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そして、日曜日へ

お久しぶりです。こんにちは。そしてこんばんは。

作者の代弁者の紫乃宮綺羅々でぇ~す。あ。お久しぶりでもないか?

もう六話です。早いですよ。六話です。六話。


いや~早い。それしか言えないよ!


そんな訳で、第六話をお楽しみください。それではっ!

「抜刀かぁ……」

 自分の部屋で寝間着を着てベッドに寝そべり、ボノボルの包装を開けてひとつほおばる。


 時刻は午後九時四十分。明日も学校があるしそろそろ寝ないといけない時間だ。


「抜刀……」

 思い立ったてベッドから跳ね上がるように起き、クローゼットを開ける。


「……」

 そこにはわたしの愛用していた直刀の『双樹咲夜』が壁に立てかけてある。150センチ。わたしと同じくらいの長さの刀の咲夜。


 その咲夜の鞘は相変わらず白い布でガチガチに巻かれて『刀が抜けない状態』になっている。それもそうだろう。だって自分で巻いたんだから。二度と抜かないように。あの思いをしないために。二度と抜刀しないように戒めを籠めて。


「日曜日……咲夜を持っていかないといけないんだった……」

 那凪ちゃんとの練習の約束。那凪ちゃんは騎士道の練習をするのだから練習相手のわたしも納刀状態とはいえ刀を持って行かなくてはならない。『空想具現武装端末(ファンタズマ・デバイス・ウェポン)』は使えないし……代わりの刀もない。この咲夜が一番使い慣れているし、新しく刀を買うつもりもない。そんなお金もうちには無いし。


 それとこの刀は『マナの祝福』の効力が切れている。

もし刀を抜いてひとを傷つけたら、わたしは未成年であろうと逮捕されてしまうだろう。鞘に入っているうちは大丈夫……刀身が見えなければ……


「なまくらか……」

 あの男のひとの言葉を思い出す。あのひとが言ってたことはあながち間違いじゃない。マナの祝福を受けた武器はひとを殺める事ができない。それ故に護身用として持ち歩くことが法律で許されているのだから。


 だからわたしはこの咲夜を、絶対に抜くことができない。だって逮捕されたくないから。


「受けなきゃよかったかな……」

 そして今になって……冷静になって考える。練習……断ればよかったと。


「抜刀かぁ……」

 同じ事をオウムのように繰り返す。思い出すのはあの大会。わたしがあのひとの武士道人生を奪ってしまったあの大会。


「……」

 どうしてるのだろう? 二年前にお見舞いをして以来ぜんぜん会ってない……元気なのかな……完治したかな……それとも、まだわたしの事恨んでるのかな……憎んでるんだろうな……


「……寝よう」

 考えをやめて、クローゼットを閉じる。


 電気を消してベッドに入る上布団をかぶる。


「抜刀……」

 わたしは……どうなんだろう? やっぱり武士道に未練があるのかな……


「そっか」

 あるから……わたしは納刀状態だけの練習をしている。基礎鍛錬を続けているんだ……


 でも、やっぱり復帰するわけにはいかない……だってもし復帰したらあのひとに申し訳が立たないから……



「……ごめん」

 わたしは誰に謝っているのかわからない言葉を口にして睡魔に身を委ねた。



 ◆



「よし」

 登校の支度が終わり、朝食を食べて家をでる。今日学校に行けば明日は土曜日。学校が休みだ! やったね!


 太陽がわたしを照らす。見上げた空は快晴。雲ひとつない晴天。今日は雨も降る心配は気持ちのいい晴天。


「おはよう那凪ちゃん」

 いつもの通り那凪ちゃんと一緒に登校する。そしていつも那凪ちゃんが言ってる『身長伸びた?』の会話をしていつも通りに『武士道部に入部した?』の話し。


 わたしはいつも通りに『伸びてないよ』『入部してないよ』と返す。


「いつになったら入部するのよ?」

 そんな那凪ちゃんの問いにわたしはこう答える。


「入部しないって」

 と笑顔で返す。


「……その笑顔見てて痛々しいわね」

「えっ?」

「ううん、何でもないよ。日曜日。ちゃんと来てよね」

「わかってるって」

 那凪ちゃんのつぶやきを聞こえないフリをする。痛々しいか……那凪ちゃんにはそう見えるんだ。わたしの笑顔が。


 そして、新妻沼の駅に降りる。電車を乗り換えて西船橋で降りて学校へと向かう。


「……その笑顔見てて痛々しいわね」

 那凪ちゃんの言葉が痛い。心に刺さるようなするどい言葉の刀。わたしの心は晴れない雲がかかったようにモヤモヤとしている。


 学校までの距離約1.5キロメートル地点で止まる。この地点から校門手前までポイント獲得フィールド。


 いつも通りにカード型学生証端末からクリアパネルを起動してポイントのアイコンをタッチ。


「……」

 その中からいつも通りに『シューティング』に触れる。


 わたしはこのモヤモヤをはらしたいと一心で一度も選んだことのない高難易度の『エキスパート』を選択。


 ウェポンはいつも通りの刀……はやめて、槍を選んだ。


 空想具現武装端末を取り出し、丸いAボタンとトリガータイプのBボタンを同時押しをした。


「……」

 そして、エキスパートのシューティングがスタートした。


「ゼロポイントか」

 ゼロポイント。わたしは結局球体を一個も割れずに五分が経過。


 一度も選んだことのない難易度に加え使い慣れていない槍。結果は明白。誰でもわかる簡単な問題。


 こんなに動いたのに……汗もかいたのに心は晴れない。まったく晴れる気がしないのはなぜだろう?


 結果はさっきも言ったとおりに『ゼロポイント』通学路でのポイントゲットはならなかった。


 ◆


 この時間帯の通学路は生徒で溢れる。当たり前か登校時間だからね。


 校門に辿り着く。


「……」

 いつもだったら、つい先日ここで『志々倉先輩』が待ち伏せしていてわたしを勧誘していたのに……今日はいない。


「そっか、昨日で最後だったんだっけ?」

 そう思い出す。そして胸のモヤモヤがいっそう強くなる。


「いい天気なのになぁ……」


 昇降口のポイント端末で学生証をかざし登校(ログイン)ボーナスを獲得。


 昇降口から見上げた空は快晴。雲ひとつない気持ちもいい晴天。今日は雨も降る心配はない。でも、私の心は曇っている。なんだかわからない思いで。寂しいような嬉しいような複雑な思いで私の心は曇っていて……濁っていた。



 ◆



「姫乃木さん。少しいい?」

「ん? うん、いいけど? どうしたの?」

 休み時間に声をかけて来たのはクラス委員長の『真木花代』さん。


「今日ね、船橋の駅で車いすの乗った女の子が私に声をかけてきてね、姫乃木さんの、たぶん中学の時の写真を見せられてね……んで姫乃木さんの事を探してるようなんだけど……その女の子に心当たりある?」

 真木さんは少し言いにくそうに話を続けている。


「車いすの女の子?……知らないけどその子がわたしを探してるの?」

 車いすの女の子……


「うん、そうみたいなんだ」

 真木さんから詳しく聞いてみるとその子はわたしと同じくらいの歳の女の子で、船橋駅に居た女子高生に片っ端から声をかけて、わたしの写真を見せて探しているらしい。


「車いす……その子ひとりで?」

「ううん、後ろで男の人が車いすを引いてる」

「そっかなんか……気持ち悪いなぁ……」

「でしょ? 私も聞かれたけど知らないって答えておいた。もし船橋に行くことがあったら気をつけて。なるべくなら行かない方がいいかも」

「……うん、そうだね。気をつけるよ」

 車いすのわたしくらいの歳の女の子……


「私、授業の教材持ってこないといけないから行くね。じゃあね、姫乃木さん」

「あ、うん、教えてくれてありがとう」

「ううん、帰り道とかホントに気をつけてね。あ、なら私と一緒に帰る?」

「あ、ううん、いいよ。真木さん委員長の仕事と部活があるでしょ?」

「うん、ごめん。じゃあホントに気をつけてね」

「うん、ありがとう。じゃあね」

 お互い手を振り真木さんは教材を取りに教室を出ていった。



 ◆


「じゃあね、シオっち。試験休みになったら妻沼に行くからねぇ〜」

「あ、うん、待ってるじゃあね」

 放課後。流奈ちゃんと深奈ちゃんとあいさつを交わし昇降口で別れた。


 ポイント端末に学生証をかざし下校(ログアウト)ボーナスを得てわたしも昇降口を出る。



 ◆



「もういくつ寝ると……日曜日」

 帰路のJP総武線の電車内。開閉ドアの横を陣取り寄りかかって窓の外を見ている。そしてぼぉ〜と年末に歌う『お正月』の替え歌を口ずさむ。


「日曜日には、剣振って刀振って鍛えましょ……はやくこいこい日曜日……ふぅ……」

 自分で口ずさんでおいて何だけど……空しい……できれば日曜日は来てほしくないな……那凪ちゃんの鍛錬に付き合うのはいいけど……咲夜を持っていくのがなぁ……


「ふぅ……」

 ため息を着いて沈んだ気持ちのまま帰るのだった。



 そして日付が変わった土曜日。学校は午前中だけ。


 いつも通りのシューティングでポイントを稼いで、登校ログイン下校ログアウトボーナスを得る。



 そして学校が終わった午後は家で過ごし、那凪ちゃんの練習に付き合う日曜日を迎えるのだった。



 第六話・完

まずは最後まで読んで頂き、ありがとうございます。間宮冬弥です。

楽しんでいただけましたでしょうか?


この調子で第七話も早くアップできるといいのですが、まだ執筆中です。

もう少しかかると思いますで気長に待ってまっていだだけるとありがたいです。


では、これで失礼します。

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