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アズの初戦闘

 (まぶた)を持ち上げればそこには広大な草原が広がっていた。


 No.16(ナンバーイチロク)が既に居ないことからチュートリアルすら飛ばされたことが一目瞭然となっている。次会ったら確実に殴ると決意を新たにし、目の前に控えるスライムを見やる。チュートリアルでの出番すら奪われて可哀想に、私が介錯してあげよう。


 木の枝を手に持ち、構える。

 ここで何らかの違和感を抱く、木の枝のことじゃない。確かに、木の枝を武器ですと堂々と出されたら流石に「祠から目覚めたばかりなのかな?」って感じだけど、そうじゃない。


 手そのものが小さい気がする、それに地面も心なしか近い気が……。


「えっ」


 うえ゛ぇ?驚き過ぎてもはや自分の発した声にすら驚いてる。めちゃくちゃ声高いんですけど!子供の頃の声をもう少し高くした感じの。言葉を選ばず表現するなら、ロリみたい!


「すーはー」


 深呼吸をし、冷静になる。OKわかった、どうやら私は想像していたよりもよっぽど大ハズレを引いてしまっていたらしい。

 一旦無駄話は置いといて、まず目の前のスライムから対処しよう。


 試しに木の枝を振ってみる。するとどうなるか、手応え全くなし。硬いわけじゃないのに効いているとも思えない、このなんとも言えない感触とスライムの反応で察せてしまう。

 原因の考察、といっても既に分かりきっていることで、筋力の項目が0だったのを覚えているだろうか。それだ。


 当然ダメゼロ木の枝も攻撃判定になり、スライムも臨戦態勢をとる。


 物理がだめならスキルか魔法でどうにかするしかない。

 のっそりとした突進攻撃をするスライムを視界に入れながらステータスを確認する。脳は瞬時に土属性魔法をフォーカスする。

 希望、期待を抱いて箱を開けてみれば……。


 許さんぞNo.16!


「アースバインド」


 唯一使えたのはアースバインドという拘束系統の魔法。砂粒くらいのダメージは入っているだろうけど、これで倒すのは至難の業。てか普通にMPが足りない。

 しかし本懐は動きの制限にあるため文句は言えない……、言いたいっ!


 ステータスとどれだけにらめっこしても使える手段はどれも望み薄で、しかも消去法に頼る他ない。


傀儡糸(かいらいし)!」


 右手の指から放たれたちょっと禍々しい糸はゆっくりとスライムに向かっていく。

 確率成功の上に、何ができるかも名前以上の情報がないため完全博打。駄目だったら諦めて街までトンズラだ!


「うまく行って、お願い!」


◇◇◇

ちなみに「傀儡糸」に添えられていた説明はこちら。

〈任意のMPを消費することで発動できる。

五指から放たれる糸を対象に当てることで消費したMP×0.5秒間対象を確率で自由に操ることができる〉

◇◇◇


 AzSは、スライムに糸がゆっくりと向かうのを眺めながら、どうすれば倒せるのかを考えていた。が、思いつかない。

 アースバインド使用で残ったMPは12、つまり成功すれば6秒間操れるわけだが、スライムを倒せるプレイヤーや環境を探す時間はないし、目視できる範囲にも見当たらない。


 そうして考えているうちに、禍々しい糸はスライムに巻き付く。

 スライムは抵抗をやめた。


 「自由に操れる」、それはつまり生殺与奪の権を握ると同義なのではないだろうか。


 これは傀儡糸使おうとした段階で期待したこと。あんまり格好がつかなくて他の方法を模索したけど妙案浮かばずなんで。


「死ね」


 口にした直後、スライムは不自然に停止し、毒々しいエフェクトを残して消えた。

 ……どうなったか、なんて考えるまでもないか。


 取り敢えず。


「うまくいった〜!」


 「この手のゲームのプロだから!キラ」とか、リオに豪語したのに初戦敗走、とかいう笑えない結末にならなくて良かった!


 安堵しながらステータス画面を開く。あわよくばレベルが上がってたりとか、新しい魔法習得してないかなとか、RPGにおける至福の時間だよね。

 あれ、一応今スライム殺したよね一応……。なのに経験値入ってないが?!


 ショックな衝撃で街に向かっていた足が止まる。なんなら膝と手もついちゃうサービス仕様。


(傍から見たらおもちゃ買ってもらえなかった子供みたい…)


 経験値が入らかなかった理由はこの際どうでもいい。ここでいちいち追求してたら話のテンポが悪くなる。今考えなければいけないのは次の一点のみ。

 「この惨状状態のままリオに会っていいのだろうか」である。

 

「嫌だ!こんな姿、見られたくない!」


◇演出上の読みづらさ


 2人プレイならば助け合えばいいじゃないか、とかそんな単純な話じゃない!確かにリオの彼女まだ()()()!お嫁さんとしては助け合う、つまり「“共同作業”」というありふれていながらも魅力的な四字熟語は、非常にとても凄く求めているものではあるが、しかし、しかし私は「リオの嫁」、でありながら1人のゲーマーでもあるのだ。これまでのゲーマー人生で培われてきた一種のプライドが例外なく私にもある。このままリオに会えばきっとあらぬ誤解を与えてしまう。リアルでならあざとい系の言動もリオが好きならばマスターしてやってみせよう。だがしかし、ことゲームにおいてあざといを持ち出すなど、前述した私のゲーマープライドが許さないのだ。わざわざあり得ないシナジーの武器と職を一緒に使う、明らかにおかしなスキル組み合わせ。まあそういうものに一定の需要があることは否定しない、ゲームとは、自由を遊ぶことこそを目的とするものだ。でも、初心者に対して経験者が一番最初に見せる背がそれでは引かれないだろうか。ましてこれから一緒に遊ぶゲーム仲間に何の断りもなくするのは失礼に当たるのではないか。個人の見解ではあるのだが、これではあざといではなく邪悪の類だ、と私は考える。既に冗談のような状態ではあるがまだ挽回出来るはずだ、ゲーマーならば少しコケたくらいで諦めてはいけない、あるいは諦めない人種なのだから。と、長々と持論を展開させてもらったのたが、つまり何が言いたいかというと、「一狩り行こうぜ」だ。


◇この間0.8秒


 と少し考えた後に、リオにはキャラメイクに時間をかける、と言っていたことを思い出した。

 それにより罪悪感を多少軽減した状態で進むことができる。

もう一話だけソロなんじゃよ、


見てくださりありがとうございます!

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