堕竜と風光①
アルカディア国とスレイヤ神国との戦は、七大悪魔王と七極聖が一対一で戦い、神国の騎士達がそれを取り囲む形となっていた。
ただ、ある1ヶ所では乱戦が繰り広げられていた。
「ちっ、流石にこの数はキツいな……」
七大悪魔王の1人ゼノは、襲い掛かる騎士を双剣の神器で斬り伏せながら、愚痴を溢していた。
「口を動かす暇があるなら手を動かせ!」
共に戦うルキは騎士達を槍の神器で突き飛ばす。
「動かしてるっての!」
ゼノは更に襲い掛かる騎士を斬り飛ばす。
ふと騎士達の攻撃が止むとゼノとルキは、騎士達を指揮する2人の騎士に視線を送った。
「流石Sランクですね……Aランクの騎士でもダメですか……」
風王クリスティーナは冷静に、魔族2人の実力を分析していた。
「宜しいのですかクリスティーナ様?いくら極聖隊といえどSランク相手では……」
「戦争なのです、みな覚悟は出来ています。それより相手がたったの2人なら数で押し潰す方が確実です。どうやら援護も無さそうですし……」
最初に1度だけ斬り結んだあとクリスティーナは、騎士達による物量での攻撃に切り替えた。
「し、しかし……!」
「……ハクアさんは魔族に恨みがあるようですが、これは戦争です。私情は挟まない事です」
「……っ!…………はい」
ハクアは歯軋りしながらクリスティーナの指示に従うことにした。
「まぁ魔族相手に、疲弊させて止めを指す、というのは私も若干気が引けますが……陛下の命令は魔族の国を蹂躙する事です、この際私達の誇りなどどうでもいいのです…………陛下の命令さえ遂行できれば……」
クリスティーナは最後の方だけ小さく呟いた。
「全く……言ってくれるぜ……」
ゼノは、クリスティーナとハクアのやり取りを聞きながら息を整えていた。
「……だが確かに、この戦力差はキツいな……」
ルキは周りを取り囲む騎士達を睨みながら見回した。
「あいつらの言う通り、援護は期待できそうにないな」
「なんだ最初から援護を期待してたのか?」
「そんなことはね~よ。それに……」
「それに?」
「ルキがパートナーならこの数にも敗ける気はしないな」
ゼノは小さく微笑んだ。
「なっ!?ばっ!?……こ、こんな時に何を!?」
ルキは少しだけ赤面し取り乱した。
「まぁ、竜斗にはこの前ボコボコにされたけどな」
「……全く……お前は相変わらずだな…………(私がどんな気持ちで……ブツブツ)」
2人のそんなやり取りを見た騎士達は、油断してると思いルキの視角を狙って襲い掛かった。
「双天剣技・沙羅双樹!」
ルキに襲い掛かる騎士達を、ゼノが双剣を下から掬い上げるように振るい斬り裂いた。
「油断すんなよルキ」
「するか……お前が攻撃しなければ私が突き殺していた」
「はい、はい」
ゼノとルキは背中を合わせると取り囲む騎士達に向けて構えた。
その様子を見ていたクリスティーナは、1人の騎士にコクリと頷き合図を送った。それを見た騎士は頷くと他の騎士達に合図を送った。
ゼノとルキを取り囲む騎士達の前列が、全て同じ剣の神器を携えた緑の鎧を纏う騎士達と入れ替わった。
ゼノとルキは警戒し神器を握る手に力が入った。
「やれ!」
クリスティーナの指示を受け取った騎士が大声で手を翳した。
騎士達が剣を天に翳すと剣先が緑に光り、風刃がゼノとルキに襲い掛かった。
「これは!?」
「多重発動か!?」
ルキは盾の神器で防ぎ、ゼノは双剣でこれらを防いだ。
「とくと味わえ穢らわしい魔族め……お兄様が考案した10人がかりでの多重発動を」
ハクアは冷笑しながら小さく呟いた。
「マジでどうするルキ!?これじゃキリがないぜ」
「た、確かに……これだけなら兎も角……七極聖が2人控えていては……」
ゼノとルキは風刃をなんとか凌いでいるものの、魔力は温存しておきたく、未だに全力が出せないでいた。
そんな攻防の中、風刃を繰り出す騎士達の上空を無数の影が覆った。無数の影は騎士達の前に着地すると一斉に神器を振るい騎士達を薙ぎ倒した。
「ゼノ殿!ルキウス殿!」
ゼノ達に声を掛けたのは、アルカディア国の第一部隊・隊長を務める牙狼族のシューティングスター・ダダだった。
「「シューティングスターか!?」」
「はい、遅くなって申し訳ありません。ゼータ殿の魔力回復に時間がかかり援護が遅くなってしまいました」
気づくとゼノ・ルキと神国の騎士達の間には無数の魔族が転移してきていた。
「アザゼル!それにガーベラも!」
ルキが見渡した中には、他の部隊の隊長でもある堕天族のアザゼル・フリードと、竜人族のガーベラ・ドレインの姿もあった。
「はい、ルキウス様!」
「周りの騎士達は我々に任せて下さい!お二人は七極聖を!」
神国側の騎士が大体500~1000人に対して、アルカディア国側の魔族は3部隊で、およそ120人であった。
だが近年これほどの数の魔族を見た者はおらず、騎士達は戸惑いを隠せないでいた。
「まさかこれほどの魔族がまだいたとは……!」
「ですが視たところAランクは3匹程……我々の敵ではありません」
ハクアは魔族の数に驚いていたが、クリスティーナは冷静に魔族を見つめていた。
「貴方達!」
クリスティーナはこの戦いが始まって初めて大声をあげた。
騎士達は全員クリスティーナに振り向いた。
「女王陛下の命は絶対です!魔族は全て殺しなさい!それが貴方達の成すべき使命です!…………やれ」
クリスティーナが言い終わると、騎士達は歓声をあげながら一斉に魔族目掛けて突撃を開始した。
「双天剣技・双極星雲!」
「水竜紅爪!」
騎士達より早く飛び出したのはゼノとルキだった。2人はAランクと思わしき騎士達だけを狙って攻撃を繰り出し、あっという間に殺していった。
そして、その場はあっという間に魔族と人間との大乱戦へと化した。
大乱戦の中、4人だけがその場で動かずに、ただただ相手を見つめていた。
「これで漸く仕切り直しだな」
「それはこちらも望むところだ」
ゼノとハクアが対峙する。
「竜の槍、その身にとくと味わいがいい」
「いいでしょう……同じSランクとはいえ、格の違いを思い知りなさい」
ルキとクリスが対峙する。
ジリジリと4人の距離が縮まる。そして互いの間合いに入った瞬間だった。
「双天剣技・双軸結晶!」
「光の太刀・一文字!」
ゼノが双剣を逆手に握り直し回転しながら斬りかかると、ハクアは縱一文字に剣を振るいそれを受け止めた。
「Sランクだが、扱う神器はAランクの様だな」
「…………ちっ」
ハクアが小さく笑うと、ゼノは舌打ちした。
「剣舞……」
「水竜覇星!」
クリスが双剣で技を繰り出そうとするが、ルキの一突きがそれを阻止した。クリスは即座に双剣を十字にし、その中央でルキの槍先を防いだ。
「何をする気か知らないが、我が竜槍を止めるとは流石だ」
「全く……面倒ですねSランクは……」
クリスの双剣には風が纏い、ルキの槍には水が渦を巻いて纏われていた。クリスは双剣を振るい槍を弾いて距離を少しだけとった。
「…………フフっ、どうやら私も人の事は言えないようです」
「?」
距離をとったクリスは小さく笑った。
「久々に高揚してきました」
「ふん、すぐに後悔に変えてやる」
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【ルシファー・ゼノブレイズ】(23)
種族
【堕天族】
クラス
【堕天王】 潜在【明けの明星】
ランク
【S】 潜在【SS】
先天スキル
【属性<光闇>】【業火】【剣才】【飛翔】
後天スキル
【同化】【ーー】
特殊スキル
【魔眼<天>】
神器
【業炎魔】<剣/炎/伸縮/S>
【光闇双剣】<双剣/光闇/無/A>
【幻影魔】<首輪/闇/移動/A>
【聖なる領域】<腕輪/無/不可侵/A>
【王者之衣】<外套/無/軽減/C>
【??】
【ーー】
【マモン・ルキウス・ドラグナー】(20)
種族
【竜人族】
クラス
【龍騎士】 潜在【龍王騎】
ランク
【S】 潜在【SS】
先天スキル
【属性<水流>】【身体強化】【竜鱗】【威圧】
後天スキル
【騎乗】【吸収】【ーー】
神器
【竜槍<紅>】<槍/水/噴射・吸収/S>
【ドラゴンテイル】<槍/水/噴射/A>
【薔薇の盾ローズシールド】<盾/水/守護/A>
【チェンジ】<腕輪/次元/転移/B>
【??】
【??】
【ーー】
【クリスティーナ】
種族
【人間】
クラス
【七極聖・風王】
ランク
【S】
先天スキル
【属性<風>】【耐性<風>】【剣才】
後天スキル
【舞踊】【半減<炎>】
特殊スキル
【観察眼】
神器
【聖剣・風王】<双剣/風/伸縮/S>
【聖盾・風王】<盾/風/守護/S>
【聖鎧・風王】<鎧/風/守護/A>
【風王隊】<腕輪/次元/転移/A>
【??】
【??】
【ハクア・ホーク】
種族
【人間】
クラス
【七極聖・光王】
ランク
【A】 潜在【S】
先天スキル
【属性<光>】【耐性<光>】【剣才】
後天スキル
【破裂】【半減<闇>】【ーー】
神器
【聖剣・光王】<剣/光/巨大化/S>
【聖盾・光王】<盾/光/守護/S>
【聖鎧・光王】<鎧/光/守護/A>
【光王隊】<腕輪/次元/転移/A>
【聖光剣】<剣/光/分裂/A>
【ーー】
竜斗「しゃきしゃき働け」
ゼータ「ひぃ、ひぃ、ひぃ……も、もう……無理……」
竜斗「ほらほら、転移がお前を待ってるぞ」
ゼータ「竜斗ちゃんの鬼!悪魔!」
竜斗「仕方無い……5分だけ休憩な」
ゼータ「……………………人でなし」