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踊るダンジョン左遷  作者: 辺理可付加
大脱走! ダンジョン前署大怪獣パニック
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悪質な客引きにご注意ください

「なんですかその理由は!」

「なんですかとはなんだ。管轄は所轄にとって重大な問題だろうが」

「だからってねぇ!」


 肩を再度強く揺するも、課長は首をガクガクさせるだけで目を合わせない。


「いやー困ったなぁ。行きたいのは()()()()なんだがなぁ。ルールだもんなぁ。マナーだもんなぁ。怒られちゃうもんなぁ」

「アンタ本当はやる気ないな!?」

「こんな仕事、やる気ある方が異常では?」

「粟根は静かにしてなさい!」


 オレだって9割死にそうな任務などやりたくはない。

 だがここで我に返るわけにはいかない。

 こんな正義感が原動力のブラック労働、落ち着いたら続けられん。


 闇を振り払うようにエスカレートするオレの肩へ、課長が手を置く。


「まぁ待て二階。何も『サボタージュしよう』って話じゃない。好戦的なおまえの欲求を叶える手段があるにはある」

「そんなオレが血の気多いみたいな」


「多いでしょ」

「多いな」

「多いっスよ」

「多いわね」

「多い多い」

「多いと思われます」


「えぇ……」


 急に粟根どころか向こうで騒いでた係長や最後の良心鳥江くんまで。

 心外だがオレが神野を殴ったことを知っている人たちだけに否定しづらい。


「そういうわけで、だ」


 課長は肩からオレの手を放させると、振り返って課員全員に向けて声を張る。



「これより、あの巨大怪獣をこちらの管轄に入れるための、誘引作戦を開始する!!」



「あのプテラノドンみたいなヤツをですか!?」


 思わずこちらも声を上げると、課長がまた振り返る。


「なんだ二階。おまえがやれやれ騒いでるんだろう」

「いや、まぁ、そうですが!」


 だが()()()ってものがある。


 相手は怪獣だ。

 下手に刺激したらどうなるか分かったものではない。

 最悪頭からパクリだ。


 しかし、


「ダンジョン課なんですから、ダンジョン関係のことは越境できないんですか?」

「ダンジョンが動かない大穴だからな。そういう前提で、特別規定も前例もない」

「なるほど……」

「とにかくヤツがこの橋まで来ないかぎりは、どうすることもできんのだ」


 反論できるほど、オレにも何か代案があるわけじゃない。


「準備に取り掛かれ!」


 課長の指示に従うしかない。






「よし! 総員、準備はいいな!」



「「「「「「お、おお〜」」」」」」


 課員の士気は低い。

 何せ、


「始めぇ!!」



 プァーーーーーーーーーーーーン!!



「うっわ!」

「うるせぇ!」


 号令一下、元吹奏楽部粟根、渾身のトランペットが響き渡る。

 音楽隊から借りてきたものだ。


「ほら! 粟根だけにがんばらせるな! 全員行け!」




『誘き寄せ作戦その1:大きな音で気を引く』




「頭おかしいんじゃないのか」

「シーッ! んなこと言っちゃダメっスよ!」

『世間さまから見たら、ダンジョン課で頭おかしくないヤツなんかいないわよ!』

「ぐわっ!」


 粟根が吹き始めた『Sing Sing Sing』を引き裂くように。

 キィーンという音とともに係長の声が響き渡る。

 開署式とかの式典で使うマイクをボリュームMAXで使っているのだ。


 これはもう、自分も音を出すのに集中していないとイカれてしまう。

 上総ももう諦めて、誰かがなんかの余興で使ったんだろうギターを鳴らす。

 後ろでは渋谷ハロウィンの交通整理で見るような車に乗った鳥江くんの


『えー、毎月5日、15日、25日! 5の付く日はスーパーカズキのお客さま感謝デー! ポイント5パーセント! 5! 5! 5パーセントアップでございます! 皆さま日頃のご愛顧を感謝しまして5! 5! 5パーセント!』


 よく行くのかバイトしてたかだろうスーパーの店内放送が始まる。

 水崎さんのドラムがYOSHIKIじみてきたところで、

 オレもやったことのないエイサーに取り掛かる。


 のだが、






 10分くらい経過しただろうか。


「ゼェ、ハァ……」

「し、しんどい……」

「スマホで音楽流すんじゃダメなんかよ……」

「誰か水持ってない? 喉が……」


 全員満身創痍になって、一度チンドン屋を中止。


「それで、ヤツは? エアロドンは!?」


 成果を確認すべく、橋の向こうへ目を向けると


『ギャオオオオオ……』


「なぁ、ちょっと遠くなってないか?」

「みたいっスね」

「逆効果じゃないか!」

「そういえば、クマ避けの鈴とかありますよね。音って基本、野生動物を遠ざけるヤツ」

「粟根、そういうのはもっと早く言ってくれ」


 オレたちはただ、時間と体力を浪費しただけらしい。

 どころか、



「おーい! 何やってるんだーっ!」

「うるさいぞーっ!」



 遥か後方から怒号が聞こえる。

 振り返るとそこにいるのは、


「なっ!? こっち側の避難は完了していなかったのか!?」


 車の列と、窓から顔を覗かせる市民の皆さま。


「というか、私たちが橋一つ封鎖してるので遅れてる、って感じですね」

「なんてこった」


 ただでさえクソメンドくさい状況に見舞われているのに。

 まさかのマッチポンプで悪化させていたとは。


「これは困りましたね。もうヤジとか一般市民に邪魔されるとかは、二階さんのおかげで慣れましたけど」

「そりゃすまんな。だが」


 問題が粟根の心配だけでとどまればいいが。


 背後にいる市民の皆さまは車の列。渋滞だ。


「これ、いざというときオレたちも逃げられんぞ」

「なんですと!?」


 しかも市民を捨てて逃げられないことを考えれば、むしろ肉壁が求められる。

 だというのに、



「こうなれば作戦その2だ! 必要なものを準備するぞ!」



 ロクでもないことは続きそうだ。

お読みくださり、誠にありがとうございます。

少しでも続きが気になったりクスッとでもしていただけたら、

☆評価、ブックマーク、『いいね』などを

よろしくお願いいたします。

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