会合に向けて
「おかえり。遅かったから心配してたんだ」
洞穴に戻ったボクをトゥナムが出迎えてくれた。
「ごめん」
「いや、君が無事だったなら問題ない。それよりそれが?」
大賢王の杖を視界にとらえて訊いてくる。
「ああ。大賢王の杖っていう物らしいんだ」
「さすがはランツァ村長だね。まさかそんなすごい品物を所持していたなんて驚いた。村長がルベタにならと託した物だ。大切にするといい」
「この杖のことをトゥナムも知ってるのか?」
「ああ。遥か昔に伝説の魔術師が使っていた物だとされている。もっとも実物を見たのは初めてだがね」
伝説の魔術師か。本当にものすごいお宝なんだな。そんな貴重な物をボクは託されたんだ。それに恥じないように強くならなきゃ!
「ところで、ルベタ?」
トゥナムの声に我に返る。
「戻ってきた時、口元がにやけていた気がしたんだけど何かあったのか?」
えぇっ!? 表情に出てたのか……。今さらながらなんだか恥ずかしくなってきた。
「あ、ああ……そのことか……。実はレミィに会ったんだ……うん……」
ドギマギしながら答える。
「レミィ? チセーヌに住んでた子だったか」
トゥナムもレミィのことを知ってるのか? いくら元フォラス領主だからって島民の全て把握しているはずがないぞ。
「レミィを知ってるのか?」
「ああ。領主としてフォラスの視察に来た時にランツァ村長と一緒に案内してくれたのが彼女だったんだ。その時、わたしと同行していたリゲックは随分とレミィのことを気に入ってたようだが、全く相手にはされてなかったみたいだったな」
懐かしそうに話すトゥナム。そうか。その時にリゲックはレミィに目をつけたんだな。
「その後、リゲックはレミィを屋敷に奉公させると言い出したんだが…、あの時は止めるのに苦労させられたものだ。剣まで持ち出してくるとは驚かされたよ。しかし、どう考えても彼女にとんでもない迷惑をかけることになるのは明白だったからね。それに、兄として弟の愚かな行動を抑止する義務もあったというのも理由の一つではあるな」
『愚弟をもつとなにかと苦労するものだな。我の場合は肉体を共有してる故に途轍もない苦労を強いられておるわ』
おいおい、ボクとリゲックを一緒にしないでほしいな。
「さて、話を戻そうか。そのレミィと会ってどんな印象を受けたかね? 例えば、スヴェインに肩入れしているとか…」
「レミィは信用して問題ない」
ボクは自信を持ってはっきりと答え、さらに話を続ける。
「現在、スヴェインの手からフォラスを解放するために結成された解放軍を支援してるそうだよ。それで、ボクも協力してほしいみたいなんだ」
「へぇ。解放軍が組織されているのか……。それで君の返答は?」
「保留にしてある。トゥナムの意見も聞きたかったからね」
「なるほど。それは賢明な判断だった。次はいつ会うことになってるのかね?」
「明日の昼、チセーヌにあるレミィとポポルの家で会う約束になってる」
「そうか……」
俯いて顎に手を当て何か考える仕草をするトゥナムだったが、暫くすると顔を上げた。
「わたしが待ち合わせに行くとしよう」
「はあっ?」
何を意図しているのか理解なかった。
「やはり、解放軍全体を信用するのは危険だと言わざるを得ない。彼女にしても知らず知らずに利用されている可能性も考慮しておかねばなるまい」
たしかにそうだ。ボクはそのことを考えもしなかった。自分の思慮の足りなさを痛感させられる。
「そこで、まずわたしがレミィたちと直接会う。ルベタには《不可視》で姿を消したうえで少し距離をとって同席して周囲の警戒にあたってほしい。万に一つにも敵の罠だった場合に備えておきたい」
「わかった。トゥナムとレミィは何があっても守ってみせる」
「ふっ……。その気持ちは有り難いのだが無茶はしないでくれたまえ。スヴェインたちとの決戦に君の力は不可欠なのだから」
「ああ、そっちも任せてくれ。個人的にもスヴェインとは決着をつけたいと思ってる」
「そうだったな。大いに期待させてもらうとしよう」
その後、ボクたちは持参してきた食料で食事を済ませた。
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