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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第四章【七大悪魔王】
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あの言葉と甘い時間



急な勤務変更万歳!!


まだまだインフル流行っているので皆様お気をつけて下さい


色々ありましたが、遂に100話です。








 私は夢の中で、あの言葉を思い出す。




 何度も何度も繰り返し思い出す。


 それは期待していた言葉ではなかった。想像すらしていなかった。


 悪く言うと期待外れの言葉だった。


 普通すぎて想像の候補にすら入っていなかった。


 でも私は、その言葉に救われた。


 その言葉を囁かれた瞬間に天にも昇る気持ちになった。


 この時、私は気付いた。私が欲しかったのは言葉の内容ではなく、言葉そのもの。言うなら、行為そのもの。


 【愛しい人が言葉を言ってくれる】、それ自体を私は望んでいたのであって、言葉の内容は二の次になっていたようだ。


 だから愛しい人が囁いてくれた【契約の条件】が、ごくありふれた、月並みの、なんでもないようなモノであっても、私にとってはそれが、私の心を満たすには充分なことなんだと理解した。




「ずっと俺の傍にいてくれ……絶対に絶対だ……」




 愛しい人はどんな事を思い、この言葉を発したのだろう?


 物理的な距離なのか?それとも心の距離なのだろうか?


 私は愛しい人の隣で、共に歩んでいきたいと切に願った。


 今思えば私は焦っていた。


 あの人は強く、私は弱い。どんどん離されていく気がしていた。


 魔族の国が安定された時、あの人は私の隣にいるのだろうか?


 「離されたくない!」焦る気持ちばかりが頭の中をよぎっていた。



 そんな私の心情を見透かしたかの様な、ありふれた言葉。


 でも私の心は満たされた。


 私は気付いた。勝手にあの人に離されてると思い込んでいただけだと……



 もう迷わない。



 あの人の隣は私だけのもの。今、私はあの人の隣を歩けてる筈だ。だから、もう迷わない。


 これから先どんなことがあっても私は自信を持って進んで行ける。


 あの言葉があれば私が迷うことはもうない。




 だって……あの人が望んでいることなのだから




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 目が覚めると私は寝慣れたベッドで横になっていた。昨日干したのではと錯覚する程のフカフカな布団。私はゆっくりと自分の思い出せる最後の記憶を手繰り寄せていく。


(そうだ……確か最後に竜斗様と戦って……)


 私は起き上がろうと体を動かそうとするが全身に痛みが走り、思わず叫びそうになった。


「いっ……たぁ……」

 涙目になりながら私は呟いた。本当に痛かった。特に両腕辺りから激痛が走った。そして私はまた1つ記憶を思い出す。



「そういえば両手……」

 竜斗様と戦った最後、私には両腕がなかった。私は恐る恐る両腕を見つめた。


「……ある」

 私は胸を撫で下ろした。


 よく見たら私は袖がない服、竜斗様曰くノースリーブの服を着ていた。そこから見える腕は確かに私のものだ。


(……本当に?)

 そんな気持ちがよぎり、私は手の感触を確かめる。布団の中で拳をニギニギさせるとちゃんと感触があった。


 そして別の感触があることに気付いた。



 私は痛む右手を何とか布団から出し、顔を動かさずに見える位置まで右手を軽く上げた。すると私の右手を優しく包むように別の誰かの手が添えられていた。


 私はちょっとずつ痛みを(こら)えながら体を動かし、それが誰の手なのか確認した。といっても、それが誰のものなのか間違う筈がなかった。


「……ふふっ、やっぱり……」

 当然、愛しい竜斗様の手だった。


 竜斗様は顔を少しだけ布団の上に乗せ、床の上に座り、小さく寝息をたてていた。


「すぅ……すぅ……すぅ…………んっ…………レイ……ナ?」

 タイミングよく竜斗様は目を覚まされた。



「はい、竜斗様」

 私は微笑むように答えた。


「……目、覚めたんだ……良かった……」

 竜斗様はまだ少し眠たそうにされていた。


(可愛い……)

「はい。まだ全身が痛く動かすのは無理そうですが、なんとか……」


「そっか……」

「あの……もしかしてずっと看病を?」

「いや、基本的にはルルとララだよ。レイナ5日も目を覚まさなかったから……申し訳ないけどその間、皆の修業をしてた」


「そうですか」

 少しだけ複雑な気分になりました。


「それと……目が覚めたばかりだけど……レイナに話すことが3つあるんだ……」

「なんですか?」


 竜斗様は、少しばつが悪そうな顔で言葉を続けた。


「えっと……賛辞と説教と報告、どれからがいい?」

「…………なんですかその3つは……」


 特に説教。大体予想がつきます。聞きたくない。


「あの……説教以外の2つだけというのは…」

「ないね」


 即答されました。




「なら先ずは報告からでいい?」

「……はい」

「レインバルト、ネム、ナスカの3人が昨日戻ってきた」


「本当ですか!?」

 私は少しだけ大きな声が出た。


「ああ、詳しいことはレイナの体調が全快になってからだけど……取り敢えず、神国が攻めてくるのは今日から10日後らしい」

「……そうですか」


 覚悟していたことだが、それがいよいよ現実化してきた。しかもアーシャが告げた1ヶ月通り。だけど私は心の何処かで「攻めてこないんじゃ」と淡い期待を抱いていたのかもしれない。

 そんな思いが私の声を少しだけ震わせた。


「レイナ?」

「大丈夫です」

「……まぁ詳しくはまた後で」

「はい」




「次に賛辞の言葉ね」

「はい」


 私が返事をすると竜斗様は優しく微笑んでくれました。

「おめでとう、SSランク」


「ふえっ?」

 驚きのあまり訳がわからず変な声が出てしまった。


「まぁ当然かな。俺の片腕ぶっ飛ばした訳だし、次元属性使えたなら、あのウロボロスも倒せるでしょ」

「そ、そうなのですか?」

「うん、神眼で確認したし間違いないよ」

「ほ、本当に……?」


「まぁ、魔力が全快したら【魔眼<王>】で確認してみて」

 竜斗様は優しく微笑んでくれました。


「分かりました……」

 正直実感がない。以前と何も変わらない感じだし、体調が悪いせいか寧ろ弱くなったのではとさえ、感じる。

 あれほど焦がれた強さを手にしたのに今の私には不必要なようだ。何故ならあの言葉に勝る強さなんてないのだから。




「じゃあ最後に説教ね」

「うっ……」


 竜斗様が怖い。顔は笑ってるのに、目が笑ってない。マジ(おこ)状態だ。


「ていっ!」

 竜斗様は掛け声と共に脳天唐竹割りを繰り出してきた。


 …………いわゆるチョップだ。


「いっ…つぅ……」

 あまりの激痛に、頭蓋が割れるかと思った。私は両手で頭を押さえる。


「俺が怒ってる理由分かってる?」

 何故か竜斗様の背後から「ゴゴゴゴッ」という文字が見えてきました。とんでもない威圧感です……。


「…………はい。SSランクの神器を発動させたことですよね?」

 私は恐る恐る返事を返した。


「うん。何で修練初日であんな無茶したのか、理由をちゃんと聞きたい。」

 竜斗様の表情は真剣そのものだった。



 私は小さく深呼吸すると、竜斗様に思いのたけを吐いた。


 自分は竜斗様に相応しくないんじゃないのか?遠くから竜斗様を見つめるだけの役に立たない女なんじゃないのか?竜斗様の隣にいたい、強くなりたい、焦っていた、契約の条件を聞いたとき凄く嬉しかった、もう大丈夫、想っていたことの全てを話した。


 竜斗様は真剣な眼差しで黙って私の話を聞いてくれた。


 そして私の話が終わると竜斗様は少しだけ目を閉じて何かを考えていた。考え事が終わると、ゆっくりと目を開け口を開いた。


「……そんな風に感じてたのか……ごめん……もっと早く、契約の条件を決めれば良かったね……」

 竜斗様は苦笑いされていた。


 私は首を横に振った。

「いえ……私が勝手に思い込んでいただけで、竜斗様は何も悪くありません」


「…………ホントに良かった?」

「えっ?」

「いや、契約の条件……前に言ってたじゃん。「凄い条件を期待してる」って……」

「いえ、あれでいいです。寧ろあれが良いです。あの条件なら私は頑張れますし、これからも迷わず進めます。竜斗様の隣で……ずっと……ずっと……」


「……そっか」

 竜斗様は照れ臭そうに鼻をかいていた。


「はい」



 少しの間、私の部屋に甘い空気が流れました。




「あっ!……でも竜斗様、前に言いましたよね?」

 私は過去の竜斗様の言葉を思い出した。


「?」

 竜斗様は首を傾げた。


「私がルキと戦った後、竜斗様言いました。「今度全力出すなら俺にしろ」って」

「うっ…………言ったかも…………」

「そうです!竜斗様、言ってました!私ちゃんと覚えてます!私は竜斗様の仰った通り竜斗様相手に全力を出しました!なので…」

「なので?」

「私は悪くありません!!」

「……いや……でも……それとこれとは……」


「ふんっ」

 私は()ねたように竜斗様から顔を逸らしました。瞬間、体に痛みが走りましたが我慢です。


 竜斗様は何度か私の名を呼びますが全て無視です。



「…………どうしたら許してくれる?」

「…………そうですね……あのチョップ本当に痛かったので、私にもお返しさせてくれたら許してあげます」

「…………分かった」



 私は竜斗様に優しく上体だけを起こしてもらいました。そして竜斗様は自分の頭を私の前に突き出してくれました。

「……覚悟は出来てる」


「いきます」

 私は痛む手を振り上げた。


 そして私は降り下ろすと見せかけて、竜斗様の頬に振り上げた手を添えて、お互いの唇と唇を重ねました。



「ん…!?」



 顔を見なくても分かります。竜斗様は絶対チョップが来ると思い身構えていた筈。それがまさかの口づけなのだから絶対に困惑してる筈です。

 我ながら、かなり恥ずかしい行動だったと思います。



「ん………」

「…………」



 そして私の部屋には長い間、甘い時間が流れました。





 大丈夫……私は戦える……ずっと……ずっと……竜斗様の隣で…………






100話とか何気に感慨深いものがあります。


イラスト(塗り)の方も進行中……完成は当分先ですが……


ついでに書きたい次回作が出来ました。

題して【どうせなら異世界で~2】!!

主人公は大きくなったソラちゃんとルーク君!

萌える?…燃える!!

……まぁ、これも当分先です…………



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