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魔王様の大冒険  作者: 美山 鳥
第6章 裏切りと捕らわれた魔王
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ルベタ救出

 「なかなか……しぶといですね…」


 スヴェインがショートソードから滴る鮮血を払い飛ばす。ボクをなぶり殺しにするつもりなのだろう。致命傷にならないように全身を斬りつけていた。


 「処刑人のほうが……息切れして、どうするんだ?……それとも……年かい?」


 「言ってくれますね。そのような強がりを吐く気力があるとは大したものです。……だからこそ、殺し甲斐があるというもの!」


 「ぐあぁぁぁ!」


 ショートソードがボクの右胸に刺さる。防御魔術ガードの影響で貫通はしないが激痛がはしる。


 「くはははは……。いっそのこと防御魔術ガードを解けば楽になれるものを」


 「それじゃ、おまえに復讐できないじゃないか」


 「まだ、生きてここから出られると考えてるのですか? そんな希望がどこにあるのでしょうかねぇ?」


 「ここにある!」


 愉しげに話すスヴェインだったが、突然現れたオーガの不意打ちを避けることができず、吹き飛ばされて壁に激突する。ボクの処刑に夢中で気づかなかったのだろう。


 「ガボ!?」


 ボクは突如現れた救世主に希望を見た。だが、その姿は満身創痍まんしんそういで、今にも倒れそうだった。それでも、ボクを拘束している鎖を引きちぎってくれた。


 「助かった! すぐにここから出よう」


 「ルベタ、先に脱出する。おで、後から行く」


 スヴェインは殺気をほとばしらせてボクとガボを睨めつけてきた。二人とも生かしては出さないという強い意思が伝わってくる。


 「バカ言うな! 一緒に逃げるんだ!!」


 「どっちも逃げるの、無理! ルベタ、先に行く。待ってる人、いる。早く行く。時間、ない!」


 『行け! こやつは自らの意思でこうしてるのだ。それに、おまえがここに残ったところで状況は変わらん。冷静に考えろ。貴様をわざわざ助けにきたこやつの思いを無駄にするつもりか?』


 リバス様に諭され、ようやく決心が固まる。


 「わかった……」


 「させるかぁ!」


 怒りが頂点に達したスヴェインが《俊足》を使ってガボに急接近してショートソードを振り下ろす。ガボの左腕が切断されて床に落ちる。


 「ガボ!?」


 「ぬがぁぁ!」


 ガボは大蛇の変化して素早くスヴェインの身体に巻き付く。怒りで冷静さを欠いていたスヴェインは反応が遅れて拘束される。


 「放せ! 死に損ないが!!」


 身体の自由が奪われ苛立ちを隠せない様子のスヴェイン。


 「いちばん近い入り口、使って早く行く!」


 「……くっ!……」


 今、攻撃できる武器があればスヴェインを倒して二人で脱出できるのに!! 丸腰の自分が歯がゆく、ガボを残していくことに対しての罪悪感が重くのし掛かってくる。それでも、行かなきゃいけないんだ。


 ボクは地下室を飛び出した。できるならガボと一緒に残って戦いたい。だけど、今のボクはあまりに無力だ……。


 いちばん近くの入り口を使えって言ってたな。だったら、物置部屋のことに違いない。だけど常に施錠されているときいたんだけど……。いや、今はガボの言ったことを信じよう。


 全身にはしる激痛に耐え、よろめきながらもどうにかトゥナムから聞いていた物置部屋の前まで来る。周囲に誰もいないことを確認して慎重にドアノブを回す。施錠はされていなかった。ゆっくりドアを開けて室内に入るとすぐに静かにドアを閉める。


 室内は真っ暗で何も見えない。そこで《暗視》を使用することにした。ぐずぐずしてはいられない。ガボが命懸けで作ってくれたこの時間を一秒だって無駄にはできない。


 中は大小様々な荷物が置かれている。まさか洞窟への入り口が塞がれているなんてことはないだろうな。今のボクにそれを退かす余力なんてないぞ。


 「この部屋のどこかに入り口があるはずなんですよね」


 『うむ。可能性的に高いのは床であろう。さて、問題はそれがどこなのか。時間が惜しい。とりあえず行動するべきではないか?』


 「そうですね」


 リバス様の助言に従う。軽く叩いてみたり、押してみたり、怪しい所がないか注意深く探ってみるが何も発見できない。体力も限界に近い。


 「困った……。このままだと本当に……」


 「その声は、もしかしてルベタか?」


 万事休すと思われた時、どこからかトゥナムの声が聞こえてきた。


 「トゥナム、なのか?……」


 「ああ。よかった! 無事だったんだな。ガボもそこにいるのか?」


 「いや、いない。ガボはボクを逃がすために……」


 「そうか……。とにかく今、出入口を開けよう」


 壁の一部が上にスライドしてトゥナムが姿を見せる。


 「さぁ、早く中へ!」


 「……やっぱり、行けない。ボクがそこに入れば血痕を追ってきたスヴェインに見つかるよ…」


 「それなら心配いらない」


 トゥナムは隠し通路から室内へと入ってくると、スライドした壁の下に鉄製の棒を立てる。これによって壁は閉じることがなくなったわけだ。次に懐から布を取り出すとボクの身体から血液を拭き取る。


 「何をしてるんだ? そんな事してる場合じゃ…」


 「いいから任せたまえ」


 トゥナムはボクの言葉を止めて、赤く染まった布を自らの両手と衣服に擦り付ける。それから別の壁を触り始めた。


 壁がゆっくりと左にスライドして奥に通路が出現する。


 「これでよし。スヴェインは君がそっちの通路から脱出したと考えるだろう」


 トゥナムは行動を終えると自分が入ってきた通路へと入るとボクを手招きする。ボクはそれに応じて後に続く。ボクが通路に入ったのを確認すると鉄製の棒を外して静かに壁を下ろす。


 「話は移動しながらだ。急ごう!」


 それだけ言って通路の奥へと足早に歩きだしたトゥナム。ボクは黙って後を追いかけるのだった。

いつも読んでくださってありがとうございます。

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