循環輪は廻る。(魂の心象風景)
何故ここにいるのだろう?
気がつくと空が見えた。
満月の夜、月明かりは社会を一様に染め付けている。
――起き上がれない。
いや、そうではない。起き上がらないのだ。
自分から、高さが消えた――
視覚は3次元を認識しているのに、体表は地面の表面にくっついている。
眠らない街、
電飾は艶やかで装飾だけが、浮かび上がる。
ごみくず、
くさむら、
車の影をすり抜けて、何をするでもなく静かな街をさまよう。
何のために、さまようのだろう?
何のために、うまれたのだろう?
何のために、ここにあるのだろう?
なんのために?
どこにも存在がなくなった時から、どれくらい経つのだろう。
容を保つのもむずかしい身体。
体は当の昔に、どこかに忘れてきた。
何人もの死を見、意識は死ぬことのできない不死の病。
不治ではない。永遠に生きていかなくてはなならない呪。
人との関係を絶って、もう何代もの時代が変わった。
しかし、時として、人とのふれあいが欲しくなる時がある……
時が止まったように世界から孤立している。
全てが時を戻す。
はじまりのときへ。
そして、別の未来へ。
再生と消滅を繰り返す、刻の呪い。
永遠に彷徨の時期をさまよう。
――空箱に捨てられて、その影はただ見ているだけ。