失敗
「「「あははははははは!!」」」
教室に笑い声が響き渡る。
ラグはその笑い声を聞きさらに絶望を深くしていた。
ここは魔法の学び舎、レール魔法学園。
通称『学園』と呼ばれる場所が、ラグの通う学校だ。
ラグはその召喚科に属している。
召喚科と言うのはその名の通り魔物などの召喚や、その使役に関する魔法を学ぶ科である。
ラグの生まれたデオルフ家は代々魔物の使役に関しての才に恵まれた家で、過去は数多の強力な魔物を従魔として使役し、権勢を振るった貴族の一族である。
だが、時の流れとともにその才はだんだんと枯渇していき、強力な魔物を使役するのが難しくなっていった。
魔物の使役により権力を保っていた家が魔物を使役できなくなったとあれば、その家がどうなるかは火を見るよりも明らかである。
ラグが生まれた時にはすでに、デオルフ家はその日の暮らしにも困るほどに困窮していた。
だが、神はデオルフ家を見放さなかった。
魔物の使役に際して必要な主な才能には、使役契約及びその後言うことを聞かせることなどに必要な支配力、使役する魔物の強さや数を決定する許容量などがある。
跡継ぎとして生まれたラグの魔物の使役に関する才能は全盛期の頃のデオルフ家の者たちにも劣らないほどのもので、特に許容量に関しては史上稀に見るほどの高さであった。
それをみたラグの両親は、デオルフ家の再興をラグに託そうと考えた。
今までどんなに暮らしに困ろうとも決して手放さなかった家宝の道具や触媒を全て用いてラグに最高の従魔を与えてあげようとしたのだ。
そして用いることのできるありとあらゆるものをつぎ込んで召喚したのは、最弱の魔物スケルトン。
これで絶望するなと言う方が無理な話だ。
「あは、はは、あははは!おい、デオルフ、スケルトンだぜスケルトン!家宝のスゲー触媒とか使ったんじゃないのかよ!あはははは!」
「あー腹痛てぇ、自信満々に啖呵きるから何が出るかと思ったらスケルトンかよ!こりゃ1本とられたぜ!」
学友たちの心ない言葉にもなにも言い返すことができない。
両親の期待を一身に受けて召喚にのぞんだラグの心は完膚なきまでにへし折られてしまっていたのだ。
「あなたたち、いい加減にしなさい!デオルフ君だってショックなのですから!」
さすがに見かねた先生が生徒たちを諌める。
ラグはただ床に視線を落としていた。