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彼女が死んでいた  作者: 太郎
過去
7/13

二回目の冬

 *



 僕は何も考えたくなかった。全てを考えたくなかった。彼女の父親のことも、彼女のことを本気で好きな僕がいることも、彼の最後の言葉も。

 全てから逃げ出したくて僕は仕事を沢山入れるようにした。平日出勤だけだったのに上司に頼んで土曜も仕事を入れた。家に帰るのが怖かったから。彼女が何も知らないで僕を待ってていてくれるのか不安で怖かったから。

 しかし流石に日曜日位は家に帰らないと彼女が寂しがると思って日曜日はいつも通りの変態な僕でいた。彼女に悪戯してそれを怒られて、でも彼女は許してくれていちゃいちゃする楽しい休日になる。


『よしっ!』


 僕は渇を入れるために両頬をビンタした。じんじんと痛みが広がってくるのが心地よく僕の心を刺激する。

 今日は、日曜日。僕が変態になる日だ。


『何で、頬叩いてるの?バカなの?』

『やあ、今日も可愛いね。リトルマイガール』

『あ、本物のバカだわ』

『そんなこと言わないでー』


 がばっと彼女に抱きついた。以前だったら許されたこの行為は今の彼女には激しく嫌がられる。


『ぎゃああぁぁぁっ!変態っ!』


 べしべしと頬を叩かれ最終的には蹴り飛ばされた。しくしくと泣いたフリをするが『泣き真似でしょ』と彼女に一蹴されて終わる。

 うむ。これが反抗期というものなのだろうか。彼女は僕が仕事で家を開けている時間が長くなった分、暇になり僕の部屋で遊ぶようになった。

 特に僕の部屋にしかないTVを彼女は酷く気に入っている。TVはドラマやバラエティー等沢山楽しいものがあるからね。彼女がハマるのも無理はない……が、ドラマにハマりすぎて影響されるようになったのだ。

 そのせいで『キモい、死ね、ウザい、変態』は毎日言われる僕である。(死ね、バカは以前から言われていたがここまでは酷くなかった)

 なるほど、世の親の気持ちが分かった。子供に悪影響だからTVを禁止する法律をつくって欲しい。じゃないと可憐で可愛らしかった彼女が僕に酷い言葉をぶつけてくる。(あれ、それでも良いかも。結構興奮するし)


『ぶー、折角の休みなのに僕と遊んでよ』

『何で私なの。一人で遊んでて』


 彼女は横になったままごろごろと転がり荷物の山にぶつかった。暫しその場で何かモゾモゾしてから、彼女は転がって帰ってきた。そして僕に取ってきたものを投げつける。


『私のお気に入りの貸してあげるから』


 それは前に彼から貰ったグロい見た目の人形だった。変わらずに綿は出てるし黄色くて臭い……なのに彼女にこの人形を見せた瞬間、彼女はこれに抱きついた。以前彼女が大事にしていた人形だったようだ。

 それを何故彼が持っているのか、という疑問なんて少しも湧かなかった。もうその答えは理解していたからね。


『……ありがとう』

『じゃあ私は寝るわね』

『私は成長期なの。寝ないと縮んじゃうでしょ?』

『縮むことはないと思うけど、成長期だね』

『そう。だから寝るわ』


 彼女は布団を足と手でガッチリ挟んで、寝る準備を始めた。もにゅもにゅと動いて寝やすい場所を探している。僕が隣にいるというのに無防備に彼女は寝ようとしているのに何だか可笑しくなってしまった。(これは嬉しい意味で)やっぱり僕は彼女が好きだなぁ。

 あまりいちゃいちゃは出来なかったけどこんな休日もありか。僕は彼女の人形を大事に机に置いてから彼女の横に寝そべり彼女の寝顔を堪能した。

(彼女を見て思ったけど、可愛い少女は国宝にするべきだと思う。見ているだけで癒されるし、彼女が呼吸をするだけで社会にある汚い部分を清浄化していると思う。一家に一台?一人?は美少女だね、うん)


 *


 今日も変態エンジンフル可動。そう、日曜日である。


『楽しいコト、しない?』


 横になる彼女の後ろ姿に向かって言った。すると僅かにだけど彼女の背中が動いた。反応してくれてるのだ。


『……何?』

 彼女の声は少し低かった。

『こういうコト』


 彼女の肩を掴んで仰向けにしてから僕が彼女に馬乗りするような形で静止した。(勿論彼女に体重をかけないような所で止まっている)彼女はあまりにも驚いて動けないだろうか。ただ、眼を丸くしている。

(正直僕は馬乗りするよりもされる方が好きなんだけどね。うん、彼女が馬乗りして欲しい。出来れば腹の上で……ってこれ以上言うと本当に下ネタだから自重)


『ナニするの?』

『ナニしに行きたい?』


 あえて彼女に質問で返してみると彼女は更に眼を丸くさせた。あら、そんな表情出来るんだ。


『部屋から出るの?』

『ピンポーン』


 彼女の目の前で○を作ってみせる。女性は勘が鋭いって言うからかな。彼女は勘が優れている。


『……やだ。何で外出なくちゃいけないのよ』

『ううん。自立のためもあるけど、君との思い出をもっと作りたいからっていうのが一番大きい理由』

『……ふん。外でナニするの』


 彼女が鼻を鳴らして顔を手で隠そうと動かしたから手首を押さえて止めた。本当はすぐに離そうと思っていたんだけど彼女の顔がみるみると赤くなっていくのを見て離そうという気持ちがなくなった。

 横になって髪が彼女の顔を覆わないし、手も僕が止めているから彼女の顔を隠すものはない。頬を紅潮させた彼女の瞳は僅かに揺れているのが全て見える。いつもはあんなにも僕を罵倒するのに彼女は一つも抵抗しないから勘違いしてしまうでしょーが。

 ぺいっと彼女にデコピンしてから口を開いた。


『買い物しようか』

『は?』


 彼女はすっとんきょうな声を上げた。



『まさか、この私が外に出るとはね……』


 彼女は玄関を開けて一歩出たところで顔をしかめた。

 彼女が鼻まで帽子を引いて伸ばしながら顔を隠した。彼女は少し口元が出てるだけでそれ以外の肌は全て隠している。一見変な黒い動物だ。(まあ、彼女の美貌を他人に晒すと危険だから僕がコーディネートしたんだけど)

 それは僕も思っているよ。買い物しようと言った時に彼女は嫌がっていたが無理矢理行くことにさせた。これで彼女の自立に一歩近づいたと思う。僕がいなくなっても彼女が一人で生きていけるように、ね。

 彼女を僕の甘い蜜でどろどろに固めて僕から離れられないようにしていたけどもう、離さないといけないのかもしれない。だけどやっぱり彼女は離したくないからもう少し一緒にいたい。そんな思いが交差して第一段階で彼女を連れ出した。


『良いじゃない。初体験だよ』

『無理……怖い』


 彼女が震えた足に手を置いて腰を曲げた。まだ部屋の前の階段すら降りてはいないんだけど彼女がここまで来れたことは奇跡に違いない。

 だけど、僕はここで止めてあげない。


『僕がついているから大丈夫。怖いことはないから、ね?』

『無理、や、怖い』


 彼女の全身の震えは激しくなって肩を押さえたと思ったら、お尻から地面に落ちた。ぶつぶつと否定の言葉を呟き彼女が小さく縮まる。

 明らかに普通じゃない彼女の行動は僕の行動がやり過ぎていたんだと悟らせた。


『ごめん、僕が早まりすぎたね。ごめんね』

『怖い、怖い、怖い』


 震えは止まらなくて遂には彼女は自傷行為にはしった。伸びた爪で頬に傷をつけていく。白い肌に似合わないは深紅の血が彼女を侵食しようとする。僕は必死になって彼女の両腕を掴んで止めたのだが彼女は暴れだした。


『やだやだやだやだやだ。私なんて……死ねばいいっ!』


 彼女は叫んでから舌を出した。それから力強く舌を噛み切ろうとしているんだと判断したが俺の両手は彼女によって塞がれている。どうやって彼女の自傷行為を止めれるんだ!?

 ……あったじゃないか。僕にも彼女を止める武器となる舌が。


『やっ……んん"っ!!』

『はっ、くっ……』


 彼女の口に無理矢理僕の舌をねじこんで彼女の行動を一旦止めた。彼女の口内は切れていたようで舌全体に鉄の味が広がった。鉄の味がいつまでも消えないから、彼女の舌の傷を癒すために僕の唾液を絡めて動かした。

 しかし彼女にはそれが嫌だったのか分からないが、僕の舌までも噛み切ろうと力を入れた。ちょ、痛い、血が出てるし骨格筋がぶちぶち音をたてて裂けているよ。

 僕は必死に舌を噛み切られないようにとでたらめに動かして何とか彼女の歯から逃れることが出来た。口の端から垂れる血液を舐めとりながら彼女の動きを見る。はぁはぁと荒く肩で息をしている彼女はもう抵抗することはなかった。

 彼女の腕を拘束していた手を緩めると彼女の体は糸が切れた人形の様に僕に向かって崩れ落ちた。彼女の体は酷く冷たかった。恐らく、冬の寒さにやられたのではないと思う。僕の行動が早すぎたせいなんだろう


 僕は彼女の小さな体を包みながら優しく囁いた。


『ごめんね。今日は帰ろうか』


 すると彼女は震えながらも頷いてくれた。髪の隙間から見えた彼女の白い肌はいつもよりも青白くて、僕の心を締め付けた。



 彼女のために温かいミルクを注ぎ彼女の前に置いた。


『どうぞ』

『……ありがと』


 僕の慣れない看護によって大量に絆創膏が貼られた彼女の頬にはうっすらと生気が宿っていた。彼女は僕の渡したミルクを啜った後、僕の顔を見た。


『私って……』

『ん?』

『私って異常なのね』

『えっ?』


 僕の顔を見たまま低く呟くように言った彼女は、辛いことに耐えているみたいに口を震わしていた。目には涙も溜まっている。


『……ドラマで見たんだけど皆外に出るのを怖がってないの。それに私位の年の子達は学校ってものに行ってるし、奴隷を持っていなかった。……皆と違うことしてる人は異常って言うんでしょ?だから、私は異常なんでしょ?』


 僕はやはりTVを買わなければ良かったと後悔した。(僕の部屋にあるんだけどさぁ)TVを買わなければ彼女はこんな表情を見せることはなかった。苦しい思いをさせることはなかった。僕は彼女を自立させるとか自分勝手に決めて、彼女を傷つけたんだ。

 ……僕は最低だ。


『異常じゃないよ。君は特別なだけ、他の人には持っていないものを持っているだけ。だから、異常じゃないんだよ』

『……でも、私がおかしいことには変わりないじゃない。私には奴隷がいて、ご主人様がいて……通常じゃない日常を過ごしている。こんな私が特別なんて……ありえない』


 彼女は大粒の涙を流しながら僕に訴えた。悲痛な叫びが僕の心臓に深く突き刺さり僕まで泣きそうになった。きっと彼女の味わっている苦しみはこれ以上なんだと思う。こんな小さな体によく痛みを耐えられていたね。

 ごめんね。僕のせいで。彼女を全てから守りきれなくて、邪念を与えてしまってごめんね。

 僕は彼女と似たような人間だから、こんな場面に遭遇しても対応の仕方なんて分からないし彼女の慰め方だって分からない。分からないけど、彼女には一番これが必要だと思って行動した。


『僕は君が異常になっても僕も異常になってずっと愛し続けるよ』


 そう言って彼女を抱き締めた。社会的に見ても一般的に見てもこれが正解の慰め方だったとは思えないけど僕にはこの言葉を出すのだけで精一杯だった。

 抱き締めているから彼女の顔が見えないのは当たり前で反応が全く分からなかった。僕の言葉にどう反応してくれたのだろうか。


『……ばぁか。奴隷まで異常になってどうするの』


 彼女は少し笑っている声で僕の頭を叩いた。優しく僕を戒める叩きが僕には最高に嬉しかった。


『そこは元々異常じゃないのって言ってくれないとー』

『あら、元々変態だったから気づかなかったわ』

『変態じゃないよ』

『ふふふっ。幼い少女に愛の告白をする男が変態じゃないなんてよく言えたわね。奴隷が変態じゃないかなんて日本国民に聞いたら皆が口を揃えて変態だというと思うわ』

『っく。段々大人びた言葉を使うようになってきたね。僕はもう、敵わないよ』

『元からでしょ』

『言えてるや』


 ふふふっと笑いあって、今までで一番傷ついた日曜日が終わった。


 *


 うーん。今日は僕の記憶の限りでは変態さんになる予定はないんだけど、彼女が僕を誘う行動をしている。明らかに意図してやっているだろうポーズは僕の顔の上で仁王立ちだ。朝一番に目に入ってきたのが彼女の股だから色んなモノが目覚めた気がする。


『どうしたの?』


 平然としたフリで聞いてみた。すると仁王立ちのまま彼女が言う。


『今日、仕事休みなさい』

『んー……何で?』

『私の言うことが聞けないの?奴隷が』


 彼女が顔に踵を乗せてぐりぐりと僕の鼻を苛めてきた。こんな苛めならむしろ大歓迎。いつでもカモーン……だけど仕事を休めとなるとそれはちょっと悩むな。


『ご褒美くれないと休めないー』

『……変態がバカ言わないでよっ』


 彼女がぐりぐりさせていた踵を下ろし僕の腹の上に馬乗りした。(いつしかの僕の願望を叶えてくれてありがとう。こんなに幸福で僕は死ぬのでしょうか?)

 彼女は手をあげるとそのまま僕に向かっておろした。一瞬何しているのか分からなかったけどぱあんっと音の後に頬が痛くなったから、叩かれたのだと理解した。……て、何で叩かれたのだろうか?馬乗りだけで十分なんだけど。


『な、何で?』


 痛む頬を押さえながら彼女の顔を見ると、彼女は上を向いてから僕を見てだらしなく頬を弛緩させた。


『奴隷はマゾなんでしょ?だから、こうしたら喜ぶと思って』


 まあ、確かに君に叩かれて僕は喜んでいるけど(僕がマゾって点には同意しないよ)僕よりも彼女の方が喜んでいると思うよって言葉は飲み込んで、彼女の頭を撫でた。


『嬉しいよ。じゃあ、ご褒美貰ったから休むね』

『やっぱり変態じゃない。これだけで会社休めるなんてどんな神経してるのよ。そもそも勝手に休める会社自体どうかしてるわ』


 彼女が早口で僕を罵る言葉を繋げて吐いていくが、僕はそれが彼女の照れ隠しだってことを知っている。本当は嬉しくて堪らないのに僕に悟られたくなくって罵っているんだろうけど、僕には分かっているよ。


『そうだね。今日はどうして休んで欲しかったの?』

『今日、何日か知ってる?』


 僕の話をまるっきり無視して放たれた彼女の言葉に驚いた。彼女が日付に関してのことを僕に聞くなんて有り得ない。彼女が日付に興味のある女の子にも見えないし。


『具合悪いの?』

『クリスマスよ』


 彼女と僕の会話は全く成立してなかったが彼女は答えを提示した。(クリスマスだなんて知らなかった。仕事を沢山いれて忙しくし過ぎたせいだろう)


『そうだね』

『去年のクリスマスはナニをしたか覚えてる?』

『んー……』


 去年のクリスマスといえばクリスマスをしらない彼女に嘘のクリスマスというものを教えて楽しんだはず。あと、彼女が僕の誕生日を祝ってくれた。


『楽しかったね』

『質問に答えてないでしょ。覚えてないみたいなら私が教えてあげる。クリスマスってのは恋人同士じゃない男女が裸になり暗闇の中に蝋燭を持って互いの隅々まで知り合うといった行事って奴隷が言ったのよ』

『そうだね』

『奴隷が言ったことだからそうだって信じてきたけど、テレビで観てたらそんなこと一切してないじゃない。プレゼント交換?ってのはしてたけどね……一体どういうことなの?嘘ついてたの!?』

『嘘じゃ、ないよ。僕にとってはそれが真実』


 僕の言葉を聞いてヒステリックに怒鳴っていた彼女が水をきった様に静まった。(咄嗟の出任せが彼女にはきいたようだ)


『そう、なの?…やっぱり奴隷も異常なのね』

『うん』


 嘘だけどね。僕にとっては彼女に言った言葉は下心での嘘で、僕の家庭ではクリスマスというものは一般家庭と同じようにケーキを囲んで裸で手を繋いで踊るというものだった。(これを唯一の友人の彼に話したことがあったのだが、普通の顔をしていたから彼の家も同じクリスマスを送っていたはずだ)


『じゃあ、私達流のクリスマスでもする?』


 彼女がどこからか取り出したのか分からないケーキを手に取って軽く微笑んだ。その笑顔は懐かしく、去年の冬を思い出させた。その掴んだケーキがどこに行くのか分かるよ。


『しようk』


 ─べちゃ

 言い切る前に彼女が掴んでいたケーキを僕の顔面に擦り付け、視界を暗くさせた。そしてその後の行動は僕には分かっているから次の行動に身構えた。

 すると彼女の次の行動は予想通りで、僕の瞼の上のケーキを舐め取った。ゆっくりと生温かい舌が動くのが心地よい。


『あまっ』


 時折そう呟くが僕の瞼に付くケーキを舐めとる作業は止まらない。しかしある程度彼女が舐めた頃舌を止めた。


『目ぇ、開けて』


 彼女の言われる通りに目を開けると唇にケーキを付けた彼女が口角をあげていた。


『奴隷のせいで口に生クリーム付いちゃったじゃない。舐めて』


 悪戯に僕を誘う彼女の言葉を僕は実行した。生クリームは唇の上に付いているから、勿論彼女自身の舌で舐めとることが出来るけど、こうやって彼女が誘っているのだから仕方がないじゃないか。あえて指摘しないよ。

 小さな彼女の唇に僕の唇を押し付けてからゆっくりと彼女の唇に沿って舌を這わせる。柔らかすぎて食べてしまいそうだ。(これって世間ではキスって言うんだろうけど相手が彼女だと咀嚼って感じだ)


『ふぁ……奴隷の変態』


 恍惚な表情で彼女が僕を罵る。彼女の言葉が聞こえなければその表情からは喜びの言葉しか発せられないように思えた。

 僕を罵る彼女はこの上なく綺麗な表情だった。彼女は僕のことを変態って言うけどね、僕を罵って喜ぶ彼女こそ変態だよ。まあ、それでも僕は良いんだけど。


『クリスマスに感謝だね』

『奴隷の誕生日にもでしょ』

『……僕の誕生日はクリスマスになったんだね』

『不満なの?奴隷のくせに』

『いや、嬉しいよ』

『ふんっ、そんなの当たり前よ』

『……君は可愛いなぁ』

『な、何よ……煩いわ』

『ふふっ。あ、このケーキはどこで買ってきたの?』

『あれ』


 彼女が指を差したのは僕の部屋だった。


『あれ?』


 彼女の言葉を復唱する。


『あの四角くて細長くて。テレビで観たんだけど……いんたーねっと、ってやつ』

『パソコンで注文したの?そういえば僕のパソコン暫くなくなっていたけど君が持っていたんだ』

『そ』

『ふぅん。よく出来たね』


 僕がそう言って彼女の頭を撫でると彼女は目を細めた。




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