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第5話 準備完璧!300人全救済で魔物大群を完全撃破

 村に到着すると、俺たちは即座に作戦を実行に移した。


「村長さん!」


 俺は真っ直ぐ村の中心部に向かい、村長を呼び出した。


「魔物の大群が向かってきています。すぐに避難の準備を!」


「え? 魔物ですと?」


 村長は困惑している。まだ魔物の姿は見えないから無理もない。


「信じてください。谷沿いのルートから全村民を避難させてください。時間がありません」


 前回の失敗で学んだ。村人の避難を最優先にしなければならない。


「で、でも証拠が……」


 その時、森の方向から太鼓のような音が響いてきた。


 オークの大群の行進音だ。


「あの音が聞こえませんか? 魔物の軍勢です」


 村長の顔が青ざめる。


「本当に……?」


「エルナ、村人の避難誘導を頼む」


 俺の指示に、エルナが頷いた。


「分かりました! 皆さん、冷静に避難の準備を!」


 エルナの僧侶服と聖職者らしい落ち着いた声に、村人たちも安心したようだ。


 彼女の指示に従って、次々と避難の準備を始める。


「リョウ、戦える男手を集めてくれ。ただし、正面戦闘は避ける。地形を活かした戦術で行くんだ」


「分かった」


 リョウは前回のような無謀な突撃をしようとしない。俺の言葉を信じて、冷静に村の男たちをまとめている。


「カイン、石版の魔法式を詳しく調べてくれ。あれを守ることが最重要だ」


「承知しました」


 カインは広場の石版に向かった。


 完璧だ。前回の失敗を活かし、今度は全員が適切な役割で動いている。


 10分後、オークの大群が村の入り口に現れた。


 しかし、今度は状況が全く違う。


 村人たちは既に安全な谷沿いのルートから避難を開始している。戦える男たちは俺たちの指示の下、要所要所に配置についている。


「石版の調査はどうだ?」


「やはり封印系の魔法式でした」


 カインが報告する。


「この石版が破壊されると、この地域の魔物が一斉に活性化します。絶対に守らなければ」


「よし、石版防衛作戦開始だ」


 俺は村の地形を活かした作戦を指示した。


 まず、村の入り口の橋を一部破壊する。オークの大群は一度に村に流れ込めなくなる。


 次に、川の水を引いて人工的な水路を作る。オーガの足止めになる。


 そして、崖の上からロープで移動できる避難ルートも確保した。


「すげえ、こんな短時間でこんな要塞みたいに」


 村の男たちが感心している。


 しかし、本当の戦いはここからだ。


 オークの大群が村に押し寄せてきた。


「ウォオオオ!」


 しかし、彼らは俺の作った罠にかかった。


 破壊された橋で足止めされ、数体ずつしか渡れない。そこを村の男たちが弓で狙撃する。


 オーガが川を渡ろうとするが、人工水路に足を取られて動きが鈍る。


「今だ!」


 俺は煙幕玉を投げた。視界を遮ると同時に、用意していた油をオーガの足元にまく。


 そして火をつける。


「グオオオオ!」


 オーガたちが炎に包まれて混乱する。


 この隙に、石版に向かってきたオークを迎撃する。


「これ以上は通さない!」


 リョウが剣を振るい、村の男たちと連携してオークを食い止める。


 前回のような無謀な突撃ではない。計算された戦術だ。


 しかし、敵の数は多い。徐々に押し込まれていく。


 その時だった。


「リョウ!」


 オーガの一撃がリョウを襲った。前回と同じ状況だ。


 しかし、今度は違う。


 リョウは俊敏に回避し、カウンター攻撃を決める。高級回復薬を事前に飲んでいたため、体力も反応速度も前回より格段に上がっていたのだ。


 それでも、オーガの反撃でリョウが負傷した。


「リョウ!」


 エルナが駆け寄る。


「大丈夫です、軽傷です」


「でも、出血が……」


 その時、エルナの目が変わった。


「みんなを絶対に失わない!」


 エルナから眩いばかりの光が溢れた。


 彼女の治癒魔法が覚醒したのだ。


「治癒の奇跡よ!」


 エルナの新たな魔法が発動した。リョウの傷が瞬時に完全回復する。それどころか、体力まで回復している。


「すげえ……エルナ、君の魔法、前より全然違う」


 リョウが驚く。


「私にも分からないけれど……みんなを守りたいって強く思ったら、自然に……」


 エルナの治癒魔法開花。これで回復面も完璧だ。


 戦況は俺たちに有利に傾いた。


 地形を活かした戦術、完璧な準備、そして仲間たちの連携。


 オークは次々と倒され、オーガも炎と水路にはまって動きが封じられている。


 そして、最も重要な石版は完全に守り抜いた。


「やったぞ!」


 村の男たちが歓声を上げる。


 魔物の大群は完全に撃退された。しかも、村人は一人も犠牲にならず、俺たちも軽傷で済んだ。


 完全勝利だ。


「アキト……」


 リョウが俺の肩に手を置いた。


「お前の判断を信じて良かった。正面突撃していたら、俺たちも村も危なかった」


 リョウの信頼を得ることができた。前回の失敗が、今度は成功の糧となった。


「でも、不思議ですね」


 エルナが首をかしげる。


「アキトさん、まるで未来が見えているみたいでした。魔物の動きも、最適な戦術も、全部分かっていたような」


 秘密にしておく必要もない。

 

 ――言いかけた瞬間、耳の奥で針が走った。

 

 喉が凍り、視界の端で街灯が一瞬、巻き戻る。


「……っ、大丈夫、なんでもない」


「運が良かっただけだよ」


 俺は慌ててごまかした。そして視界が元に戻った。


 答えを他者に渡せば、君はもう”選ぶ者”ではない。

 観測は壊れ、巻き戻りは短くなる。

 

 昨日の夢を思い出し、しばらくは死に戻りは秘密にすることにした。


「それに、みんなが完璧に役割を果たしてくれたからだ」


「そうですね」


 エルナは納得してくれたが、その視線はまだ疑問を含んでいる。


 カインも興味深そうに俺を見ている。


 死に戻りのことは、まだ秘密にしておいた方がいいだろう。


 その時、村長が慌てて駆け寄ってきた。


「皆さん、ありがとうございました! 村を救っていただいて……」


 村長の後ろから、避難していた村人たちが戻ってきた。


「本当にありがとう!」


「英雄だ!」


 村人たちが口々に感謝の言葉を述べる。


 300人全員、無事だった。


 仲間も無傷。


 封印石版も破壊されず、魔王の影響も拡大しなかった。


 しかし、歓声が薄れると同時に、碑の光は脈打つように弱まった。


「……出力が落ちている。十に一、削れた感じだ」


 カインの声が硬い。俺の耳奥がキンと鳴り、視界が一瞬だけ巻き戻る。――勝ちは取った。だが、見えない場所で何かが削れている。


 仲間か村か、の二択ではなく、両方救う第3の道を見つけることができた。


 これが俺に与えられた力の使い方なんだ。女神が言っていた「正しい道」って、これのことだったのかもしれない。


 その時、空の向こうから鳥の鳴き声が聞こえた。


 見上げると、王都の紋章をつけた伝書鳩が飛んできている。


「王都からの使者鳩だ」


 カインが気づく。


 伝書鳩は俺たちの前に着地し、足に結び付けられた手紙を落とした。


 俺が手紙を開くと、そこには緊急の文字が踊っていた。


『緊急招集令状

冒険者パーティー「アキト一行」宛

王都にて重大事案発生 至急参上せよ

魔王軍の動向に重大な変化あり

国家存亡の危機』


 俺たちは顔を見合わせた。


「王都で何かあったのか……」


 リョウが呟く。


「魔王軍の動向に変化って、何だろう」


 エルナも不安そうだ。


 しかし、俺には予感があった。


 きっとまた新しい困難が待っているのだろう。今度はもっと大きな規模で、もっと複雑な選択を迫られるのかもしれない。


 でも、もう怖くない。


 仲間たちとの絆も深まったし、死に戻りの力の使い方も分かってきた。


「よし、王都に向かおう」


 俺は仲間たちに提案した。


「また困難が待っているかもしれないが、俺たちなら乗り越えられる」


「そうだな」


 リョウが頷く。


「私たちなら、どんな困難も」


 エルナも微笑む。


「興味深い展開になりそうですね」


 カインも同意した。


 俺たちは村人たちに見送られながら、王都に向けて出発した。


 第1審判を完全勝利で乗り越えた俺たちに、次はどんな試練が待っているのか。


 でも、きっと大丈夫だ。


 俺には仲間がいる。そして、死に戻りの力がある。


 必ず、全員で困難を乗り越えてみせる。

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