潜在とスキル
しばらくの間、沈黙が続いた。
「そんな……嘘……」
「バカな……」
レイナとガオウは驚いていた。
「……くっ、くくっ、ク、ハッーハッハッハッ」
ゼノは顔を押さえて大声で笑った。
「やっぱりだ、やはり潜在ランクは存在していた! 【神眼】のみに許された潜在ランクを見ることの出来る力! 伝承は正しかった!」
「知っていたのゼノ?」
「ああ、確信は持てなかったが旅先で見た古い書物にそれらしいことが書いてあった」
「なんと!」
「だが、まさか俺自身がランク【SS】もあるとは思わなかった。これなら人間たちとも互角、いやそれ以上に戦えるはずだ」
ゼノは興奮しまくっていた。
俺は更に追い打ちをかけた。
「え~と、ちなみになんだけど、レイナとガオウもみたら潜在ランクだっけ? その潜在ランク【SS】って書いてあるんだけど……」
3人はしばらく絶句した。
「ハハッ……マジかよ…………だが姫さん! これならみんなを! 魔族を守ることが出来るぞ!!」
「ええ、また1つ希望が見えてきました!」
ここで冷静だったガオウが口を開いた。
「だがどうするゼノよ。仮に我らが【SS】ランクになれるとして、どうすればいい? ハッキリいって身体的に我らがこれ以上になるには、恐らくほぼ限界だ。なら後は魔力しかないが、魔力は生まれながらに備わっているもの。魔力こそ上げようがないぞ」
「そ、それは…………くそっ! 結局は【手段】か!」
なにやらゼノはガオウに水を差されて嘆いている。
俺はレイナに尋ねた。
「どういうこと?」
「人が持つランクとは、その者が生まれながらに持つ魔力の大きさと、鍛練による身体的な力の2つで、評価されていると言われているのです」
「それで?」
「私は産まれた時からランクが【A】ありました。2人もランクが【B】はあったそうで、鍛練によって【A】になったそうです。ですが……どうしてもランクは【S】にはならなかったのです」
「ふ~ん……」
俺はふと思ったことを口にした。
「ねえ、3人はさぁ、ランク【S】の迷宮は攻略したことないの?」
「「!?」」
3人が同時に俺を見た。
「た、確かに言われてみればないが、まさか……それが条件なのか?」
「いや、それは分かんないけど……なんか俺自身をみたらランク【ZERO】って書いてあったから、【ZERO】の迷宮を攻略したからなのかなぁ~って……」
「…………」
「…………」
「…………」
沈黙が続いた。
あ~やっぱ驚いてる……
そりゃそうか、確かランク【ZERO】って【SS】の上だったよな?
「なら、とりあえずランク【S】の迷宮を攻略してみるか?」
あっ、流したな……
「だがどうする? ランク【S】の迷宮を我々3人だけで攻略出来るとは思えんが……」
ガオウの奴も流しやがった。
「いえ、それなら竜斗様にも来てもらいましょう。4人なら攻略出来るかもしれません」
レイナまで……くそっ、今度【レイナの胸】をおもいきり揉みまくってやる!
3人はしばらく迷宮について話し合っていた。
ふと、ゼノと目があった。
「竜斗ありがとう。お前が来てくれて、俺達魔族にも希望が持てた。もし俺達の限界が【A】だったら、これからの全ての重荷を、お前1人に押し付けることになってた……本当に感謝している」
「あっ、いやいいんです。俺なんかでも役に立てるなら。それにレイナとの契約もあるし」
「ゼノ、だから言ったでしょ。(召喚は)きっと上手くいくって」
「姫さん、それは結果論だな。あんたには先天スキル【枯渇】がある。下手したら本当に死んでたぞ」
「うっ……」
レイナは口ごもった。
【枯渇】ってスキルは相当ヤバいらしい。
「あっ! そういえば迷宮から帰ってきたらスキルについて教えてくれるって言ったよな?」
「…………まだ教えていませんでしたっけ?」
レイナはニッコリと笑って誤魔化そうとした。
これだ……レイナにはこれがあるから油断出来ない。
レイナの為に戦う覚悟はあるが、正直訳も分からず死ぬのはごめんだ。
レイナのスキルに【説明不足】と【せっかち】と【スライム】を付け加えたい。
「すまん竜斗よ、我も完全に忘れていた」
「いや、まぁドラゴンとの死闘があったから仕方ないよ」
「--では説明するぞ。スキルには大きく分けて3つある」
なんか「大きく分けて……」って言葉多くないか)とは言えなかった。
「1つが【先天スキル】、生まれながらに所持しているスキルだ。その者の血統や才能に大きく影響している。2つめが【後天スキル】、環境が変わったり鍛練等によって突如目覚めるスキルだ。3つめが【特殊スキル】、お主の【神眼】や我らの【魔眼】、ララが持つ【鑑定眼】なんかがある」
「へ~結構あるんだな」
「まぁお主には【神眼】があるから、後で皆のステータスをゆっくり見てみるといい」
「ああ、そうしてみるよ」
当面の目的が決まった。
とりあえずランク【S】の迷宮を攻略して3人のランクが本当に【S】になるのかという検証だ。
この辺りには現在迷宮がないらしく、アルカ大森林を出なければいけないらしい……かなりの遠出みたいだ。
準備にも数日はかかるみたいで、急いで準備するとのことだ。
まだ先とはいえ、いつ【スレイヤ神国】がこの森に入ってくるか分からない。
なるべく急ぐみたいだ……
みなが会議室みたいな部屋から出ようとした時、ふと何かが気になったが、それがなんなのかよく分からなかった。
仕方ない、部屋に戻って、ゆっくりとスキルでも見ながら、話を整理してみよう。
するとレイナが俺を呼び止めた。
「準備は私達がするので、竜斗様はゆっくりと休んでいてくださいね」
「ああ、そうするよ。流石にちょっと話ばかりで頭の中が疲れたし」
「でしたら後で何か甘いものでも持って行きますね」
「ああ、ありがとう」
レイナと少し他愛もない話をした。
凄く癒される。
「明日には竜斗様にお渡ししたい物もありますので」
「えっ、なんだろ?」
「ふふっ、明日のお楽しみです」
何やらプレゼントがあるみたいでかなり楽しみだ。部屋に戻る足取りが軽かった。
◆
俺は先程まで休んでいた部屋に戻り、ベッドに寝転がると右眼を集中させ、自分のステータスを空中に表示させてみた。
「改めてみるけど、これって凄いのかな? 【神眼】以外、自分では特に変わった感じはしないんだけどな~」
独り言を呟きながら暫くステータスを見ていた。
あっ……ヤバい……
瞼が……重い…………
なんだか眠くなってきたよ……〇〇ラッシュ……
俺はそのままゆっくりと休むことにした。
◆
名前
【天原竜斗】
種族
【人間】
クラス
【ZERO MASTER】
ランク
【ZERO】
先天スキル
【剣才】
後天スキル
【王気】【魔曲】【五光】
【??】【??】【??】
特殊スキル
【神眼】
神器
【銀叉(壊)】
【??】【??】【??】
【??】【??】【??】
【??】