召喚
暗闇の中に一筋の光が灯る。
光は空間を縦横無尽に駆け巡り、その強さを増していく。
やがてその光は一定の法則によって動きだし、複雑な紋様を描いていく。
(よし……いいぞ……)
光は1つの陣として完成し、さらに分裂を始める。
1つから2つ、2つから4つ、4つから8つ……。
どんどんと増殖する光の陣はそれぞれが円を描くように廻り始め、やがて中の空間が見えなくなるほどの密度にまでなる。
(よし……よし……!)
陣の回転がは止まらず、その中心からひりつくような圧力が放たれ始める。
そして光の陣の回転が最高潮に達したとき、目の眩むような閃光とともに、陣が内側から吹き飛んだ。
(よし!成功だ!)
閃光が徐々におさまり、視界が晴れた空間に、今までいなかったものが出現していた。
「え……」
しかし、その姿を見て召喚者の少年――――ラグは言葉を失っていた。
「そ、そんな……まさか……」
ラグがガックリと膝をつく。
視線は召喚したものに注がれているが、その目は絶望に染まっていた。
「なんで……なんで、こんな……」
少年が召喚したもの。
それは身動ぎひとつせず屹立していた。
「なにもかも……なにもかもつぎ込んだのに……」
真っ白な身体は傷ひとつなく。
それを見つめながらラグはただただ嘆く。
「スケルトン……だなんて……」
スケルトン。
言わずと知れた、骨のみがその体を構成する魔物の名。
そして、死霊系における最弱の魔物の名である。