終(つい)の一刀。
おはようございます、こんにちは。そしてこんばんは
作者の代弁者の紫乃宮綺羅々でぇ~す。みんな元気かな?
前回、話したと思うけどもう、第三話が完成したのでアップしまっす!
どうしたの? と思うくらい投稿のペースが速くて少し心配な今日この頃です。と、言いたいけどまぁ大丈夫でしょう。だって「闇ゾーマ超強い! 倒せる気がしない」って言って元気にコントローラーを投げるくらいだからね! 大丈夫でしょう!
では、やっぱりちょっぴり心配ですが第三話をお楽しみください。
それではっ!
「先輩、ちょっと、待っ、」
志士倉先輩の振り下ろしの斬撃を『乱軽踏法』でかわす。
(するどくて……すごく速い!)
先輩の斬撃はとてもするどくて、そして洗練されていた。後少し反応が遅れてたら当たってたかも。
「なるほど、それがネットで名付けられたアルフィーナ・ランページのステップ回避『ア・ラ・ステ』というものですね! お見事です!」
「あらすて!? あるふぃー!? なに言ってんですか!」
先輩の横一閃の追撃を横に軽躍でかわす。
(これも……見事なくらい綺麗な一閃!)
横からの一撃もとても素早くて、洗練されている。あの一撃からわかる。高校で初めての実践だけどこの先輩は……強い!
「知らないのですか? 今あなたが使用しているステップ回避ですよ!」
先輩の縦・横・ナナメ・上下左右からの連撃は止むことなく続く。それをわたしは先輩が言うア・ラ・ステとやらでなんとかかわしていく。
気を抜いたりスキを見せたら一撃が入る。そんな緊張感でわたしは満たされる。
この感覚……この緊張感……すごく久しぶりだ。
「ステップで逃げてばかりですね!」
「ステップ? もしかしてこの『乱軽踏法』の事ですか!」
「そうですよ! あの騎士道世界一の『アルフィーナ・ランページの回避ステップ』があなたのそのステップにそっくりなのです! ネットでは有名ですよ。あの世界一の騎士が中学王者のあなたのステップをマネたとね!
会話してても、上からの斬撃、下から斬撃。左右からの斬撃。とにかく先輩の縦横無尽で怒濤の攻撃は止まらない。鞘で受け止め、そして、乱軽踏法で雨のような攻撃を紙一重でかわす!
「くっ……これだけの連斬が一度も当たらないなんて……やはりあなたはすばらしい! そしてその技量が私には必要!」
先輩は突然攻撃を止め、わたしとの距離を離す。
(……納刀?)
刀を鞘に納める。そしてゆっくりと腰を落とし柄に手をかけ半身になって……それは今のわたしと同じ『納刀』状態だった。
「ですから……あなたに最大の賞賛を贈り、私の抜刀術であなたを倒します! そして姫乃木紫苑。あなたを武士道部へ導きます!」
空気がピリつく。先輩の雰囲気が変わった。
(大技がくる……それもかなり強力な)
気を引き締める。唇が急激に渇く。額から汗が垂れる。たぶん冷や汗。先輩からにじみ出る殺気。わたしは今、殺されかけている。
この一撃をかわすなり、防ぐなりしないと……わたしはたぶん病院行きだ。
でもこの離れた距離で納刀?……しかも先輩は抜刀術と言った。でもこの離れた距離での抜刀術? ……抜刀……この距離……もしかして! 駆け抜けざまの一閃『駆け一刀』!
「志士倉真乃、推して参る!」
考えがまとまらない内に、志士倉先輩が踏み込んだ!
「くるッ!」
どうする! どうすればいい、わたし!
「終わりの一刀です!」
「あぅ……は、速い!」
踏み込んでから……二歩目が速い!
まるで、氷の上を滑るように、弓から放たれた矢のように、拳銃から放たれた弾丸のように先輩は一直線にわたしへと光速で駆け寄る、近寄ってくる!
「だ、だめ……」
速すぎて……かわせない!
わたしは瞬間的に目を閉じた。きっと次に目を覚ましたときは病院が保健室のベッドの中だ。そんなあきらめがわたしを恐怖が、わたしを包んだ。
ピッ、ピッ、ピィーーーーー
「えっ……?」
どこからか聞こえてきた電子音。
「タイムアップですね。残念です」
耳元で囁く先輩の声。
「タ、タイムアップ……?」
先輩はわたしの真横で停止していた。
「あっ……」
先輩の刀は鞘から抜かれるか、抜かれないかの微妙な位置で止まっていた。タイムアップが後少し遅れていたらと思うとゾッとする……
「やはり二分は短いですね。もっと早く乱入するべきでした」
先輩が刀を鞘に納めた瞬間、フィールドが霧になり、わたしと先輩は元の空間へと戻る。
持っていた刀と鞘が空想具現武装端末へと姿を変えて戻っていった。
「あっ、うっ……」
両膝が地面へと落ちる。
ピピッ、ピピッ!
そして、電子音を鳴らし空からスターブルームがゆっくりと私のナナメ前方へと降りてカバンを置いた。そして光の粒を弾かせキーホルダーへと戻った。
胸が上下して……なんだか息が乱れる。異様に息苦しい。額から流れる汗が止まらない。
何なのこれ……恐怖感? それともタイムアップしてくれてよかった安堵感? わからない。それとも両方なの?
「大丈夫ですか? 汗だくですね?」
「あっ……」
差し伸べられる志士倉先輩の手。ああ、そうか。わかった。わたしは今、先輩に恐怖してるんだ。
「だ、大丈夫です。ひとりで立てます」
先輩の手を取らすに自分で立ち上がる。
「短い時間でしたが有意義な戦いでした。さすがは『高天ヶ原櫻子』の最後の弟子ですね」
「……いえ違いますよ。わたしは弟子なんかじゃないです」
「え?」
あのひとはわたしに何も教えてくれない。最後の弟子というなら、それは那凪ちゃんのお父さんと妹さんだ。わたしは那凪ちゃんのお父さんからしか武士道を教わってない。
神夜さんは人前にでるのが嫌いだから便宜上わたしが『高天ヶ原櫻子の最後の弟子』となっているだけだ。妹さんも同じ理由。
「謙遜はいけませんよ。あなたのあのステップも戦い方もまんま高天ヶ原櫻子の戦い方ですよ?」
「そういう先輩だって『霧島慧音』の弟子じゃないですか」
霧島……か……自分で言っててなんだけど、思い出しちゃうな……
「そうですね。ですがわたしはその他大勢の弟子のひとりに過ぎません。慧音さんの本当の弟子は別にいますよ」
「そうですか……」
それはたぶん……
「あ、そうだ」
何かを思い出したかのように先輩は学生証端末を起動させて何かを操作している。話していてわたしの中にあった恐怖心はもう無くなっていた。もとの先輩と後輩。毎日勧誘してる先輩に戻っていたからだ。
「えっ?」
「どうぞ。強制バトルしたお詫びです」
わたしの学生証端末に『通信あり』と表示。学生証端末を起動させると『ポイントの譲渡申請があります』と表示された。
「45791ポイント……」
クリアパネルにはそう表示されていた。
「遠慮なくお受け取りください」
笑顔の先輩。
「結構です」
そう即答。
「えっ? よろしいのですか?」
「失礼ですけど、これって先輩の全ポイントじゃないんですか?」
「そうですが?」
「なら受け取れません」
わたしはクリアパネルの『譲渡拒否』のタッチした。
「本当によろしいんですか?」
「はい。わたしは先輩に勝ったわけじゃないですし。それに『強制バトル』・『譲渡拒否』なんて出てるんだから、これは正式なバトルじゃんないと思うんです」
「……そうですね。あなたの言うとおり、システムに組み込んであるとはいえ、これは私の勝手で私的なバトルです。ポイントと引き替えに強制対戦権を行使してあなたに無理矢理バトルを仕掛けたのですから」
「強制対戦権?」
「ええ、生徒手帳アプリにも書いてあると思うのですけどこれを行使するにはポイントが必要なんですよ。しかも勝っても負けても仕掛けた方のポイントは失うしポイントの獲得も出来ない。デメリットだらけで使うひとなんていませんけどね」
先輩は笑顔でそんな事を言ってくる。でも……ポイントを失ってまでわたしに戦いを挑むなんて……
「……どうしてですか? どうしてポイントを失ってまでわたしと戦おうとしたんですか?」
「そうですね……強いて言えばあなたの実力を見たかったからですかね。どんなに勧誘してもまったく興味がなさそうだったので武力に訴えてみました。でも、空回りに終わってしまったようですけどね」
「……」
「……姫乃木さん。私は武士道で『全国』に行きたいのです。あなたと一緒ならそれが叶う」
「先輩……」
「中学王者のあなたが入学すると聞いて、驚くと同時に希望が見えました。これで全国に行けると。ですが調べるとあなたは二年前の『大会』を最後にいっさいの試合には出場しておらず、なおかつ知らない間に武士道を引退までしていた。ネットで知ったときはショックでしたよ」
「……」
「実は今はまだ『同好会』なのですけど、姫乃木さんが入部したら『部』として生徒会に正式に申請するつもりです。どうですか? 武士道部……じゃないですけど武士道同好会で復帰しませんか?」
「……」
そうか……どうりでおかしいと思った。入学パンフレットの部活紹介に武士道部なんてなかったのに。だからこの高校に入学したのに……同好会。そういうことだったのか。
「わたしは……武士道は辞めたので入部は……できません」
「辞めた……そうですか。残念です。あれだけ戦えるのに。もったいないですね」
「すいません」
「いえ、わかりました。では、勧誘はこれで最後です」
「えっ? 最後?」
意外な言葉が先輩から漏れて、思わず聞き返してしまった。
「ええ、勝ったにせよ負けたにせよ、この対戦で最後と決めていました。なので勧誘は今日ここで終わり。最後です。それにあなたが嫌がっているのに、これ以上勧誘はできませんし」
「そう……ですか」
「私の勧誘に未練がおありですか?」
「えっ! いえ、無いです……」
未練……? わたしは……なんで残念がってるんだろう?
「それとも武士道に未練でも?」
「いえ、な、無いです……」
未練……わたしは……どうなんだろう……未練か……抜刀できないわたしなんて……
「そうですか。では私はこれで失礼します。願わくば姫乃木さんの一生で一度の高校三年間が『後悔がなく』有意義になることを祈ってます。もし気が向いたら武士道同好会へ遊びに来てください。歓迎いたします」
そう言って志々倉先輩は深々とお辞儀をした。
「それと、二ヶ月もの間、勧誘して迷惑だったでしょう。重ねてお詫びします」
先輩はさらに深々と頭を下げ、礼をわびる。
「いえ、そんな……迷惑……なんて」
「イヤではなかったと?」
「あ、そういうわけじゃ……」
「そうですか。ああ、聞きたいのですけど、私の最後の『駆け一閃』はどうでしたか?」
あの一刀は……
「……正直なところ、かわせませんでした。すごく迅い一閃です。タイムアップがなかったから喰らってました」
正直な感想を述べる。
「ありがとうございます。あなたにそう言われると自信が持てます。では本当にこれで」
ふたたび先輩は深々と頭をさげて歩きだした。
「……それと……迅速すぎて怖かったですよ」
わたしの声は先輩には届かないけど、そう言わずにはいられなかった。
第三話・完
こんにちは。間宮冬弥です。
まずは、稚拙な小説ですが最後まで読んで頂きありがとうこざいます。
どうだったでしょうか? 楽しんでいただけたでしょうか?
次回も早い段階で投稿できると思うのでその時はよろしくお願いします。
それでは、これで失礼します。