第二節
なぜ、また急に地下射撃場なのか?
それよりもまず、この世界、学園について説明しておこう。
この国、日本はある一つの政府を築いた。
「Violet Hawks」通称、V.Hだ。
機械の大量生産の時期が訪れたとき、日本はその”波”に乗った。
そして他国の追従を許さず、ぶっちぎりで工業生産額は世界一となった。
また、大量生産により一時危うくなりかけた鉱産資源は、40年ほど前、学者の氷鏡 陽介が、
新たに見つけた資源により、難を逃れた。
その資源の名は、陽介の名前からとり、「ユジェケール」と名付けられ、それによって作られた金属は「ユージェ」と呼ばれた。
しかもこのユジェケール、この鉱石の約60%がそのまま金属成分であり、そしてこれは日本の中心とも言える東京、
そこに広がる関東ローム内を中心として、日本各地でとれるものだった。
しかし、その日本の資源を他国が見逃すはずがない。
最初は交渉、という形で接してきた国も、昔のように武力で占領しようと考えた国もあった。
そしてそれを封じたのがV.Hだった。
実際には戦争が起きたわけではないのだが、日本はその武器の多さを相手に見せつけたところ、たちまち相手は諦めたという。
そうして、調子に乗った日本は、いつ攻められてもいいように、V.Hの拡張を目指した。
その計画の一端が、ここ慶浪学園である。
ここ東京ではある意味就職は戦争ともいっていいくらいの、激しさである。
人手が足りているため、かなり高い能力を持っていないと採用されなくなってしまった。
そして今、都心は右を見れば孤児や仕事のない親が、左を見れば裕福な大人たちが、それぞれ生活をする、という有様。
そしてここはそういった子供や大人を教育、訓練し、後々はV.Hの一員にする、という場所だった。