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丘崩し

 すやすやと眠っている山……ではなくマウンテンボアという名の巨大なイノシシモンスターを見据える。明らかに序盤に出てきてはいけない推定ボスモンスターと目算10mくらいの距離に立っているだけなのに体が高ぶっているのがわかる。こいつを倒せるか倒せないかで私の輝かしいゲームライフwithリオの未来が決まるといっても過言ではないのだから当然だ。


 そしてこんな逆境は久々だからなによりテンションが上がる!


「アースバインド。そしてぇ、強制進化!」


 強制進化を発動した瞬間、鱗のようなエフェクトが全身を包む。1秒あるかないかで鱗のエフェクトは解け、目線がグッと高くなる。竜族と言っても装備から覗く手足を見るに、鱗のようなものはあるものの人型を守っているようで少し安心した。


 ついでにとうっていたバインドはでイノシシを拘束できず、ただの挑発となっていた。イノシシは私を見ながら「ブフォォッ!」と鳴き、前脚で地面を掻いた。後ろ脚が大地を蹴り、それによって土が剥がれ草が宙を舞う。その細かな演出を為す技術力に脱帽し……ている暇はなく、咄嗟に横に跳ぶ。


「あれっ!ぶべぇ」


 突進自体には掠りもしなかったけど思っていたよりも私が跳ぶせいで思いっ切りコケた。ゆっくり立て直す暇を怒ったイノシシが与えてくれるはずもなく、方向転換を終えたイノシシは既に猪突猛進を開始している。


「ちょっとくらい余裕が欲しい!」


 急いで起き上がり今度は垂直にジャンプする。


 私が倒れていた辺りを岩の様な鼻を突き上げるようにして地面を抉っていた。イノシシの攻撃として突進後に鼻を突き上げるような攻撃は定番だが、どう見ても一撃必殺のようなその威力につい身震いする。


「ゲームだと分かっててもあれは受けたくないね」


 地面から浮いてイノシシの上にあった体は、重力に従いその広い背に着地する。生き物の背に乗っているのか疑問を抱くレベルに硬く、本当は地面に着地したのかと錯覚してしまえる程だった。


「これって殴る蹴るでどうにかなるの?まぁ、やるしかないけど」


 この図体の大きさだと背中にいるやつの対処なんて出来ないでしょ、てことで取り敢えずラッシュ!鎧の様な筋肉に岩の様に硬い皮膚や毛だけどそれ以上に私のほうが強いらしく、殴られ凹んだ箇所から血のようなポリゴンエフェクトが漏れ出ている。確かに手応えはあるけどここじゃないな〜、と考えながら殴っていると。


「あっぶない」


 背を殴られ混乱していたイノシシが急発進する。背中にしがみついて難を逃れようとしてたけど。


「そもそもダメージ入らないから無理に乗る必要なくない?」


 毒にも薬にもならない現状を再確認し、大人しく手を放して地上に着地した。


「う〜ん、背中は殴りやすいけど有効打にならない。なら次は脚?脚も同じくらい硬かったら終わりだけど、賭けようか」


 脚を狙うなら動きが完全に止まる瞬間、つまり突進後の硬直。簡単な作戦が脳内で出来上がり、同時にイノシシも突進の準備をしている。


 余裕で避ければイノシシはカーブして止まらずにそのまま走ってくる、しかし迫る寸前で避けると例の振り上げ攻撃がくるはず。だから寸前で、判断を誤らせられれば良い。


「来い!」


 自身への鼓舞を兼ねてイノシシを挑発するとまんまと走り出た。タイミングを計れ、あいつが頭を振ろうとする距離を……まだ…いま!


 タイミングよくバックステップをしたことでイノシシの鼻は眼前で空へと向かい、私は攻撃する隙を得た。


「次は私の、番っ!」


 大振り渾身の一撃はイノシシの左前足を捉え見事にクリティカルヒットした。

 どうやら背中の防御が異常に高いだけだったらしく、足には比較的まともにダメージが入った。具体的に言うと、殴ったイノシシの足から赤いポリゴン漏れ出るくらいにはダメージが見て取れる。正直ここまで効くとは思ってなかったから諦めかけてたけど……。


「いけるね、これ」


 左前足を殴られた事で苦しそうな雄叫びをあげるイノシシを見てつい呟いてしまった。


 そこからは一方的だった。猪は前足を折られたことで上手く走れず、鼻や牙で攻撃しようとしても勢いは無いく当たりもしないので、簡単に殴り続けることが出来た。


 そして私は……変身が解ける前に通常モンスター「マウンテンボア」の討伐を完遂できた。


 ……みなまで言うな。私も戦いながら、意外と……とか思ってたけど。まぁ何はともあれ現時点での強敵に勝ったことには違いない。


 何かが砕ける様なエフェクトが視界を遮り、強制進化の効果が終わったことを悟る。もちろん砕けるエフェクトに伴って目線はグッと低くなり、同時に体中がとてつもなく怠くなった。この症状が代償だろうかとステータスを確認すると、思った通り様々なデバフアイコンがずらりとパレード状態だった。


「竜玉に書いてあった不穏な文句ってデバフのことだったんだ。何々、MP以外のステータス減少と倦怠、脆弱、移動速度低下……他にもまだあるな、確認するのも怠くなるくらい」


 あとは街に行ってリオと合流するだけだから大丈…じゃない!リオと心躍る冒険する予定だったじゃん!後何秒で解除されるの……1時間。


「ぎり終わったか?」


 ただでさえ1日待たせてるのに……、いや、こうやってダラダラ考えるほうが悪いし勿体無い。リオってなんだかんだ言っても優しいし、それに街でデートができる口実ができたと思えば尚良し。


 いざ、デート(いくさ)へ!

お読みいただきありがとうございます!

面白ければ是非評価、コメントをお願いします。


2024/04/07 全体的に修正(話の流れは変わらない)

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