スヴェイン戦③
『ここからが正念場だな。貴様一人でも厳しい戦闘になろうというのにお荷物まで抱えていたのではな』
アークデーモンの登場に緊張がはしる。たしかにリバス様の言いたいことはわかる。村長を守りながらスヴェインとアークデーモンの両方と戦うのは難しい。だけど、やるしかないんだ!
「さぁて、形勢逆転でございますな。その足手まといの老いぼれを守りながら我々を相手にどこまでやれるのか。せいぜい楽しませていたたきたいものですね!」
スヴェインは大地を這うような低姿勢で間合いを詰めてくる。一方、アークデーモンは上空に飛び上がる。それと並行して魔力を練り上げて巨大な火炎球を作り出した。
金属音が響く。スヴェインのショートソードをボクが鉄棒で受け止めたのだ。すかさず仕掛けてきたスヴェインの足払いを跳躍してかわす。
今度はボクの反撃だ。両手で鉄棒を握るとスヴェインに向かって振り下ろした。だが、スヴェインは地面を蹴って後方へと逃れる。
「火炎系最上位魔術!」
そのタイミングを見計らってアークデーモンから巨大な火炎球が放たれた。ここは防御魔術をする。これでアークデーモンの魔術によるダメージをかなり抑えることができるはずだ。
アークデーモンは次の攻撃に備えて魔力を練り始めている。
「あっちぃ!」
火炎系最上位魔術がボクと村長を包み込む。防御魔術しているのにこれだけのダメージとは恐れ入る。
休む間を与えてはくれない。火炎系最上位魔術の火炎が消え去った直後、ショートソードの刃先がボクの喉を目掛けて突き出される。
「うおぉぉ!」
《剛力》で腕力を上げ、鉄棒でショートソードを弾き飛ばす。武器を失ったことで接近戦は不利とみたスヴェインは後退する。
「火炎系上位魔術!」
上空から無数の炎の矢が放たれる。防御魔術でダメージは軽減しているとはいえ強力だ。
「わしのことはいい! ルベタ殿だけならば逃げられるはずじゃ!」
「悪いね、村長。話ならこの場を切り抜けてからにしてくれ!」
今、村長と言い合ってる余裕は皆無だ。村長を見捨てる選択肢など最初から考えていない。だけど、この状況をどうにかしないことには勝機を見出だすことも難しい。
「よし、一か八かだ!」
この圧倒的に不利な状況を変えるべく賭けにでることにした。スヴェインがショートソードを拾いに行く隙ができたため、アークデーモンとの連携が途切れる。これを利用しない手はない。村長を抱えて海へ向かって駆ける。もちろん《俊足》は全開だ。
「逃さぬ!」
アークデーモンが放った神風系中位魔術を直撃寸前のところで前方へと跳び跳ねてかわし、転落防止のために備え付けられた柵を踏み台にして空中へと身を躍らせた。
「痛っ!」
背中に痛みがはしる。見ると針が刺さっていた。どうやらスヴェインが投げたもののようだ。大したダメージではない。村長にも同じように針が刺さっている。
「なんじゃ、これは? ルベタ殿は大丈夫か!?」
「ああ、これくらい平……気……さ……」
……なんだ!? 急に破壊衝動が沸き上がってくる。まずい! 今はまだ理性を保てているがこのままだと村長が危険だ!
『あやつめ、針に何か仕込んでおったか。足手まといのジジイなどどうなろうとかまわんが、奴らの思惑通りになるのも気に入らんな』
「ガボ!」
ボクが叫ぶと大鷲に変化したガボが姿を現して近付いてくる。それを確認して少々乱暴ではあるが村長を放り投げる。宙を舞う村長をガボはキャッチした。
「ルベタ!」
「ボクはいい! 早く……行けぇ!!」
正直なところ理性を保っているのも限界が近い。ガボは戸惑いながらも村長を掴んだまま海中へと潜っていく。
「ククク……。まだ理性があるとはさすがは魔王ですな。しかし、それももう限界でございましょう? さぁ、そのままチセーヌでもピラックでも、どちらでもかまわないので襲撃するのです。そうすれば、あなたが凶悪な魔王であると誰もが疑わなくなるでしょう。これにて我々の目的は達せられましたので失礼いたします」
それだけ言い残し、スヴェインは付近の森へと姿を消す。アークデーモンの姿もいつの間にかなくなっていた。
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