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崖っぷちの魔法使い  作者: 地雷ブルー
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落ち着く

契約の成立した翌日。


授業を聞き流しながらラグは思い悩んでいた。


(スルトはスケルトン。これは変えようのない事実だ。それを受け入れた上でどうにかする術を考えないと)


召喚に失敗してよりこちら、ずっと落ち込んでいたがそろそろ切り替えねばならない。


ラグは家の再興をなさねばならないのだから。


(そうだな…………まずは情報の整理だ。何をするにしても自分の状況を明確に把握しなければ動きようがない。これ以上下手は打てないんだから)


そうしてラグは意識を切り替え、自分のおかれた状況を今一度見つめ直す。


ラグはハルメア皇国の貴族、デオルフ家の嫡男だ。


デオルフ家は魔物の召喚と使役の才で貴族として隆盛していたが、時代と共に才能は枯渇し、今では貴族として最底辺の位にまで落ち込んでいる。


そんな中、ラグは最盛期のデオルフ家もかくやというほどの才を持って生まれた。


それを見た両親は、ラグに家の再興を託した。


親類や親交のあった貴族のもとをかけずりまわり、ラグをレーン魔法学園に入学させてくれた。


レーン魔法学園はハルメア皇国にある無数の魔法学校の中でも名門中の名門として名を馳せる学校である。


ライシナ王国のルーダル魔法学院、ヤハナ神国のミニル神聖学校と並び、三大魔法学校として有名だ。


その評判からわかる通り、入学するのは非常に難しい。


本人の非凡な才能はもちろんのこと、ある程度の実績がなければ入学試験すら受けられない。


実績とは本人の功績であったり、家柄であったりだ。


貴族の生まれであればそれだけで一定の評価を得られる。


貴族であるということは国に貢献できる才能を持った血筋であるということなので当然と言えば当然だが、おかげで一般の人々にはとても門戸が狭くなっている。


ラグは貴族だが、それでも両親が方々で頑張ってくれたおかげでようやく入学できたのだ。



そんな敷居の高い学園だが、それに見合うだけの価値はある。


そこで教える教師は超一流の魔法使いたちであり、国の中枢で現役で活躍している者もいる。


施設も充実しており、魔法の学習に関する施設は当然として、国1番といわれる蔵書量を誇る図書館、覚えた魔法を試せる訓練所、武道大会や大規模な演習を行える闘技場、あらゆる器具がそろった最高峰の研究室、さらには魔物の住む森をそのまま敷地内に取り込んでしまっているなど、魔法を学ぶ上で想定できることは全てこの学園だけで行うことができる。


卒業すればエリートコースを約束された学園は、入っただけで勝ち組だ。



そんなあらゆるものが揃った学園で、最大限の支援を受け、家からも最高の素材を貰い、のぞんだのが先日の召喚である。


最低でも上位の魔物は堅いと思っていた召喚で出てきたのが最弱の魔物スケルトンだった。


スケルトンがどのくらい弱いかと言えば、ある程度の武術の心得さえあれば魔法が使えなくても倒せてしまうほどだ。


これはもう奇跡といってもいい。(むろん悪い意味でだが)


これからラグは、この最高の学園で最弱の魔物と共に力を蓄え、最終的には家を再興せねばならない。


家を再興するにはやはり軍役が1番だ。


というより、召喚士が活躍するとしたらまず軍以外にはありえない。


魔物はなによりもその戦闘力を重宝されるからだ。


ラグは現在16歳。卒業まではあと2年。


2年後には学園の生徒として受けられる恩恵はなくなり、自分の力のみで立たなければならない。


それも国の軍で通用するだけの力を身につけた上で、だ。


(改めて思うけど、前途多難どころか完全に詰んでるじゃないか……)


最高の場所で最悪の状況。


だが、落ち込んでばかりもいられない。


既に賽は投げられたのだから。


今までは座学ばかりだったが、徐々に実践的な授業も始まってきた。


あともう少しすれば学園の外の軍に仮入隊し、実地訓練に出ることになる。


(とにかく今は戦力が足らなすぎる。スルトもそうだけど、僕の力だって頼りないんだから)


召喚士の常として、召喚士本人の戦闘力は低い。


ラグは幼い頃より武芸に励んでおり、召喚士としては高めの身体能力と身体強化に適切な魔法適性により、それなりのレベルの戦闘能力を身に付けてはいる。


だがしかし、やはり戦闘を主とする本職の魔法使いには遠く及ばない。


今はまだ武術によってカバーできているが、やがてそれも厳しくなるであろうことは明白だ。


となれば、自分が持つ武器を最大限に活かすしか道はなかろう。


武器とはもちろん召喚士としての力、特に魔物を従られる数に関係してくる図抜けた許容量(キャパシティ)による魔物の質と数。


その許容量は国を脅かすことのできる魔物さえ従えることができる。


これがこの先、力をつける上で最も重要となる。


(まぁ、僕とスルトだけじゃなにもできないけどね)


魔物は自分を倒した者か、召喚できるだけの力を持ったにしか従わない。


他人に助けてもらって従魔にすることはできないのだ。


(とりあえず、僕とスルトだけでなんとか倒せる魔物を従魔にして、少しずつ戦力を増強していくしかないか)


とはいえラグの許容量も無限ではない。


どんな魔物を従魔にするかは慎重に決めた方がいいだろう。


許容量を空けるだけならば従魔契約を解除していけばいいが、ラグはそれをしたくなかった。


一度契約を結んだら破棄はしない。


それが契約を結ぶ魔物に対する誠意であり、ラグの召喚士としての誇りであった。


(僕とスルトでどこまで戦えるか。まずはそれからだ)


そのために、スケルトンという魔物について知らねばなるまい。


スケルトンは最弱の魔物。

従魔にする予定など全くなかったラグは、従魔としてのスケルトンの知識はあまりない。


まずはそこから調べなければ。


授業の終了を告げるチャイムがなり響くと同時、ラグは立ち上がった。

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