地獄の入口
大都市近郊の住宅街に、玄関の施錠をほとんどしない家がある。
時々泥棒が入るが、入ったら出られない。
泥棒が玄関からさらに中へ入ると…
それを感知して、瞬時に作動するスプレーが天井に付いている。
噴射されるのは強力な睡眠薬で、作用が数日続く。
昏睡状態の泥棒は、家の人がすぐに「棺桶」へ入れ、それが軽ワゴンに積まれる。
深夜以外は、そのクルマがさらに郊外の「ある工場」へ向かう。
工場で行われているのは、「新薬」の治験。
人体実験と言うほうが合っている。
「新薬」とは…
いろいろな化学兵器。
もっとはっきり言うと、致死性の兵器。
この工場に運ばれると、生きて出ることはできない。
その前の、「施錠されていない家」が、既に地獄への入口。
この家に住む、いつも作業服の男。
素性は…
「人体実験工場」の「経営者」は…
警察も知らない。
きょうも「棺桶」を積んだ軽ワゴンが、いつものコースを走る。
家では別の住人が「獲物」を待っている。