八咫と闇王①
「…………邪魔」
闇王プリンガは進行方向にいる騎士に向かって小さく呟いた。
「も、申し訳……!」
邪魔者扱いされた騎士の1人は謝罪し避けようとするが、既にプリンガの姿は騎士から遠く離れていた。
「邪魔です」
サラは横移動しながら、鎌の神器を横薙ぎに振るい、進行方向にいる騎士の1人を斬り捨てた。
サラとプリンガの攻防は広範囲にて繰り広げられていた。
最初は2人を取り囲む騎士達であったが、2人の攻防は凄まじく、所狭しと戦場を駆けていたため、いつしか騎士達は迂闊に動けないでいた。
いつの間にか騎士達は疎らに散っており、己の判断で立ち位置を考えていた。下手に近づこうものなら2人の鎌の攻撃範囲に入るし、遠くにいてもいつの間にか自分の眼前にて攻防を繰り広げられるため、本当に困惑していた。
2人の戦いに迂闊に介入する馬鹿はいなかった。
「大分戦いやすくなりました」
ふとサラはその場に立ち止まり、まばらに散っている騎士達を見回した。
「……同意」
サラから少し距離をとってプリンガも立ち止まった。
「では少し本気で行きますよ」
「……こっちのセリフ」
2人は互いに向かって駆け出し間合いに入ると勢いよく鎌を振るった。
「秘技 花鳥風月!」
「……!」
互いの横薙ぎがぶつかると神器からは火花が散った。鍔迫り合いをする中、ふとプリンガが呟いた。
「……技名……つける奴らばかり……馬鹿みたい……」
「そうですか?」
「技に名前なんて意味ない……そんなので強さは変わらない」
「ふふっ」
サラは小さく笑みをこぼした。
「……プリンガ間違ってない……」
プリンガはムッとし神器を握る手に少しだけ力が入った。
「そうですね、間違ってないと思います」
「……ならなんで笑った?」
プリンガは更に力を込めると思いきり鎌を振り抜いた。サラはそれを後ろに跳んで躱した。
「竜斗さん……ああ貴女は知りませんでしたね」
「……知ってる……剣士で……魔族を味方する人間……本物の馬鹿……」
「その竜斗さんですが……本当に強い御方です。そんな人を見ていると技に名前を付けることに意味はあるのではと思いますよ」
「? 意味不明……」
「ハッキリ申しますと、竜斗さんにはスキル【五光】があります」
「は?」
「6通りの剣技に5属性、彼は30の技全てに名前をつけてます」
「……馬鹿なの?」
「! スミマセン間違えました、スキル【合魔】があるのでそれ以上でした」
「……本物の馬鹿」
「ふふっ、そうですね。馬鹿かもしれませんね。1つ1つの技にいちいち名前をつけるなんて、とても正気の沙汰とは思えません」
「……結局何が言いたいの?」
「ですが竜斗さんが技を繰り出す時、私は心が踊ります。絶対に敵を斬るという安心感。強者が繰り出す技ほど頼りになる事はありません」
サラは胸に手を当て微笑んだ。
「……貴女も馬鹿……裏を返せば、斬れない相手が出てきたらー」
「ショックは大きいですね」
サラはプリンガが言うより早く答えた。
「分かってるなら尚更……」
「だから人は技に想いを込めるのです。弛まぬ努力の証として……負けられない相手に対峙した時、自分を奮い立たせる為に……そして皆の期待に応える為に」
「……結局、根性論……そんなの弱い奴がする事……」
「竜斗さんは強いですよ、少なくとも貴女よりかは……」
「ならそいつもプリンガが倒すだけ……」
「私を倒せたらの話です」
「上等……プリンガ……負けない!」
プリンガは両手に持つ鎌を、回転するようにサラ目掛けて放った。
「!?」
サラは身構えた。回転の掛かった鎌は勢いよく放たれてはいたが防げそうにない程ではなかった。
「無駄……スキル【操影】……」
突如プリンガの影がサラ目掛けて伸びると地面から伸び上がり放った鎌の柄を掴んだ。
「死ね」
プリンガは影を操り、影で掴んだ鎌をサラの頭上目掛けて降り下ろした。
プリンガの鎌がサラに直撃すると、辺りには土煙が舞散った。少しして土煙が晴れると、そこには鎌を巨大化させプリンガの攻撃を防いだサラの姿があった。
「……やりますね」
特に外傷はなかったが、歯を喰いしばったせいかサラの唇は少しだけ切れていた。
「しぶとい……これなら……」
プリンガの鎌は能力【分裂】により更にその数を増やした。そして再度サラ目掛けて鎌を振るおうとした。
「させません!【黒夢】!」
サラは背中にある羽根を拡げた。同時に辺りには無数の黒羽が舞い散り、プリンガの視界を覆う程だった。
「……邪魔!」
プリンガは鎌で無数の黒羽を薙ぎ払った。
「認識しましたね」
「!?」
突如、黒羽はプリンガ目掛けて突き刺す様に襲い掛かった。
「くっ……ウザい……」
プリンガは襲い来る黒羽を、鎌の神器を影で操りながら振り払った。同時にサラへの攻撃を再開した。
「!? 秘技 明鏡止水!」
サラは横八の字を描くように鎌を振るい、これらを迎撃した。
暫くしてサラとプリンガの一進一退の攻防が終わったが、未だ周りの騎士達は傍観するしか出来なかった。
「はぁ、はぁ、はぁ……本当にウザい……」
「そ、それはこちらも同じです……」
息を切らしながらも二人とも相手から視線は外さなかった。騎士達も息を飲みながらただただ見つめていた。
「……次で決める」
「……次で決めます」
同時だった。
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【サラ・アスモデウス】(27)
種族
【八咫族】
クラス
【八咫烏】 潜在【太陽の化身】
ランク
【S】 潜在【SS】
先天スキル
【属性<風華>】【飛翔】【舞踊】【感知】
後天スキル
【黒夢】【ーー】
特殊スキル
【占術眼】
神器
【絢爛黒華】<鎌/風/巨大化/S>
【百花繚乱】<鎌/風/無/A>
【鎌鼬】<腕輪/風/斬撃/C>
【花樹園】<胸当/風/治癒/B>
【染井吉野】<盾/無/守護/B>New
【??】
【ーー】
【プリンガ・ノーズ・ヒュバイン】
種族
【人間】
クラス
【七極聖・闇王】
ランク
【S】
先天スキル
【属性<宵闇>】【剣才】
後天スキル
【半減<光>】【捕縛】【操影】
特殊スキル
【鑑定眼】
神器
【聖剣・闇王】<剣/闇/重力/S>
【聖盾・闇王】<盾/闇/守護/S>
【聖鎧・闇王】<鎧/闇/守護/A>
【闇王隊】<腕輪/次元/転移/A>
【時鎌=クロ・ノス】<双鎌/闇/分裂/S>
【闇の搦め手】<腕輪/闇/捕縛/B>