敵襲
「あまい!」
森の中から射られた矢をはたき落とす。
「今度はこっちからだ」
1ヶ月間の修行によって索敵魔術の精度は格段に向上している。相手の位置が明確にわかる。そこに狙いを定めて魔力を練り上げて氷塊系下位魔術を森の中へ放つ。
「ぎゃっ」
短い悲鳴の後に何かが倒れるような音が聞こえる。命中したようだ。
『ふむ。多少なりとも修行の成果が出ているようだな』
よし、リバス様も認めてくれている。残りの敵は4人といったところか。ここは攻めよりも守りを主体に戦ったほうがいいだろう。下手に攻め込むと洞窟内に侵入されてしまう危険性がある。
『くるぞ!』
リバス様からの忠告の直後、森から4人の人影が横一列に並んで飛び出してきた。一気に片をつけるつもりのようだ。
全員が全く同じ服装をしている。警備隊の隊服なのだろうか? 黒い衣服の上に黒いベスト、肩・肘・膝の各部位を守るパッドも黒色。まさに全身が黒ずくめだ。
両端の男がそれぞれ左右に別れて魔力を練り上げる。中の二人はそれぞれ剣を手に真っ直ぐに向かってきた。
左端の男が魔力を放出してボクの周囲に濃霧を発生させて視界を遮った。濃霧魔術だ。この魔術の対処法は風系の魔術で霧を吹き飛ばすのが一般的だとトゥナムは言っていた。しかし、索敵魔術で相手の位置と動きが手に取るようにわかるのでその必要はない。
ボクは真っ直ぐに近付いてきた二人が同時に振り下ろした剣を大賢王の杖を使って弾いた。
「なっ!?」
「ばかな!」
攻撃が失敗におわった二人の男の言葉から焦りを感じ取れる。こんな時こそ反撃のチャンスだ。ボクは後方へ飛び退くと左手で魔力を練り上げて発生させた雷撃系下位魔術を左の男にくらわせる。
右側の男は、絶叫をあげて絶命した仲間を見て顔色を変えた。恐怖から体が強張っている男を大賢王の杖で殴り付ける。常に一定量の魔力を帯びている大賢王の杖は打撃武器としても非常に強力なのだ。頭部を殴打された男はあっさりと気絶してしまう。
さて、残りは左右に展開した魔術師だ。
「くそが!」
右端にいた魔術師が火炎系下位魔術を3つ発生させて同時に放ってくる。防御魔術が間に合いそうもないと判断して、さらに後方へと後退りして時間をかせぐ。それと並行して魔力練る。前方からの魔術攻撃を防御魔術する時間をかせぐことに成功した。
「危ない、危ない」
間一髪で火球を防ぐ。
すかさずに反撃にでる。《俊足》で一瞬にして左の魔術師の背後をとったボクは、相手に振り向く暇も与えずに大賢王の杖で殴り飛ばす。
「ひっ」
最後に残った魔術師の男は顔を引きつらせている。
「まだやるつもりなら相手をするけど、どうする?」
杖の先端を突き付けられて男は両手を上げて降参の意思表示をした。
「なら、さっさと帰ることだね」
「ああ!」
助かったと知った男は一目散に森へと姿を消した。
「ぎゃあ!!」
直後、逃げ出したはずの男の絶叫が聞こえてきた。何事かと森のほうを凝視する。微かに何者かの気配が感じられる。
「今度は誰だ? 隠れてないで出てきたらどうだい?」
未だに姿を見せない人物に話しかける。
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