わたしは刀が抜けない。
お久しぶりですこんにちは。そしてこんばんは。
作者の代弁者の紫乃宮綺羅々でぇ~す。元気してた?
まずは今さらだけど、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
新作の期間があいてごめんなさい。これには一応理由があってね、実はノクターンノベルで小説を書いてたから、こっちの投稿が遅れたんだよね。ごめんね。
まぁこれはこれで終わり。まずは新作が完成したらアップします。
あ、それと間宮冬弥からの伝言を頼まれてたんだ。
えっとぉ、作中にソードホルダーって単語が出てくるけど、これは剣道の竹刀を入れる竹刀袋と考えてください。だって。
まぁ、そういうわけだからこの単語が出てきたらそう捉えてね。
それでは新作をお楽しみください! ではっ!
不登校。それは昨今問題になっている全国の小中校、そして高校で学生が様々な理由で、学校に来なくなる問題である。
しかし、この『陽奈森高等学校』では登校率が80パーセントと言う高い率を誇っている。それは、この『陽菜森高等学校』が提案して取り入れた画期的な方法と高度なシステムで解決したのである。
この物語はそんな不登校解消システムを取り入れた高校とひとりの悩める少女の物語である。
◆
「1310ポイントか」
朝。わたしは真新しいカード型学生証端末の角をなぞりクリアネルを中空で起動させる。そしてメニュー画面からポイントを選択して今貯まっているポイントを確認する。
入学して二ヶ月。入学したての時にはこの学生証の使い方もわからなかったけど、今はだいぶ慣れた。でも、学生証の四隅をなぞって機動させる方法は今でも慣れない。
「よし、今日もポイントゲットだ!」
わたしの通う『陽奈森高等学校』には『登校ポイントシステム』なる学校が認めたポイント制度がある。不登校対策にテストケースで始めたらしいけど、かなり効果があって各都道府県の小学校、中学校、それに高校が導入に前向きらしい。
獲得したポイントは『陽奈森高等学校』の校内に設営している『プラスプライム』というコンビニで1ポイント1円で『割引』として使用できる。それと、購買などで教科書や、カバンなどと言った備品の購入にも同じく『割引』として使用可能。あとは校外にあるセブンで使用できるけど、それ以外は使用不可能。どこでも使えない。
この『割引』って言うのがくせ者なのだ。と言うのもこのポイントは『商品を全額ポイントで購入する事ができない』必ずお金は払う。と、生徒手帳に記載してある。例えば今現在、100ポイント貯まっていて100円のジュースを買うとする。その場合は100ポイント全額ポイントでの購入はできない。購入するには101円以上の買って『ポイント差額分を払う』必要がある。つまり100ポイント割引として使用して残り差額分の1円を払うと言った感じだ。これが『割引』でしか使えない『登校ポイント』なのだ。
「えっと、登校ボーナスって30ポイントだっけ?」
クリアパネルを獲得ポイント一覧表に切り替える。確認すると確かにそこの登校ボーナスは30ポイントと記載がある。
「よし、今日もがんばるぞい!」
わたしはそう意気込み、登校のための身支度を始めた。制服を着て、鏡をみて髪型を整える。うん、今日もボブヘアがばっちり決まってる!
◆
「おはよう、那凪ちゃん!」
前橋駅で待っていた幼なじみの女の子。その子にあいさつを交わす。
「おはよう、紫苑」
紺のブレザーと紺のスカートの制服に赤のネクタイ。黒のセーターを着て、剣入れのソードホルダーを持った赤い髪のポニーテールの女の子。この子はわたしの幼なじみの神夜那凪ちゃん。小学校時代からの大の仲良しさん! 高校は違っちゃったけど、途中まで電車が一緒だから一緒に登校している。
ちなみにわたしはセーラー服。色は黒。
「ねぇ紫苑。身長伸びた?」
「えっ? また? 伸びてないよ」
那凪ちゃんはいつものようにそんな事を言ってくる。
「ホントに? 私いやだよ。それ以上伸びないでよ?」
わたしは那凪ちゃんより少し身長が高い。那凪ちゃんはそれを気にしてるのか毎日言ってくる。
「もう、那凪ちゃんは身長低い事気にし過ぎじゃない? 大丈夫だって。わたし達はまだ高校生だし伸びるって」
「う〜ん……でも、私のお母さんは高校生の時に身長低くて中学生とか、しまいには小学生に間違われてたって言うし……結局伸びてないし今でも低いままだしさ……」
「う〜ん……」
確かに。那凪ちゃんのお母さんは今でもあまり身長が高くない。それでも那凪ちゃんのお母さんは『これでも高校の時より伸びたんだよ!』って言うけど……わたしからみたらそれでも低いほう。
「だ、大丈夫じゃない……かな?」
「毎回聞くけど、その確信はなんなの?」
「えっと……」
「どうせ、高校生だからって言うんでしょ」
「あ、あはは……」
それしか心当たりがないんだよねぇ……わたし達はまだ高校生だし……育ち盛りだし。身長は伸びそうなものだけどなぁ?
「はぁ……身長。伸びないかなぁ……少なくともお母さんよりは……」
那凪ちゃんはいつものように『お母さんより身長の伸びないかなぁ』の言葉で締める。でも、カワイイんだしそんなに気にする事ないと思うけどなぁ……わたしは。それも特徴だと思うし。
◆
「ねぇ、紫苑。今度の日曜日に騎士道の練習に付き合ってよ。『紫電』を練習したいからさ」
電車が来る間。那凪ちゃんはわたしにそう言ってきた。
那凪ちゃんは騎士道部の期待の新人。入部してそうそう副騎士長を叩きのめしたっていう事を那凪ちゃんに聞いて驚いている。ううん今でも驚いているかも。わたし。
「練習に? うんいいけど……わたしでいいの?」
「当たり前じゃない。武士道の全国大会で日本一になった紫苑なら言うことなしよ」
「でも、それって中学の時の話だよ? 那凪ちゃんの役に立つかなぁ? わたしは武士道だし。那凪ちゃんは騎士道だし。練習になるかなぁ?」
中学の時の話だし……それと、もう武士道はやってないんだよね……
「それでも、よ」
「わかった。でも『納刀』オンリーだからあまり期待しないでね。で、『しでん』ってなに?」
「うん、この前お母さんから教わった高速の突き技。確か『雷光一閃・紫電』が名称だったかな?」
那凪ちゃんのお母さんは立派な騎士さん。那凪ちゃんによると高校時代にすごく強い騎士さんを倒したらしい。そしてお父さんは今でもすごく強い武士道の侍さんだ。わたしも一度だけ、稽古してもらったことがある。
「ふぅ〜ん『雷光一閃・紫電』かぁ……なんか騎士道って言うより武士道寄りの名前だね」
技名だけ聞くと那凪ちゃんのお母さんって言うよりは、那凪ちゃんのお父さん寄りなんだけどなぁ
「それはわたしも思った。でもこの技ってお父さんから教わったと思ったら、お母さんの先輩から教わったんだって」
「へぇ〜じゃあその『先輩』が武士道のひとなのかな?」「さぁね。そのへんはお母さんに聞かないとわからないかな」
「そっか」
「まもなくぅ〜京連津田沼行きのぉ〜電車がまいりま〜す。白線の内側にぃ〜下がってぇ〜お待ちぃくださいぃ〜」
駅員さんの独特な構内アナウンスが流れる。この駅員さんは前橋駅では結構有名なひと。
特に構内アナウンスが面白く、最近ではこのアナウンス動画がネットに流れていて、このアナウンスを聞くために前橋駅に来るひともいるって噂だ。
「まだ部活の勧誘って続いてるの?」
「うん、毎日毎日感心するくらいしつこいんだよね」
そうなのだ。わたしは入学してからと言うもの『ある先輩』に勧誘され続けているのだ。
「それだけ紫苑の武士道の実力を買ってるんでしょ?」
「う〜ん、そうなのかなぁ? こっちとしては結構困ってるんだけどなぁ……武士道部なんてなかったはずなんだけどなぁ……」
入学式からの二ヶ月経とうとしてるけど毎日のように登校時に勧誘しにくる先輩。『武士道部に入部して!』と毎日必ずくる。でもそれが登校の時とお昼休みだけってのが救い。これが休み時間や放課後の時に来ようものなら精神的に疲れて疲れてしようがない。
「きっぱりと断ればいいじゃない」
「そうなんだけどさぁ」
電車減速してプラットホームに到着。そしてドアが開く。
「毎日言ってるんだよ。入部はしません! って、きっぱりと」
「なら、いっそ入部しゃえば」
そんな事を言い、わたしと那凪ちゃんは電車に乗り込む。
「いやだよ。那凪ちゃんも知ってるでしょ? わたしはもう武士道はもう辞めたって」
「正直、私はその実力がもったないと思うけどな。私がその先輩だったら同じ事したかも。それにもういいんじゃない。武士道をやっても? あの試合からもう三年でしょ? ならさ」
「……ううん、やっぱりダメ。だってわたしのせいで『あのひと』は武士道を断たれたんだよ? そんなわたしがのうのうと武士道を続けられないよ」
そうだよ、続けられない。続けられないよ……
「ねぇなら、どうして紫苑はまだ武士道の練習をしてるの? 今度久しぶりにお父さんと稽古するんでしょ?」
「えっ? それは……えっと稽古は『納刀』だけだよ」
「はぁ……『納刀』だろうが『抜刀』だろうがその『ふたつのスタイル』があんたの武士道でしょ? どちらがひとつ欠けてもそれは紫苑の武士道じゃないよ」
「……」
「私はその先輩と同じよ。紫苑はまだ武士道に未練がある。完全に武士道を諦めてないんだ。それなら私は無理矢理でも武士道に引き戻す ……それにこのまま『勝ち逃げ』なんて許さない。『抜刀』状態の紫苑に勝って初めて私が勝ったって事なんだから」
「でも……」
「でも。じゃないよ。もし本当に辞めるんなら納刀の練習も辞めて。それができないなら武士道に戻ってきてよ」
「でも……」
『まもなく、新妻沼に到着いたします。JP線乗り換えはこちらの駅からになります』
流れる車内アナウンスとわたしと那凪ちゃんの間に漂う静寂。
そしてわたしの降りる駅である新妻沼にあっと言う間に到着した。
「……ラチが開かないね」
その言葉でドアが開く。ラチが開かなくてドアが開いたか……
「じゃあ、また明日ね」
那凪ちゃんから逃げるように軽く挨拶を交わす。那凪ちゃんはこのまま終点の京連妻沼まで乗っていく。
「日曜日。この前待ち合わせた公園で待ってるから」
「うん。ごめんね……」
モヤモヤした気持ちもままで、わたしは電車から降りた。
第一話 完
最後まで読んで頂きありがとうございます。間宮冬弥です。
代弁者も言っていましたが、あけましておめでとうございます。
挨拶が遅れてしまってますが、今年もよろしくお願いします。
今回はいつもより短いですが、更新頻度はたぶんいつも通りだと思います。
でも少し早くできるかな? まぁ気長に待っていただけるとありがたいです。
では、短いですが、これで失礼します