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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第四章【七大悪魔王】
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残酷と無慈悲①

久々更新ですよー。


宣言通り3ヶ月は開きませんでしたね(笑)





 宵の刻、アルカディア国、アルカディア城、地下【修練の間】にて休憩をとった後、おもむろに一人の人間の少年が立ち上がった。


 黒い衣服を纏い、彼のいた世界で呼ばれるストレッチ……柔軟体操を行うと、少年の表情は段々と険しいものへとなっていった。

 最後に両の腕を天高く伸ばしながら、少年は【修練の間】の中央へと歩を進めていく。


 彼の後を追うように、一人また一人と魔族も立ちあがり【修練の間】の中央へと歩み始めた。

 獅子族ガオウ、堕天族ゼノ、八咫族サラ、竜人族ルキ、蟲人族バアル、機人族アトラス……と種族も性別も様々な6人の魔族達。

 彼らの表情もまた先程とはうって変わって真剣なものへとなっていった。


 そんな彼らの歩く背中を、この国の女王であるレイナ・サタン・アルカディアと、残る軍の総隊長ヒュース、各部隊隊長5人は壁を背にし見つめていた。


 最後に治癒士である兎人族ルルが、数歩前に出て女王に一礼した後、彼らに続いた。




【シューティングスター・ダダ視点】


 始まりは一瞬だった。


 人間であり、レイナ様の婚約者であり、我々魔族の希望でもある、竜斗殿が神器を発動した瞬間だった。


 (まば)らで竜斗殿に相対して並んでいた魔族側……竜斗殿命名の【七大悪魔王】の皆様は既に神器を発動しており身構えていた。にも拘わらず誰一人として動けずにいた。


 竜斗殿は、この世で最も強力な……最強ともいえる刀の神器【絶刀・天魔】、本当に盾?羽の間違いでは?といえる盾の神器【魔名宝空(マモルモノ)】、手首に五つの小さな珠をつけた黒い革のような籠手の神器【森羅万象】を発動させた。


 正確に言うと……私が気付いた時には既に竜斗殿は神器を発動し相対していた一人を斬り飛ばしていた。


 その時の私には何が起こったのか全く解らなかった。



 後で聞いたのだが、竜斗殿はまず自身のスキル【合魔】で、神器【森羅万象】の風と雷の属性を合体?させ、この世の誰も持っていない新たな属性【嵐】を発動させた。

 そしてそれを【魔名宝空】へと付加させ、スキル【神速】【神眼(解放)】を併用しつつ【七大悪魔王】達の隙間を掻い潜ったとの事だ。

 更に竜斗殿は駆け抜ける直前に、刀の剣先を下後方に向けた【脇構え】と呼ばれる構えをとっており、構えた瞬間には駆け出し、最初の一人の眼前で停止すると一気に刀を振り抜き、相手を斬り飛ばしたのだ。



 分かるわけない!見えるわけない!


 もう1度言おう……見えるわけがない!!



 はぁ……はぁ……はぁ……だけど仮にその時、私に竜斗殿の動きが一部始終見えたとしてもだ……私には理解し難かった事に変わりはなかっただろう。


 何故なら竜斗殿が一番始めに斬り飛ばした相手は……Sランクでなく、正確に言うと戦士でもなく、この中では1番弱い存在とも言える、私の想い人の妹……ルル殿であったからだ。



 ルル殿の左腕は肩から斬り飛ばされ、血飛沫が空を舞い、ルル殿自身は後方の壁にめり込むように吹き飛ばされた。


「えっ……?」

 私は自分の目を疑った……いや、私だけではない。その場にいた全員が信じられない光景を目の当たりにした。


「……う……く……」

 ルル殿は小さく呻き声を上げていた。


 ルル殿は苦しそうにしており、残っている右手で必死に無くなった左腕の辺りに手を添えようとしている。


 次の瞬間竜斗殿の手にしている刀が赤く燃え盛ると、竜斗殿は斬り飛ばされ地面に落ちていたルル殿の左腕を斬りつけた。

 左腕はそのまま一瞬にして灰へと化した。



 誰もが自分の目を疑った。そして誰もがこう思っただろう。



 むごい……と。




【アザゼル・フリード視点】


 あの人が叫んだ。


「ルルさんっ!!」

 お義兄……ではなく、バアルさんが叫んだ。


 【七大悪魔王】の皆さんが振り返り、斬り飛ばされたルルさんを見て、何が起こったのか理解したとき最初に叫んだのはバアルさんだった。


 バアルさんは誰よりも早くルルさんに向かって駆け出した。駆け出すというよりかは跳躍に近かった。

 だが無情にもバアルさんの眼前には、納刀した刀を携えた竜斗さんが立っていた。



【居合の構え】+【風・雷属性】


「抜刀・嵐の位 ハリケーン」



 竜斗さんが静かに呟き、そのまま刀を横薙ぎに抜刀した。



 み、見えなかった……。


 基本的に、この世で最も速いとされる雷属性。その雷属性より上ではと言われる光属性。


 私は堕天族だ。


 ゼノさんの【光闇属性】とまではいかないが、私にも堕天族固有の先天スキル【光属性】がある。

 そんな私ですら目で追うことを許さない様な、竜斗さんの【嵐属性】……恐ろしい。


 最も普段の修練の中で竜斗さんの動きを目で追えた試しはないのだが、先程の斬撃は今までの比ではなかった。



 そして、その一撃を喰らったバアルさんは両の脚を大腿から綺麗に切断され、風の影響なのかルルさんとは反対の壁に向かって吹き飛ばされた。

 壁までは届かなかったが、バアルさんは地面を転げ回り、悲痛な叫びが修練の間にこだました。


 竜斗さんは軽く腕を振るい、刀に付いた血を払った。



「……なんだ、皆少しは覚悟した顔つきになってたから真剣になったと思ったのに……全然駄目だな…………全然……駄目だな……」


 竜斗さんは静かに呟いた……ただそう呟いた……それだけだ……それだけなのに……なのに……私の体は尋常なない程、震えた。



 怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!



 何故かは分からない。何故かは分からないが竜斗さんは怒っている。いや……


【怒っている】


 そんな生易しい言葉では今の竜斗さんの状態を現す事は出来ない。だが今の私にはそれ以上の言葉が出てこない。



 ゆっくり周りを見渡すと、私と同じ部隊長の皆の体も震えている。額からは多量の汗が噴き出している。息をすることさえ許されないかのような重苦しさ。呼吸は苦しく、動悸も激しくなってきた。

 そんな中、レイナ様だけが微動だにせず、ただひたすらに竜斗さんを見つめていた。



 私はレイナ様の視線を追うように再度あの人を見つめた。



 怖い……




【ガーベラ・ドレイン視点】


 いつの頃からだろう……お慕いしているあの人が私をそう呼ぶようになったのは……


【テトラ】


 私はまるで走馬灯でも見るかのように、あの日を思い出す。



 私は祖国であったドラグナー国からアルカディア国に亡命し、己の不甲斐なさに失望し、軍への入隊を決意した。

 女性が軍へ志願するのは珍しく、同期であり同じ部隊長でもる八咫族のイヨ・セイレンを除けば数名しかいない。


 ある日私はイヨと共に修練の間にて、手合わせしていた。今思い返しても拙い児戯のような打ち合いだったと思う。

 今まで神器も持ったことのない女が二人。端から見ても酷く、他の皆にも気を使わせ、他の兵士と距離をとって隅の方で二人、ただただ木刀で打ち合っていた。


 そんな時だ。あの人が声をかけてくれた。



「……へ~……二人ともAランクか~……」

「「!?」」


 私とイヨは突然声をかけられ、打ち合いをやめて声の主に振り返った。

 そこには私達の命の恩人ともいうべきあの人が屈託のない笑顔で立っていた。


 竜斗様は尋ねてきた。何故そんな隅で二人修練してるのか。私達は答えた。自分達はまだ未熟で他の兵士達の迷惑になるからと。



「……ふ~ん」

 竜斗様は少しつまらなそうな顔をして呟いた。


 怒らせたか?と内心焦っていると、竜斗様は腕の骨を鳴らし近くに置いてあった木刀を手に取った。



「上から目線で悪いけど、俺が稽古してあげる」


 竜斗様は笑顔でそう言った。なんでも強い人とやらないと強くはなれないのではとのことだ。戸惑いはあったものの私達は願ってもないと意気揚々と励んだ。



 結論から言おう。


 私達はボロボロに叩きのめされた。顔は打たれなかったが、身体中痣だらけになり、立つことすら出来なくなった。

 周りにいた兵士達も手を止め、オロオロと心配しながらこちらを見ていた。


 本当に不甲斐ない……



「うん、でも最後の方は良かったよ。木刀に慣れたのもあるだろうけど、打ち込まれすぎて段々躊躇う余裕も無くなってきたみたいだし、遠慮なく俺に打ち込めるようになったしね」

 竜斗様は倒れている私達を見下ろしながら笑顔でそう言った。


 そう言われれば最後は必死すぎて、今までの自分達からは信じられない攻撃をしたと思う。まぁ当たることは無かったけど。



「二人とも潜在ランクがAはあるから、Bランクになったら隊長かな?ガオウとルキに推薦してあげる。頑張れよテトラ(・・・)、イヨ。」


 竜斗様はそう言いながら、他の兵士達の元へと向かっていった。その場にいた全員がボコボコにされていった。



 ?テトラ?もしかして私の事?後日聞いたところ、

「兄貴の影響なんだけど⚪ーベラ・⚪トラって好きな機体の1つなんだ」

と、意味不明な事を言っていた。



「だからテトラって呼ぶわ」



 私は変な愛称で呼ばれる事となった。



 だが私は嬉しかった。種族は違うが、強く優しいあの人に更に惹かれていった。愛称で呼ばれているのは私だけだ。あのレイナ様でさえ愛称では呼ばれていない。


 あの人の期待に応えたい!


 叩きのめされたあの日、私は誓った。地面に横たわりながらあの人の優しい背中を見つめそう誓った。




 私は震える体を必死に抑えるように、今あの人を見つめている。


 ルル殿は傷つき、バアル殿も傷ついている。夥しい多量の血が流れ、修練の間に嫌な……血の匂いが充満している。


 そして、あの日の私とイヨの時みたく竜斗様は見下ろしている。足元で傷つき倒れているルキウス様とゼノ殿を……


 その瞳はとても冷たく、冷酷で無慈悲な眼差しだった……あの輝く美しい金色の瞳は、どこまでも鈍く妖しい色を放っていた。



 うぅ……吐きそうだ……




か、漢字が思いつかなかった……



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