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第4話 兄と妹のいびつな関係

 「ここはどこですか?」

 シャーランは2段ベッドの下に座り、マハラに尋ねる。


「ごめんなさい。ここはオレたちの寮部屋です、嫌かもしれないけれど、ここならオレら以外入ってこないから。」


 セントラル学園では、寮生活のため、みなどこかしらの部屋に割り当てられている。


 この部屋には、2段ベッドが3つ置いてあり、マハラ、ジャン、スカイ、ケイシはどのベッドを使っているかシャーランに教える。

 警戒しないでいいよ、とばかりに、おちゃらけた様子を見せる4人に、シャーランは段々と気持ちが落ち着いていく。


 小窓から入ってくる風が気持ちいい。

 シャーランは、ふうっと息を吐き出す。


「先ほどは助けてくださり、ありがとうございました。本当に助かりました・・。」


 座ったまま、深々とお辞儀をするシャーランを見て、マハラ、ジャン、スカイ、ケイシは真面目な顔になり、シャーランが座るベッドの近くの床に座る。


「嫌だったらこたえなくていいんだけど・・、さっきのこと、少し聞いていいかな・・?」

 ジャンが優しくゆっくりと聞く。


 嫌だったら言わなくていいよ、とスカイも両手を目の前で振りながら、心配そうな顔をする。


 コクン、とうなずくシャーランは、みなが自分に気を遣ってくれているのが、よくわかった。


「あの人は本当に君のお兄さんなの?」

 ジャンはジッと、シャーランの目を見つめる。


「兄です・・」

 シャーランはどんな表情をしていいのかわからず、苦笑いしかできなかった。


 ジャンは、マハラ、スカイ、ケイシと目を合わせ、再びシャーランに顔を向ける。みな、真剣な顔だ。

 ジャンは、ゆっくりと口を開く。


「普通は、兄が妹にあんなことはしないよ・・その、スキンシップのことね。」


 シャーランは眉間にシワをよせ、うなずく。


「僕の勘違いでなければ、シャーランさんはあの兄に怯えていたように見えたんだけれど・・。あってるかな・・?」


 優しく、シャーランの様子を気遣いながら話すジャンを見て、シャーランは目をうるわす。


「言いたくないことは、無理して言わなくていいからね。」

 涙ぐむシャーランを見て、慌ててケイシがフォローにはいる。


 シャーランは口に笑みをつくり、首を左右に振り、大丈夫とばかりにみなを見る。


「私は記憶喪失で幼いころの記憶がないのですが、私が記憶しているころから、兄はいつもああでした。昼夜問わず、いつでも私の体にいつも触れてきて、抱きつき・・口には未だないもののキスもしてきます。兄妹きょうだいでやることではないと、嫌なのでやめるよう何回もお願いしたのですが、言えば言うほど行為は酷くなる一方でどうにもなりませんでした。」


 ジャンは両手を組んだまま下を向き、スカイはあの野郎と舌打ちをし、ケイシは苦虫をかみつぶしたような顔でうなだれた。


「家族はなにも言わないのですか?父親や母親は。」

 マハラがまっすぐな目で、シャーランに問う。


「親の前では、兄もああいった行為は控えるので・・でも、気づいているとは思います・・でも見て見ぬ振りです。」

 シャーランは、ハハっと乾いた笑いを小さくし、自分の立場の弱さに改めて辟易した。


 この学園に来たのも、兄から逃れるためだ。ここは全寮制のため、いやが応でも家を出なければならない。また、この学園はシャーランの故郷の隣国にあり、国境をこえての入国は手続きと申請が面倒であり、そう簡単には来れないだろうとの算段だった。


 そもそも、学園内には生徒以外の外部の人間が入ることは基本できないため、まさか兄が、しかも入園して間もないのに、こんなに早くに接触してくるとは思いもしなかった。


 シャーランは、太もも辺りのスカートを両手でギュッと掴む。

 目には涙が浮かぶ。


「つらいね・・」

 ケイシがゆっくりとシャーランに近づき、スカートを握っているシャーランの手をそっと両手でとりほぐす。


 兄に触れられるのは嫌だが、不思議とケイシに触られても、嫌な気持ちにならなかった。


「私は、兄から逃れるためにここに来ました。

 だから、この学園で必死に学ばなければならないのです・・!」


 シャーランの故郷では、どれだけ身分の高い殿方と結婚できるかが女性の幸せだ、と考えられてた。いい身なりをして、着飾って、お人形のように日々殿方を待つ生活・・。

 シャーランは、それらの生活がとても退屈だったのだが、それに加えて兄からの執拗な接触。

 限界だった。


 もっと頑張らなければ、とシャーランは小窓の方へと顔を向ける。

 小さい白い鳥が、陽の光の下で気持ちよさそうに飛ぶのを、眩しそうにシャーランは眺めていた。

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