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第1話 山田のクラス分けと入学式

まず、俺は校門をくぐり抜け、校舎の入り口でクラス分けを確認する。


時ノ森学園は一学年320人でAからHまでの8クラスあり、1クラス40人の構成だ。


このクラス分けは成績が左右される。1年生においては入学試験の成績上位者からAクラスとなり、その後B、C……と続いていく。


単純な成績だけではなく、部活などで好成績を残した場合や表彰を受けた場合などもまたクラス分けに評価されるという。


これは生徒同士で競わせ、お互いに高めあうという時ノ森学園の特色の一つだ。


そしてこのクラス分けには中等部から時ノ森学園に通う内部生も含まれている。


中等部から通う生徒であっても同じように入学試験を受けさせられるのだ。


点数が低くても高等部に進学できるが、クラス分けでは当然成績が反映されるので最下位クラスであるHには外部生より内部生の方が多いといったケースもよくあるらしい。


で、俺のクラスは……あった、あった。


Eクラスだ。あれほど勉強したのに平均以下だったのか……やっぱり、この学園のレベルは高いなあ。


最上位であるAクラスの連中は、俺なんかとは頭の出来が違うんだろうね。


教室に入り自分の席を確認した後、担任が来るまで座席に座って待つ。


出席番号まではさすがに成績順じゃないようだ。


名門校のせいか、椅子の座り心地も良く、机もどことなく高級感が漂ってる気がする。やっぱり公立中学とは一味も二味も違う。


軽く周囲を見渡すと、何人かの男女が集まり会話している。


「あっちゃー、お互いEクラスか~」

「まあ、Hクラスとかに比べれば、マシでしょ」

「さすがにHはないよね」

「2年に上がる際に上のクラスに上がれればいいよ。一番大事なのは3年に何クラスだったかだし」


内部生っぽい。名門私立に中学から在籍しているせいか、お坊ちゃん、お嬢さん臭が感じられる。


少なくともうちの中学の時にはほとんどいなかったタイプだ。


まあ良いとこのお坊ちゃん、お嬢さんなんかは小学生から名門私立にいったり、遅くとも中学時には中学試験するだろうからね。


彼らも俺と同じ上位クラスでもないEクラスの生徒ではあるが、地獄の猛勉強をした俺と同等の成績を受験勉強というより普段の中学の勉強で取ったのだろうから、やはり優秀なんだと思う。


少し妬ましい。まあ、この時ノ森の教師陣が優秀ということもあるだろうけど。


他にも女子も何人かで集まって話をしている。会話をしているが、どことなくお互いの距離を図りかねてるところを見ると彼女たちは外部生と言ったところだろう。


俺も誰かと会話して、ボッチ脱出のきっかけを掴みたいところだけど今は不味い。


ちょっと新しい環境になって、自分が緊張しているように感じる。


今の状態で会話をしたら、魔眼が暴走するかもしれない。


それこそ、入学式でボッチ決定だ。


少しクラスに馴染むまでなるべく自粛した方がいい。


だから担任が来るまでの間、目を瞑ることにした。


視線を感じる。


「ボソボソ……ねえ、あの男の子って……」

「だよね……あの時の……」

「間違いないよ、私覚えてるもん。なんかちょっと怖かったし」


ひそひそ話をする女子の声も……


あの~ひょっとして、俺が合格発表の日に口走ってたのを覚えてる子がいらっしゃる?


「俺は、俺はレールに乗ったぞ~!!」

「どうやら俺に神の力が宿ったようだな……」

「俺はこの学園に導かれたのだ……」

を見られてた?


終わった、初日目にして終わった。この学園でもボッチ街道まっしぐらになりそうだ。


ダメだ、泣くな、まだ泣くな……ここで泣き出したらさらに変なやつだ。


「ちょっと、そうやってこそこそ話するのやめときなよ。合格して嬉しくなって、はしゃいだったんじゃない?男の子ってそういうこともあると思うよ」


カッ!!瞑っていた目を見開く。まさか救いの女神?


「ひっ!?」

「きゃっ、急に目を開いた」

「やっぱ、ちょっと危なそう」


リッ、リカバリー。ここで選択を間違えるな。


にこやかに笑って、あいさつをするんだ。まだまだ取り返しのつく範囲だぞ。


「おはよう、すまない。驚かしてしまってたようだな。俺のこの魔眼がな」


フッと微笑み、笑顔で挨拶をする俺……


ダメだ、リカバリーに失敗した。


教室で巻き起こる俺に対する絶対寒波ブリザード


厳しい……世間クラスの目が冷たい。


「あははは……ひょっとして君って小説でも書くのが好きな人かな。あっ、おはよう、私、細田麻衣。一年間よろしくね」


ナイスフォローをしてくれる細田さん……


少々顔を引きつかせながらも、あいさつを返してくれた。


ちょっとボーイッシュな、髪を短く整えた女の子だ。


やはりあなたが救いの女神か。


「は、はじめまして、俺は山田陽一。急に変なこと言ってごめんな。細田さんの言うようにちょっと小説とかのネタを考えてたんだよ。現代風異能バトルなんだけど」


細田さん以外からは多少冷たい視線が送られたものの、ひとまずは九死に一生を得たと言ったところだろうか。



ガララッ


「おう、集まってるな。これから入学式始まるからそろそろ移動する準備しとけ。問題ないとは思うがちゃんと財布なんかの貴重品は自分で管理しとけよ」


少し無精ひげを生やしたスーツ姿の男性が教室に姿を現した。


「俺が一年間君らの担任を務める、宮下厳一だ。まあ、自己紹介等は入学式後にちゃんとやるからとりあえず移動だ」


そのまま宮下先生に引率され、俺たちは大ホールに移動した。


この大ホールは時ノ森学園施設のちょっとした目玉だ。


始業式、終業式、卒業式なんかで生徒が一堂に集まるときに利用され、中高合わせると1500人以上の生徒、そして教師や参加する保護者を入れると2000人以上が十分着席できるだけの座席があり、天井も高くゆったりとした空間を演出してくれる。


まるで巨大な映画館のような大ホールの椅子に腰を掛け、入学式が始まるのを待っていると急にホール内が薄暗くなり、壇上が照らされた。


ちょっと遠目で顔をはっきりとは確認しにくいが、温厚そうな老人がゆっくりと壇上に近づく。


「高等部から入ってきた諸君、初めまして。中等部から上がってきた諸君、お久しぶりです。私はこの学園の理事長を務める藤堂竜蔵です」


あの老人がこの学園の理事長らしい、願書の申し込みをするために学園のホームページを覗いた時に彼の顔を見た記憶がある。


少し背中が丸まっているようだけど、上背がある。目じりに深い皺があり、白髪を綺麗にカットし澄んだ目をした温厚そうな老人だった。


「今日この日より、時ノ森の高等部生になる諸君にはお互いに競い、高めあっていってもらいたい。ただ、注意してもらいたいのは競い合うと言っても、相手に対して敵意を持ったり、蔑視したりするのではない。競い合う相手を理解、尊敬する。それこそがお互いを高めあう上で重要な要素なのです。なかなか人というものは一部の人を除いて、一人で自分を高めるというのが困難です。競い合い、高めあう仲間がいるからこそ、人は成長できる私はそう考えています」


理事長先生の話が続いていく。


「人というのは不思議なほどに多種多様。君たちの中には、ちょっと他の人とは違う性格や趣味を持った人もいるかもしれません。それもまた一つの個性。色眼鏡で他人を見るのではなく、相手の本質を見極め、一人一人を尊重し合ってください」


さすがは教育者と知られた理事長だ。良いことを言う。みんな俺の個性(中二属性)を受け入れてください。


「かくいう私にも人と違った趣味がありましてね。ええ、最近はメイド喫茶とやらに嵌っておりまして」


えっ?いきなり入学式で性癖暴露っすか!?


メイドのスカートの長さの話に始まり、まだバイトし始めのメイドさんが恥ずかしげに美味しくなーれーと言いながらクリームをかき混ぜたり、ケチャップでオムライスにハートマークを作る扇情的な姿。

初めてメイドさんとチェキを撮った時の喜び、萌え萌えジャンケンetc


理事長先生のほとばしる熱いパッションが語られた。


「おかげで時折妻から折檻を受ける始末ですよ」


お笑いながら、そう語る理事長先生は黒髪の小柄な老婦人に取り押さえられた。


色々と台無しだ。


取り押さえるのならもっとさっさとしてよ……

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