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魔王様の大冒険  作者: 美山 鳥
第2章 フォラスの独裁者
8/306

ピラックの港②

改稿済みです。

 「おぉ~、ここがピラックの港かぁ!」


 「なに言ってんだ? この島には港はここしかないんだ。おまえも船に乗って来たんじゃないのか?」


 物珍しげに辺りを見回すボクにポポルは怪訝けげんな表情を向ける。そうだった。ボクは冒険者ってことになってたんだ。


 「本当に冒険者なのかよ?」


 まずい。思いきり怪しまれている。


 「実はこの島へは流されてきたんだよ。だから、この港へ来たのは初めてなんだ」


 「流されたって、どうしてさ?」


 なんとかごまかそうとするボクに更なる質問が浴びせられる。


 「ある連中と戦って敗けたんだ。それで海に落ちちゃってさ。いやぁ、参ったよ……」


 「ある連中って?」


 ポポルの尋問はなおも続く。


 「ええっと……それは答えたくないな。誰だって自分を負かした相手のことを言いたくないんじゃないかな」


 「そんなもんか? まぁ、いいや。ルベタに興味なんかないしな。そんなことより用事をとっとと終わらせようぜ」


 だったら、最初から聞かなくてもいいじゃないか。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「おっちゃん!」


 港の波止場に近い立地に建っている小さな店にやって来た。


 ポポルは店主らしき人物に声をかける。


 「おぅ! 来たか、ポポル。レミィ嬢ちゃんの作る品物は評判がいいからな。もちろんそれなりの値で買い取らせてもらうぜ」


 大柄な男はそう言って荷台に積まれた野菜や小物を品定めする。


 「へぇ、露店で売るんじゃないんだな」


 ボクは露店でも開くのかと勝手に思い込んでいた。最悪、客引きでもやらされるのかと覚悟していたけど、杞憂きゆうだったようだ。


 「自分たちで売れば利益は上がるけど、厄介なことが起こったりするからさ」


 ポポルの表情が暗くなる。


 「厄介なこと?」


 「オイラみたいな子供が店を出せば、ならず者たちが来て嫌がらせするんだ!」


 ポポルは拳を握りしめて悔しさに目を潤ませる。


 「警備隊とかいないのか?」


 「あんな奴らなんか頼ったって無駄さ」


 「どうしてさ?」


 「よそ者の、しかも魔族には関係ないだろ!」


 ポポルは、吐き捨てるように言うと離れていってしまった。あまり触れられたくないのだろう。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「よし、今回はこの値でどうだ?」


 見積りを終えた店主がポポルに明細と買取金額を書いたメモを見せる。


 「オッケー。これで買い取ってくれよ」


 「よぉし、商談成立だな!」


 店主は現金をポポルに渡すと店員に指示をだして荷物を運び込ませる。荷台の上に積まれていた野菜やら小物がみるみるうちに消えていく。


 「ところで、今日は見馴れない奴を連れてるじゃねぇか」


 店主がボクに視線を移してきた。軽く会釈を返す。


 「昨夜、迷い混んできたから泊めてやったんだ」


 迷子の小動物を保護したみたいな言い方だな、おい。


 「ほぉ、なかなか立派な剣を持ってるみてぇだし、レミィ嬢ちゃんの用心棒なのかと思ったぜ」


 「こんな奴、信用できるもんか!」


 本人を目の前にしてはっきりと言うポポル。モンスターに両親を殺されたんだからしかたない。だけど傷つくよなぁ。


 一方、店主はボクの顔から視線をはずさない。まるでなにか探っているかのようだ。


 「それにしても、魔族を泊めるとはさすがはレミィ嬢ちゃんだな」


 「姉ちゃんのお人好しにも困ったもんさ」


 店主は、ため息をつくポポルの頭をワシャワシャと豪快に撫でる。


 「そう言うな。困ってる奴を種族に関係なく助けるのは立派だ。誰にでもできることじゃねぇぞ」


 「それはそうだけどさぁ……」


 口ごもっているポポルの肩に手を置いて、店主は続ける。


 「まぁ、そんなレミィ嬢ちゃんを心配するポポルの気持ちもわかるがな!」


 それから、今度はボクに話を振ってきた。


 「ところでよ、おまえさんは冒険者か?」


 「はい」


 「いつまでこの島に滞在するつもりだ?」


 「そのへんのことは何も決めていないんですよ」


 店主はボクを見つめたまま、あごに手を当てる。


 「そうか。俺はラルバンってんだ。ここで会ったのも何かの縁ってやつだろうよ。よろしくな! それから普通に喋ってくれ。そのほうが気楽でいい」


 「わかったよ。ボクはルベタ、よろしく」


 差し出された手を握り返す。握手を交わしながらラルバンはニカッと笑ってみせた。


 「そんじゃ、ありがとな。おっちゃん!」


 「おぅ、レミィ嬢ちゃんによろしくな! ……そうだ、ちょっと待ちな」


 ボクがポポルを乗せた荷台を引こうと手をかけた時、ラルバンが呼び止めた。


 「なんだよ、おっちゃん」


 荷台のポポルがラルバンを見る。


 「いやな、最近、リゲックが妙な連中を雇い入れてるもんだから、気をつけたほうがいいんじゃねぇかと思ってよ。あいつ、レミィ嬢ちゃんに付きまとってるそうじゃねえか」


 「リゲックが……」


 ポポルが表情を曇らせる。


 「おうよ。最近は傭兵も雇用してるみてぇだ。ただのならず者とは訳が違う。戦闘で金を稼いでるような奴らだからな」


 「わかった。サンキュー」


 「おぅ、気をつけて帰れよ!」


 大きな不安を抱えたままラルバンと別れる。


 ボクとポポルはレミィさんの待つ家へと向かった。

次話は2022/4/9(土) 20:00更新予定です。

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