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第31話 山田と下着泥棒騒動

6月に入り、蒸し暑さを感じるようになった。

前髪が時々べたつくのが非常に鬱陶しい。

だが、夏が近づく、女の子が薄着になる。


そう、衣替えの季節だ。これまでブレザーを着ていた女の子たちが半袖ブラウスに着替えるさまは、実に良い。

クーラーの効いた教室ではカーディガンを重ね着する子も多い。ブラウス&カーディガンのコンボは女性の清楚さを高める効果があると俺は思っている。

そして、何より登校したばかりだとしっとりと汗ばむブラウスから、うっすらとブラの紐が見えるときすらあるのだ。


野郎たちのひょっほーの時を迎えるのだ。


ひと月もしないうちに体育の授業でもプール開きがある。

もちろん、男子と女子は別々だが、濡れた髪の女の子…

山田はありだと思います。



そんなある日のこと、事件が起こった。


女子水泳部において、盗難事件が起こったのだ。地球に住まう、すべての女性の敵、許し難い卑劣な凶悪犯、そう、下着泥棒である。


犯人が誰なのかはわからないが、部室において下着を物色している犯人を目撃した者がいた。


目撃した水泳部の女の子は、相手の顔は見ていない、いや見れなかったらしい。


そう、犯人はつけていたのだ、覆面を。


何かぶつぶつ言いながら、物色していた。


覆面スタイルで何かぶつぶつと言っている、そう、まごうことなき変態だ。


女の子が叫び声をあげると、覆面スタイルの男は女の子を突き飛ばし走って逃げた。


女の子は少しひっくり返ったものの怪我はなかった。本当に不幸中の幸いだ。他に人がいないせいで、場合によっては酷いことをされる可能性すらあった。


そう、これが犯人の姿だ、何かぶつぶつ言いながら覆面をつけた変態で女好き……


これは許せん。女の敵は男の敵でもある。俺はこの学園を機関の手から守り、平和へと導く山田だ。この盗難事件、俺が解決して見せよう!ぬはははは!!


名声が地に墜ちた俺のイメージアップにつながるかもしれない。中二病でちょっとおかしいけど、それなりに良い奴ってくらいの評価を目指してもいいよね?


すでに部の創設からひと月弱が経過し、これ以上新入部員が来そうにないみたいだし。他の部員も乗り気だ。


麻耶は事件に反応する。

事件、事件よと嬉しそうにはしゃぐ姿はあの理不尽女らしからぬ可愛さをしている。


細田さんも智子も水泳の授業が始まる前に、そういった下着泥棒は退治しておきたいらしい。


大輔は大輔で、いつその不届きなやつが子どもにまで手を伸ばすかもしれんと憤慨し、赤崎は赤崎で、学年主席としてこの盗難事件は放ってはおけないと言っている。よし、皆マイノリティ研究会の力を合わせてこの事件を解決に導くぞ!



そして俺は職員室へ呼び出された。あれ~?




「別に君を犯人だなんて決めてかかってるわけではありませんよ。誤解して騒がないでくださいね」


そう言って、学年主任の渡辺先生は俺にお茶を勧める。

眼鏡をかけた小柄な男性だ、日本史を教えている。歴史についての造詣は深く、日本だけではなく、その当時の世界の状況なども交えて授業を行う先生だ。

授業は上手いとは思うが、なんとなく陰湿そうで俺は好きにはなれない。


「渡辺先生、ちょっと待ってやってくださいよ。こいつ、確かに言動はちょっと変わっていますが、そんな下着泥棒をしでかすほど、性根の腐ったやつじゃありませんよ」


「宮下先生、私は別に山田君を犯人だなんて言ってませんよ。でも、まあ彼の場合……色々とありますから。とりあえず話だけでも聞いておきたいって思っただけです」


そう、どうやら俺は第一容疑者らしい。


ぶつぶつしゃべる。俺もよくぶつぶつと中二的な発言をしていることがある。

覆面を被る。よく俺は自分のことを仮面ペルソナを被りし者だと言っている。

変態で女好き。入部試験で女装趣味、昆虫食、ロリコン、ハーレム気取りの女好きと言う悪い噂etc


……これ、確かに疑われてもおかしくない。


「一昨日、火曜日の放課後の君の行動を教えてもらえるかな?」


「それは遠くの昔の話だ。あの日、我は仲間と共に戦いの合間の平穏を部室で享受していた」


「渡辺先生、山田のやつ、放課後は部員と部室でだらけていたと言っています」


ゲンさんは俺の言葉を通訳してくれる。渡辺先生のコメカミには青筋が立っている。

だって、仕方ないだろ。左眼バロールが疑われてることに怒って出てきちゃったみたいなんだから。


「放課後、部室で部員と何をしていましたか?」


「ふむ、なんだったか……そう、あの日俺はスタタヌスと共に楽園に住むと言われる女神たちの話をしていた……」


「渡辺先生、山田は部員の長崎大輔と学園の女の子の話をしていたと言っています」


ゲンさん、大輔の二つ名を知っていたのか。さすがは顧問だぜ。


「女神たちの絶対神より授けられし、その衣の麗しさよ……まさにそれこそが神秘!そして、その衣を脱ぐさまも実に素晴らしい」


「渡辺先生、山田は長崎とうちの女子の制服の良さについて話をしたようです。ブレザーから衣替えでブラウス姿になったのもまた非常に魅力的だと言っています」


すげー、さすがはゲンさん。見事なまでの翻訳機能だ。これは一山田に一台欲しいところだ。

ゲンさんがいれば、世界中どこへ行っても安心だな。


「私は真面目な話をしているんだ!山田、君はふざけているのか!!」


渡辺先生、そんなに怒んないでよ。毛髪によくないらしいぞ。怒りっぽい人は禿やすいってよく言うし。

そろそろ先生の生え際、僕は心配だな~


「すいません、渡辺先生。何度注意しても治らんのです。これはとりあえず、こいつの個性ってことで話を進めてください」


そう言って、ゲンさんが謝る。

俺に対してもさすがに怒ってるみたいだ。

拳が震えている。職員室出たら、これは間違いなく拳骨だ。


「おほん、失礼。聞いていたが、いや聞いていた以上に酷くてついな」


いや本当にすいませんね、失礼なのは俺の方だけど。聞いてた以上にってことはすでに職員室でも俺は噂になってるのか。麻耶の言うとおり、全校制覇の時も近そうだ。


「ところで、本当に君は部室でおしゃべりしていたのかな?単に部員が君をかばっているということ、口裏を合わせているという可能性もある。いや、別に君が犯人だなんて言ってるわけじゃない。私は可能性について言ってるんだ。部員以外、第三者で証明できるような人はいないかな?」


ああ、この先生相当俺のことを疑ってるな。犯人だと決めつけてないって口では言いながらも、俺をほぼ犯人扱いか。つれーわ。信用ないの、マジでつれーわ。


「漆黒の闇を纏い地に墜ちし俺を人風情では見ることすらかなわん」


「ええっと、これは……ああ、山田のやつ、自分はボッチだから部員以外に証明できるものはいないって言っています」


ゲンさん、そこらへんはもう少しオブラートに包みこんでください。

パイ生地で料理を包み込むようにもっと優しく。


「君は!……とりあえず今日はもう帰ってよろしい。ただ、もしも君が犯人であった場合、私がかばうことなど一切ないと思ってもらおう!!君のような生徒はこの学園にふさわしくない!!」


あ~、渡辺先生、以前の赤崎のやつと同じこと言ってるな。

実は先生も赤崎と同じく、エロいタイプだったりして。

まあ、渡辺先生がここまで怒るのも仕方ないんだけどなあ。

最近、左眼バロールとは上手く付き合えていると思ったんだが。


今のこいつなら、俺の魔眼の力を普段よりも発揮できるかもしれない。

そんなことを思った。


あっ、ゲンさん?職員室から出た後に5発も拳骨を頂戴した。

あまりの音に職員室から、他の先生が飛び出してきたほどだ。


おっ、渡辺先生があわててゲンさんを羽交い絞めしだしたぞ。

あれ、この先生って実はいい人なんじゃ?


ゲンさんの拳骨でちょっと意識が飛びそうになる中、そんなことをふと思った。

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