スヴェイン戦②
「おっと」
空中に移動したボクに炎の矢が迫る。火炎系上位魔術だ。紋章を覚醒させたボクにとっては容易に回避できる。2発目3発目と射ち出される炎の矢を避けながらスヴェインの出方を探る。遠距離攻撃ばかり仕掛けてくるということは《飛行》は修得していないのか。
「小賢しい!」
スヴェインは火炎系上位魔術の狙いをボクから村長へと変更した。
「まずい!」
炎の矢が放たれる直前、村長とスヴェインの間に割り込むことに成功する。すかさず展開した防御魔術が効果を発揮した。ダメージはかなり抑えられた。ならばとばかりに再びショートソードを使った連撃が始まる。それら全てに鉄棒で捌く。
「ぬぅ!……」
ここで初めてスヴェインのほうから距離をとろうと後退する。が、今度はボクがそうはさせない。鉄棒の先端を突き出す。スヴェインはそれを寸前のところでかわす。手加減した攻撃とはいえ、敵ながらいい動きをする。
引っ込めた鉄棒を今度は左から右へと振りかざす。スヴェインが姿勢を低くしたのだ。これも空振りとなる。
「ぬぅん!」
スヴェインは立ち上がり様に斬り上げてきた。咄嗟に後方へと飛び退いた直後、ショートソードの刃がボクの目の前を下から上へと過ぎていく。
「さすがは魔王でございますな。まさかこれほどお強いとは恐れ入りました。どうですかな? そのお力をわたくしの……いえ、ダザン様の理想のためにお貸し願えませんか? 魔王を名乗っているのであれば支配下の領地を欲しているはず。ルベタ様にとっても損な取引ではないかと思うのですが?」
スヴェインは臨戦態勢を崩すことなく交渉を持ちかけてくる。
『こやつめ……』
呆れたような口調のリバス様。
「武力を持てるのなら魔王に支配されることも厭わないと?」
「ええ、かまいませんよ。異界の魔物アークデーモンと魔王ルベタ様がフォラスの戦力として加わっていただけたなら正に世界最強の国となりましょう! そうなればルベタ様が世界の頂点に君臨し、他国には服従か滅亡かの二択しかございません。その後はルベタ様の築かれた秩序によって争いのない平和な世界がおとずれるのです!!」
すごい熱弁だな……。ついさっきまで殺そうとしていた相手なんだぞ。倒すのが困難だと知るなり味方に引き入れようとするとはね。
「断る、と言ったらどうするつもりだ?」
スヴェインの眼に殺気が戻る。
「その時は、ルベタ様には最大の障害として速やかに消えていただくことになります。聡明なルベタ様ならば愚かな決断は下さないと信じておりますよ」
いや、殺気を向けながら言われてもなぁ。
「答えはノーだ。ボクは世界の頂点を獲りたいなんて思っていないし、そんな器でもない。かといって、スヴェインの強引なやり方を見過ごすつもりもない」
「ふん、やはりな。愚かなる魔王よ、あなたにはここでそこの老いぼれと共に死んでいただきましょう!」
「誰が老いぼれじゃと!」
そこにくいついたか、村長。それに、愚かなる魔王って……。さっきは聡明とか言ってたくせによく言うよ。
「出でよ、アークデーモン!!」
スヴェインが言葉を発した瞬間、空間が引き裂かれ、アークデーモンがその姿を現す。
いつも読んでくださってありがとうございます。




