召喚と挨拶 ※イラスト有り
高校3年の夏休み、俺は部屋に置いてある、たいして使われていない机にかじりつくようにして勉強をしていた。
なぜそんな目に遭っているか順を追って話そう。
俺には3つ上の兄貴と1つ上の姉貴がいる。
この兄貴というのが現在引きこもり中の……まぁ世間一般でいう、いわゆるニートという奴だ。
隣の兄貴の部屋の扉の前には常時【入ってくるな!!】と書かれた板が立て掛けられている。
姉貴は現在ファッション系の専門学校に通っている。
弟の俺が言うのもなんだが姉貴は美人だしスタイルもいい。
以前、「モデルにでもなれば?」と尋ねた事があったが、「私はそういうのはいい」と即答された。
なんでも手に職をつけたいみたいだ。
そんな兄貴と姉貴が家の中ですれ違うと即座に戦争だ。
「きもい……」
「五月蠅い、ブス」
…………しばしの沈黙を破り大口論が始まる。ほぼ毎日であり、我が家の日課だ。
口論の最後は決まって、
「いい大人なんだからしっかりしなさいよ!!」
「黙ってろ!! お前には関係ないだろ!!」
で、ある。
スミマセン、嘘です。
口論は更に白熱します。
そんな2人だが昔は仲のいい兄妹だった。
小さい頃は3人で一日中、漫画を読んだりアニメを観たり、たまに外で遊んだりもした。
いい思い出だ。
2人の将来の夢は漫画家と声優だったぐらい仲睦まじかったのだが……いつしかお互い反発するように姉貴はオシャレに目覚め、兄貴はオタクに磨きをかけていった。
まぁ俺は兄貴も姉貴も尊敬してるし、2人とも大好きな訳で喧嘩の仲裁も大体俺の役目だ。
俺が間に入るとお互い少し冷静になり、自分の部屋に入っていく。
そんな2人の影響か、小さい頃から色々な漫画を読んできた俺は、特にバトル漫画が大好きな少年だった。
男なら誰でも1度は憧れるであろう剣士が出てくる漫画が好きで、俺は夢中になった。
そんな幼い俺が剣道場の門をくぐったのは言うまでもない。
それなりに才能もあったみたいで、小学生の頃には小さな大会ではあったが何度か優勝したこともあった。
高校2年の時には団体のメンバーにも選ばれたし、個人ではIHにも出場できた。
そんな時、TVでたまに出演する剣術家で有名な人が、
「君才能あるね」
と、言ってくれたのだ。
なんでも大学でも剣道を教えているらしく、スカウトで俺に声をかけてくれたのだ。
沢山の奴らに声を掛けてるとは思いながら、それでも俺は嬉しくて、この人の下で剣道がしたくて、死に物狂いで練習に打ち込んだ。
正直勉強はかなり苦手だった。
昔から体育となぜか美術だけは成績が良かったのだが、それ以外は……聞かないでくれ。
ただIHでベスト8に入れば間違いなく推薦で入学出来るとのことだったし、親からも大学には行っときなさいと言われていたので、3年の夏に全てを懸けた!!
結果は冒頭に戻ります……
その日はこの夏最高気温であり、外のセミの音は五月蝿く、部屋の前の廊下での兄貴と姉貴の口論も五月蝿く感じた。
毎日慣れない勉強をし、希望の大学に行けるのかという焦りや、彼女が出来るのかという思いがあり、更にイライラに拍車をかけた。
俺はバンッと両手で机を叩き、立ち上がって心のなかで、
アーーーーーーーーーーーーッ!!
と、叫びながら少しずつ平静を保つようにした。
少し落ち着くと大きく息を吸ってゆっくりと息を吐いていった。
「ふぅ……」
廊下からはまだ口論が聞こえる。
俺は少し笑って、
「焦ってもしかたないか……まぁなんとかなるか」
と、若干諦め混じりで小さく呟き、兄貴たちの喧嘩を止めようと廊下に出ることにした。
ボサボサの頭をかきながら、ドアノブに手をかけ、欠伸をしながらゆっくりとドアを開けた。
全く知らない場所に、俺は立っていた。
「えっ、はっ、何?」
気づくと手にかけていたドアもなくなり、後ろを振り返っても自分の部屋はなかった。
辺り一面真っ暗ではあったが、少し離れた所にうっすらと2ヶ所ほど蝋燭の火が灯っているのに気づいた。
パニクりながら、少し涙目になって、必死で誰かいないか叫んだ。
「翔にい---!!」
「智ねえ---!!」
兄と姉の名を叫ぶが返事が返ってくることもなく、ただただ自分の声だけが小さく消えていくのを感じた。
「マジか……」
夢なんじゃないかと思いながら小さく呟き、少しだけその場に呆然と立ちつくした。
恐怖もあったが、夢ではないと感じその場にいても仕方ないと思ったので、俺は蝋燭の火が灯ってる所に向かって歩き出した。
2本の蝋燭の間ぐらいに立つと、前方にうっすら人影が2つあるのを感じた。
「翔にい? 智ねえ?」
俺の声が聞こえたのか、人影はゆっくりと近づいてきた。
2つの人影がハッキリ見えると俺は恐怖で一瞬呼吸が出来なくなった。
人というにはあまりにも異形であったからだ。ハッキリと人ではないと認識できた。
1人は2メートルにはなる背丈があり、自分と同じぐらいはある巨大な斧を片手で軽々と持ち上げ肩に担ぎ、全身を黒い鎧で身を包んだ獅子の獣人であった。
指にはいくつかの指輪をしていた。
そしてもう1人は、自分と同じ年くらいの可愛い顔をした女の子の悪魔だった。
頭からは左右2本ずつの角があり、背中からは左右2枚ずつの羽があった。
正確には腰ぐらいの高さから出ていた。
お尻からは尻尾が生えており尻尾の先端は三日月みたいな形をしていた。
この娘の指にも、いくつもの指輪がされていた。
顔ライオンだし!
手も毛むくじゃらで獣だし!
二足歩行だし!
何あの斧!?
てか、メッチャ見下ろしてきてるし!!
マジで夢なら覚めてくれ!
と、思いながら綺麗な女の子をチラ見した。
夢じゃなくていいかも……
ただ角と羽と尻尾がなければだが……
「どうやら成功のようですな」
「ええ、うまくいって良かったです。あれだけ貴重な神器をつかい、私の魔力のほとんどを持っていったのですから、むしろ失敗したでは困ります」
2人は俺を見ながら笑って日本語を話している。
俺は日本語を聞いて少しだけ安心したのか恐る恐る2人に尋ねた。
「あ、あの……ここはどこですか? 何かの撮影か何かです…」
「黙っていろ小僧、噛み砕くぞ!!」
涙目になりながら声をかけたことに後悔した。
「やめなさいガオウ将軍! 失礼ですよ!」
「はっ……申し訳ありません姫様」
どうやら姫様と呼ばれる目の前の女の子は上品で、ある程度常識のある悪魔らしい。
「申し遅れました。私はこの城の主にて、魔族の王、レイナ・サタン・アルカディアです。隣にいるのが我が軍が誇る最強の獣戦士ガオウ・レヴィアタン。部下の非礼をお詫び致します」
うわ~違って欲しかったのに、この娘自分から魔族の王って言っちゃったよ。
マジ勘弁してくれ。
これあれだ。
異世界に来ちゃったパターンだ。
頭の中で叫びながら2人を観察していると、レイナは瞳をパチクリさせながら尻尾を無造作に動かす。
あの尻尾絶対本物だよな~コスプレ……ではないな。
ライオンも被り物かと思ったけど瞬きしてるし、口も動いてるしな……
てか、レイナ可愛いな……
「大丈夫ですか?」
レイナは俺に顔を寄せながら尋ねてきた。
「えっ、あ、はい、だ、大丈夫です」
俺は慌てて距離をとりながら答えた。
大丈夫ではない、かなり焦った。
正直こんな可愛い娘とこんな近くで話したことはなかったからだ。
「そうですか……ではあなたの名前を教えて頂いてもよろしいですか?」
レイナはニコッと微笑んだ。
悪魔が人に名前を聞いてくる時は古来より悪い予感しかしないが、俺は戸惑いながらも咄嗟に答えてしまった。
「あっ、はい、天原です……天原竜斗です」
「まぁ竜斗様とおっしゃるのですね、素敵なお名前です」
レイナは自分の顔の前でポンッと両手を叩き満面の笑顔を見せながら喋り続けた。
「では、早速で申し訳ないのですが竜斗様……私はあなたが欲しいのです、今から私と契約して頂きます」
彼女の顔はみるみる豹変していき、どす黒い感情をさらけ出すかのように不適に笑った。
まさしく悪魔が下等な人間に囁き、微笑んできたのだ。
俺はなぜか名前を告げたことを後悔し、もう生きて自分のいた場所には戻れないと感じた……
文才がないのに、妄想を文章化したので辻褄が合わなかったり、言葉の使い方がおかしいかもですが、暖かい目で見てやって下さい。
◇
2019/9/3
イラストも追加しました。
描いて頂き本当に感謝しております。