8話
「さてさていつもの様にフラれたことですし、気を取り直して旅の準備でもしましょうか」
あっけらかんとした態度でそう声をかけてくる。
旅の準備をするのはいいが問題が一つある。
「僕この世界のお金を持ってないんだけど...」
着ている服だけが持っている全てであり、荷物もなく無一文で城下町に連れてこられているのだ。
「そのことでしたら問題はありませんよ、元より王妃様よりお金をもらっていますので」
と背負っていた大きなバックから何かの皮で作られたであろう巾着袋のようなものを取り出し渡される。
「その袋の中に最低限色々なものを揃えられるだけのお金が入ってます。」
「そうなんだ、申し訳ないな...」
まだ何もできていないのにお金をもらうことになるとは。
「女王様にお願い事をされたのでしょう?それの手つき金と考えればいいのでは?」
信頼のない人に手つき金を渡すことは稀のはずなんだけど...信頼にこたえて頑張んなきゃな。
「それにそんな服では目立ってしまいますし、武器や日用品も必要ですからね。買い物に行きましょうか!」
「私と姫様は別行動します。あなた達特にルッツに見られたくありませんので」
「分かっていますとも!来たるときにしか見せたくないという乙女心ですよね!分かります!」
等とルッツが暴走している間にロジェとレナは無視して買い物に行ってしまった。
ルッツと二人か...大丈夫かな?
商店街に向かいこの世界で着ていても違和感のない服や下着をを数着ずつ買い、歯を磨くのに必要なブラシや爪切りなど日用品を買いそろえて行き、最後に鍛冶屋へと向かう。
「どうも~ダレンさん!」
ドアを開けるなり気軽に恰幅のいい店長であろう人物に話しかける。
「おお!ルッツじゃねえか、どうしたんだこんなところに!」
「お久しぶりです。今日は彼の装備を整えに来たんですよ」
「こんにちは、よろしくお願いします」
「ほーん、この子がねぇ...武器は何を使うんだい?」
そんな事決めてなかったけどどうするんだ?ちらっとルッツの方を見るとニコッと笑い
「とりあえず標準的な武器一式貰ってもいいですか」
「おいおい、うちとしちゃあありがたいが大丈夫なのかい?」
「ええ、まだ彼がどの武器に適正あるか分かりませんし使わない分は中古品として売れますから」
「なら問題ないな!んで?防具の方は?」
「そうですね...彼に合う軽めの防具を見繕って貰えますか」
「あいよ、準備するからちょっと待っててくれよ!」
彼が準備をしているうちに
「そんなに買ってよかったの?お金が足りないんだけど...」
「大丈夫ですよ、これに関しては僕のサービスです。」
「だとしてもあんなに買う必要はなかったんじゃ?」
「実際武器というのは使ってみない事には適性があるか分かんないんですよ。適性がないのに使い続けるというのは時間の無駄です。なら適性を調べるために標準的なものを買って適性を早いうちに見つけたほうが後々楽ですし、結果安く済むんですよね」
「そうなんだね、分かった。ありがたく使わせてもらうよ。」
「ええ、そうしてください」
等と話していると
「お~い!そこの君!防具の試着をしてくれ!サイズの調整をしなくちゃならんのでな!そんでルッツ!そこの棚から必要な武器を選んでってくれ!」
「分かりました。幸喜君行きましょう。」
ルッツが武器を選び終わる頃、装備の試着が終わり少しサイズが大きかったため自分に合うように調整してもらう。調整が終わりカウンターへと戻ってきてから支払いを終え受け取り店を出る。