9話
店を出て、歩いてきた来た道と逆の方へ向かうルッツの後を追う。
「さて、色々と必要な物を買いそろえることが出来ましたね」
「だね、でも服とか数日分しかないけど足りるの?旅って言うからもっと買うものだと思ってたんだけど」
旅というからには1週間以上かかるというイメージがあるが目的地までそんなに遠くないのだろうか。
「ん?ああ、そういえば知らないんでしたね。」
といいカバンから薄汚れた布を取り出した。
「なにそれ?汚いしなんか少し臭いんだけど...」
思わず鼻を手で覆う。
「これはトロルと呼ばれるモンスターの腰布です。見ての通り汚いですし臭いですよね、これにとある魔法をかけます。」
というと右手が光り始め一言
「ウォッシュ」
と唱えるとかなり汚れていた腰布が一瞬にして真っ白になり匂いすらも消えてなくなってしまった。
「あんなに汚れてたのに...」
「今見てもらったように私たちは色々な魔法を使うことが出来ます。ついでにこのかばんにも魔法がかけられていて
いくらでも物が入るようになっているんですよ?」
背負っていたかばんの中を見せてもらうと黒い虚空が広がっていた。
さっきから武器やらなにやらどこにしまっているんだろうと思っていたがここに消えていたんだな。
「という訳なのでおしゃれをするために服を買う事はあっても、旅用に服をわざわざ買うことはないんですよ」
そんな魔法があるならわざわざ洗濯をする必要はないし服も量がいらないわけだ。
しかしそれよりも大事なことを聞かなければならない。
「ねぇ、僕も魔法って使うこと出来るの?」
「どうでしょうね?さっきのは生活魔法と言いこちらの人はみな必ず使うことが出来るのですが...
異世界から来たあなたが使えるかは分かんないんですよ。」
「そうなんだ、僕も使えればいいんだけどな」
向こうの世界には魔法なんてものはないため全人類の夢と言っても過言じゃないだろう。
「それではかなり先ですが旅の途中に神殿のある街に寄ってみましょうか。
そこまでいけば魔法の適性を調べてもらえると思いますので」
「僕としてはうれしいけどいいの?寄り道になっちゃうんじゃ...」
「いいですとも。あなたには強くなってもらわないといけないのと、ゼウスも今は傷を癒している最中で今すぐ襲ってくるわけではありませんし。」
強くならないといけないのは分かってるけどそんなにすぐ強くなることはできない。
「女王様も言ってたけどどのくらいの期間で傷が癒えるの?深手って言ってたから相当時間がかかるとは思うんだけど」
「一応治療に予測されている期間としては半年くらいですね。しかしゼウスといえどリハビリなども必要でしょうから多く見積もって一年くらいでしょうか?」
「それじゃあ結構時間はあるんだね」
「話だけ聞くと結構余裕があるように感じはしますがあくまで予測です。早ければ早いに越したことはありません」
「それもそっか、それじゃあ頑張らないとね」
長い事歩いているがだんだん建物と人通りが少なくなってきている。
「そういえばこれどこに向かってるの?だんだん人がいなくなってきてるんだけど...」
「あ~、そういえば言ってませんでしたね。旅をするにあたって歩いていくとどれだけ時間がかかるかわからないんで馬車で移動しようかと思いまして。馬車を取りに向かっているんですよ。」
「ん?」
乗らしてもらうじゃなくて取りに行く?