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崖っぷちの魔法使い  作者: 地雷ブルー
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熟睡

息をとめ、意識を研ぎ澄ます。


外からの情報を遮断し内なる部分へと集中すると、ぼんやりとトンネルのようなものを知覚する。


そのトンネルの輪郭を把握し、慎重に整え少しずつ拡げていく。


元の倍程度の大きさまで拡げた時、突然トンネルの奥から強烈に引っ張られるのを感じた。


「(うっ、ぐっ……)」


ともすればそのまま引きずり込まれそうになるのをこらえ、大急ぎでトンネルの輪郭を整え固定する。


それが終わるといまだ奥へ奥へと引きずり込もうとする力を振り切り、意識を浮上させた。


「ぷはっ。ふぅ、危なかった……」


閉じていた目を開き、見慣れた部屋を映し出す。


自分の部屋だということを確認して、ラグは安堵のため息をもらした。


供給路(パイプ)の拡張なんて初めてやったけど、難しいなぁ。危うく意識が持ってかれるところだったよ。まあでも、これであとは待つだけだ」


そういって目の前で寝ている(?)スルトを見やる。


今、ラグはスルトに魔力を与える供給路の拡張を行っていた。


スケルトンは魔力を糧にして活動する。


ゆえに、最低限の活動に必要な魔力を供給するだけの経路は召喚した際に構築されている。


だが、先日調べた時にわかったように、生前の意思を残したスケルトンは魔力を蓄えることにより自我を持ち、存在昇華を起こす可能性がある。


ラグではその魔力を一度に与えることは難しいので、普段から与える魔力を増やし、その余剰分を少しずつ蓄えさせることにしたのだ。


そのため、ラグは自分の中に潜り供給路を拡げてきた。


どのくらいかかるかわからないが、これでいずれはスルトは自我を持つことができるだろう。


「さ、寝よう。疲れちゃったよ……」


本来なら寝る前にやるべき課題などが溜まっているのだが、供給路の拡張を行っていたおかげで魔力と集中力を使ってしまったのでとてもやる気にはなれなかった。


ラグはそのままベッドに倒れこむと、深い眠りに落ちていった。










「…………、………………!」


誰かが呼ぶ声に目を覚ます。


「………………、…………………!」


どうやらラグの部屋のドアを叩いて大声で叫んでいるようだ。


もぞもぞと起き出そうとしたところで、


「いい加減にしろ糞ラグ!さっさと起きろカス!」


ドアを蹴破られた。


「えええ!?なんだ!?」


びっくりして飛び起きると、目の前にゲイルが立っていた。


鬼のような形相で怒り狂っているのがよくわかる。


「ゲ、ゲイル……?」


おそるおそる声をかけると無言で顔を蹴られた。


「いっ、あいっ、いたいよいたっ、なにするんだよっ」


「そっちこそなにしてんだこの野郎。今何時だと思ってやがる」


「何時って…………10時!?」


時計を見て驚愕する。


ちなみに今日は野外実習で、9時半には集合のはずだった。


大遅刻である。


「なんで俺がテメエを起こしにこなきゃいけねえんだよふざけんな。2秒で支度して降りてこいや」


ぶつくさ言いながら部屋の前で待っていたデュランと出ていくゲイル。


「デュランが扉を破ったのか……ちゃんと修理してくれるのかな。いや今はそれどころじゃない急がないと!」


ラグはあれだけの騒ぎのなか、いまだにソファーで寝こけているスルトを叩き起こし、急いで身支度を整えると部屋を飛び出した。

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