分からん)



種類【籠手】、属性【炎、水、風、雷、地】、能力【付加】、ランク【S】


(なにやら凄そうだ……)



さ、最後に一番大きな神珠ですが……

種類【刀】、属性【次元】、能力【巨大化】、ランク【ZERO】


(超レアきたーーーー!!)



い、以上です」



「…………す、凄いな。ランクS以上なんて【変わる世界】(ワールド)しか見たことなかったが、それが2つもあるなんて」

「ええ、驚きです。ですがあの迷宮がランク【ZERO】なら納得もできます」


 レイナとゼノは驚いていた。

 ララは少し疲れてるみたいで額の汗を拭っていた。



「レイナこれって…………」


「はい。昨日お話したお渡ししたい物です。基本的に我が国では神珠も神器も手にいれた者のものとなっております。ですから、こちらにある神珠は4つとも竜斗様の物です」


「おお~」



 俺は大声で叫びたかったが敢えて(こら)えた。だがかなり嬉しい。まさかいきなり4つも神器が手にはいるとは……

 しかし物事はそう上手くいかないらしい。突如ゼノがランクAの神珠を手に取った。


「えっ!?」


「悪いな竜斗。一応【迦楼羅】は俺の神器だからな。レンタル代と弁償代込みで、このランクAの神珠は貰ってくぞ」


「…………はい」

 ま、まぁ仕方ないか、どのみちよく分からん神珠だったし。

 だがそれでもまだ3つある!



「…………そうだ!銀叉も壊したからレイナにも返さないと!」

「えっ!?」


「…………【E】でランクは落ちるけどいいかな?」

 俺はレイナにランク【E】の神珠を申し訳なさそうに渡した。


「そんな!? あれは竜斗様に差し上げたものです。返してもらわなくても……」


「いや、やっぱちゃんとしとかなくちゃ。まぁプレゼントだと思ってよ……ランク【E】で申し訳ないんだけど……」


「……そうですか、では受け取りますね」

 なぜかレイナは照れていた。



「残りの2つは俺のでいいんだよな?」

 俺はゼノの方を振り向いた。


「そんなに警戒すんな、もう取ったりしないよ」


 まだ取られるんじゃないかゼノに対しては警戒した。



「それで竜斗様、どうします? 今ここで神器を作成してみますか?」

「えっ、ここで出来るの?」


「はい。竜斗様と神珠があればどこででも」

「う~ん、なら作ってみるかな」


「でしたらまずは私が作ってみましょう」



 レイナはナイフを取り出し自分の(てのひら)を少しだけ切った。

 傷痕を神珠で塞ぐかのように手で握り、目をつむった。

 時間にして5秒くらいして、神珠が光だし宝玉は指輪へと形を変えた。



「はやっ! もう出来たの?」


「はい、属性も能力も有りませんし、形を想像するだけなんで、すぐですよ…………発動!」

 レイナは神器を発動させた。



短刀の神器【天竜】、属性【無】、ランク【E】



「な、なんかランク【E】なのに、名前がカッコよすぎないか? もう少し適当な名前でも良かったんじゃない?」


「……そうですか? でも、この名前がいいんです」


「??? まぁレイナがいいならそれでいいけど……」


 ララが小さな溜め息をもらし、ゼノがやれやれといった態度をとっていたことに気づかなかった。

 俺はレイナがなぜこの名前にしたか気づかなかった。





「そういえばこの、Sランクのやつの属性が【炎、水、風、雷、地】ってなってるけど、これって5つ全部出来るの?それともどれか1つだけ?」

 俺はララの方を向いた。神珠や神器はララに聞くのが1番なような気がしたからだ。


「そうですね……属性が5つもある神珠は初めて見ましたが、恐らく可能です」

「あっ、そうなんだ……良かった。どうせなら5つ全部属性付けたいしな」


「ですが、普通は自分のスキルにあった属性を選択し創造しますよ。適性がなければ折角神器を創造しても属性が発動されませんから」


「えっ!? どういうこと?」



 するとゼノが説明してくれた。


「例えで言うと俺には先天スキルに【属性<光闇>】と【業火】があるから属性が【光、闇、炎】の3種類の神器を操れる。仮に水属性の神珠から神器を創造し発動は出来ても、【水】属性の効果は発動されないんだ」


「…………結局は【無】属性みたいなものってこと?」

「そういうことだな。ちなみに珍しいのでいったら神器の【能力】の方に適性が必要なものもあるな。ルルちゃんの【復元】みたいなのとかだな」



「!? そういえば俺は迦楼羅から炎出せたから炎の適性はあるのか?」

「まぁそうだが、神眼で自分のスキルは見なかったのか?」


「昨日の夜に少し見たんだけど、どんなスキルか分からなくて……」

「んなバカな。神眼はあらゆるものを見通す力がある、スキル名とスキルの説明文みたいなのが表示されなかったのか?」


「えっ……説明文? そんなの表示されなかったけど……」


「……………………」



 ゼノは特殊スキル【魔眼<天>】を発動させた。対象者のスキル名とスキル能力がわかる魔眼らしい。


「昨日も少し見たけど化け物みたいなスキルだな。【剣才】【王気】【魔曲】【五光】の4つだな?」


「ああ、神眼もその4つしか表示してない。残りは【??】になってた」

 俺も神眼を発動させ自分のスキルを表示させた。



「【魔曲】なら<勝利を呼び込む>って文が出てこないか?」



 ゼノに言われて俺は右眼を集中させる。右眼を集中させる。右眼を集中させる。右眼を…………ダメでした。


「…………ま、まぁこんな事もあるさ……」



 衝撃の事実が発覚した!!

 なんと神眼はスキル名称は分かるが能力は分からないらしい。ちなみに神器もであった。

 所持されている神器は種類やランクは分かるが、所持されていない神器と神珠は全く分からなかった。



「そ、そうだ! 竜斗、お前の後天スキル【五光】は簡単に言ったら、そのSランクの神珠と同じ五属性だ。更に五属性の効果増大に耐性もあるから、これも凄いスキルだぞ」


 ゼノがフォローしてくれたが、別の時に言って欲しかった。嬉しさが半減であった。



 まぁ欲張りすぎても身を滅ぼすだけか……


 気を取り直して神器を作成することにした。




「では竜斗様どうぞ」

 レイナは短刀の神器【天竜】を貸してくれた。少し怖かったが短刀の切っ先を軽く手の平に当て、そのまま横にスライドさせた。


 痛いような、痛くないような……


 俺はSランクの神珠をララから受け取り、血が流れている手で神珠を握りしめ、目を閉じた。



--どこからともなく声が聞こえた気がした--



 まるで、カーナビのガイドアナウンスが流れている様な不思議な感覚に陥り、指示に従うような感じで、形状、属性、能力、名称を想像し創造してみる。

 神珠が光だし、手の平には指輪が出来ていた。俺は魔法が使えたみたいな感じで感動した。



籠手の神器【森羅万象】、属性【炎、水、風、雷、地】、能力【付加】、ランク【S】



 俺は【森羅万象】を発動させた。籠手というよりは黒一色の皮の手袋みたいな形状にした。

 手首には赤、青、緑、黄、茶色の小さな珠が埋め込まれた細い腕輪を装飾した。



「…………な、なんかシンプルですね」


「まぁ戦闘中あんま邪魔にならないようにかな。防御力よりかは戦闘スタイルは速度重視にしたくて」



 自分的にはかなり気に入ったのだが、あまり高評価ではなかった。

 確かにルルの籠手の神器【アスクレピオス】の方がデザイン的にもカッコいいし防御力もありそうに見える。



 さて、次はいよいよランク【ZERO】だな……





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