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プロローグ 山田 入学式を迎える

今日、俺こと山田陽一は高校デビューを迎える。


「やっと、この日が来たんだな。そして、これから俺の高校生活が始まるんだ」


思い返せばこれまでの学生生活は最低だった。


幼稚園の時、憧れのミドリ先生の俺への評価は「山田君はごっこ遊びが好きなとても活発で周囲にも気を配れる良い子です」という好意的なものだった。


小学校低学年の時の担任の先生の評価も似たようなものだったと思う。


おかしくなり始めたのは小学3年生くらいからだ。小学3年生と言えば、そろそろ早熟な子が色気づきだすお年頃だ。


少しずつみんな大人びてくる。ア〇パンマンごっこやか〇はめ波なんかをするような子供も少なくなるだろう……


だが、俺はそうならなかった、そうなれなかった。


理由は簡単だ、暴走するのだ……俺の魔眼が……俺の意思とは裏腹に俺に言葉を発せさせる、ポーズを決めさせるのだ。


いや違います、冗談とかじゃないんです。


それは単なる中二病だって?


自分の意思とは関係なく、暴走しっぱなしのこの状況は単なる中二病扱いするのはやめてもらいたい。俺は単なる中二病で済んでいる連中でさえ羨ましいんだから。


単なる中二病の人は、自分でコントロールできる。その自分の中二病を格好のいいものだと思ってるから、中二的な言動を行っているんでしょ。


いやひょっとすると中二病をこじらせてる間はそのことを格好のいいものだと意識してないかもしれない、それに自分をコントロールできてないんだろうが。


でも少なくとも将来的にはコントロールできる、だからこそ大人になったら黒歴史になる。


本当に羨ましい、将来中二病を黒歴史にできそうなやつは。


自分の意思とは関わらずに勝手に暴走する場合とは違う。いつの日か黒歴史になるとしても中二病を卒業できる日が来るんだ。


黒歴史にしたくてもできない、未来永劫現在進行形で暴走する中二病と付き合わなければならない俺は……


まだ不幸中の幸いはこの魔眼の暴走はいつもいつも起きるわけじゃないってことだ。


普段から暴走された日には単なる中二病として時折白い目で見られるどころか、間違いなく病院送りになるだろう。


でもね、中二病をやってられるのは本人がそれの痛さに気づいてないからやれるわけで…


中二病を自覚してる人が、中二病を演じられるかな?


いや~世界は広いからね。ひょっとしたら、そういう人もいるかもしれない。


でも俺には無理。辛い、辛すぎる。そして自分のやらかしたことを思い出すたびに恥ずかしさでウガァ~~殺せ!俺を殺せ!って悶えるはめになる。


まあそういうわけで、これまでの学生生活は最悪だった。


「今日はやけに疼くな、俺の魔眼がよ」と格好良いポーズを決めながら左目を抑えたり……


「くっ、闇の連中が現れただと……」って言いながら学校の外に飛び出して補導を食らったり……


「俺から離れろ!!まだ俺が自制していられる間に!!」と言って震える右腕を抑えたり……


「くっくっく、矮小な人間ヒューマンごときがこの俺に何の用だと?」なんて絡んできた不良に言っちゃったり……


「久しいな、どうやら理に導かれたようだな」なんて、夏休み明け久しぶりにあったクラスメートに言っちゃったり……


いや、ひょっとしたら白い目どころか、危ない奴って見られてかも。


かもじゃなくて、間違いなくそう見られてたよねと。おかげでクラスメートからも距離置かれるし、もちろん彼女だってできやしない。


不良にも絡まれる確率が高い。おかげで自衛手段も覚えて、ある程度身体も鍛えました。


ただ、この魔眼ってデメリットばかりじゃないんだ。透視眼、知覚眼(人の悪意や気持ちを見抜く)、千里眼etcと言った複数の能力がある。


はいはい、そこ中二乙とか言わない。人には優しくしろって学校の先生から教わらなかったか?



思春期におけるエロスは力だ、滾れエロス!唸れ俺のエロス!!


俺が魔眼の力に気づいたのは俺の性の目覚めがきっかけだった。


当時俺は小学5年生、ちょうど女子を意識し始めたくらいのころだ。


里中美由紀さん、俺の二番目の心の恋人……(初恋のマドンナであるミドリ先生は俺の卒園後すぐに寿退園)


臨海学校で彼女の浴衣姿を見た際、その艶やかさのあまり、彼女の裸が見たい、見たいと俺は悶々した。


普通はね、その来ている浴衣とかから妄想するよね。思春期における妄想力のレベルの高さは凄いからね。


だけど、そうじゃない。



その時不思議なことが起こった。


俺の目には上に纏った浴衣姿ではなく、里中さんの生まれたまま裸体が映ったのだ。


里中さんの裸体は、いややめておこう。人の言葉では美の女神の素晴らしさを伝えきることなどできはしないのだからな、それにこれは俺だけの大切な思いメモリーだ。


あの時、急に鼻血を垂れ流して、周囲にからかわれたことも里中さんの裸体の素晴らしさを思えば致し方ない。


そして、鼻血を出した俺を気持ち悪がることなく心配してくれた里中さんの優しさは本当に女神のようだった。


それ以降、少しずつ俺はこの魔眼の扱いを覚えていった。


あっ、ちなみに去年里中さんに告白した時は「君と出会えたのは前世からの宿縁~」「俺たちが巡り会えたのは運命なんだ」なんて暴走かまして、あっさり振られました(涙)




それはともかく、俺は今日入学する名門時ノ森学園に合格できたのだ。


うちの中学で受かったのは俺一人。ほかに学年トップクラスの連中が数人受けてたみたいだけどね。


うちの学校から合格者が出るのは4年ぶりらしい、先生たちもびっくりしていた。


「おい!山田、本当にカンニングとかしてないだろうな!?」


担任、学年主任の両方から問いただされた。俺は信用されていない……


信用されてない原因は俺の成績ではなく、俺の奇行が主な原因だろうけど。


時ノ森学園の入試はカンニング対策がきっちりなされている。


受験時には携帯電話も回収され、持ち物検査もされる。複数の試験官が常に教室で受験生をチェックしている。


気分が悪くなったり、急にトイレに行きたくなっても、試験官の付き添いがある。


普通であればカンニングなどできっこない。


俺も中学では上位の成績だった、ヤバめの言動を抑えられないならせめて学業では優等生になろうと努力した結果だ。


エターナル中二病、俺は闇、咎を背負いしもの。


魔眼の暴走を抑え込めない限り、俺がまともな職に就けるとは思えない。


だが、この魔眼の暴走は何年も抑えようと努力しても一定の改善は見られたものの治しきることはできなかった。


緊張すると高確率で起きる魔眼の暴走は、面接においては絶望的だ。


だが、これが超一流の学歴を持っていたならどうだろう?大企業はともかく、中小企業であれば……


バカと天才は紙一重、好意的とまでは言わなくても、俺を評価し雇ってくれるかもしれない。そう思いたい…


だから俺は何としてでもこの時ノ森学園に入学したかった。


特に中学三年の夏ごろからの俺の猛勉強は凄まじかった。


親が子供に一度は言ってみたいランキングの上位に入るであろう「勉強ばかりしてないでちょっとは息抜きしたら?」を連発させるというのだからその凄まじさは説明不要だろう。


透視眼に千里眼があるのだから、カンニングは余裕だろうって?


確かにカンニングならできただろう。だが、この力には制限がある。


まず複数の能力を同時に使うことはできない。そのため千里眼と透視眼を同時に使い、事前に試験問題やその解答を入手することはできない。


そして、俺がこの魔眼の力を使いたくない一番の理由でもある制限だが、魔眼の力を使うと中二的な行動を所構わず行ってしまうのだ。


もし、俺が千里眼や透視眼を使って、試験中にカンニングを行えば


「……この気配、まさか機関の連中が動き出したのか!?」


なんて試験中に叫び出し、挙句に外に飛び出すことが容易に想像がつく。


それでなくとも、試験中に急におかしなことを口にしないように口元を押さえながら試験を受けていたというのに。


だから先生、俺はカンニングなんてしてません。無実です。




そして、合格発表の日自分の受験番号を発見した時俺は歓喜した。


「俺は、俺はレールに乗ったぞ~!!」

「どうやら俺に神の力が宿ったようだな……」

「俺はこの学園に導かれたのだ……」


などと口走り、周囲から白い目で見られたのはあまり思い出したくもない。昂ぶり過ぎだろ俺……


その興奮はしばらく収まることを知らず、卒業式までの間、さまざま中二発言、行動を取ることになり、今まで以上に孤立することになって、卒業式を無事に終えるまでは辛い日が続いた。


これまで時ノ森に合格した先輩たちは非モテであっても、周囲から尊敬を受け、彼女すらゲットすることさえあったというのに……俺の場合はボッチがさらに加速するなんて……




時ノ森学園では俺の今までの奇行を知る人間はいない。


できることなら、少しでもこの魔眼の暴走を抑え、素敵な高校ライフを過ごせることを夢見て、俺はついに入学式を迎えたのだった。

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