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魔王様の大冒険  作者: 美山 鳥
第6章 裏切りと捕らわれた魔王
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村長救出作戦②

 人目を避けるために街道から離れた草原を領主邸へと駆ける。元々人通りが少ないため順調だ。これならもう少しで到着するだろう。


 「あのスヴェインがトゥナムが言うような悪事を本当にしたのかな?」


 『くだらん。まだそのような事をぬかしておるのか? 人間など腹の中では何を考えているやらわからんものだ。我にしてみれば、トゥナムとやらも信用できん。いや、自分以外は何者も信用するに値せんというべきか。そもそも貴様は甘過ぎるのだ』


 「そうですかぁ? ボクは普通だと思いますよ」


 『だいたい貴様がオーガのことなど放っておけばこのような面倒な問題に巻き込まれることもなかったのだぞ。手を引くならば今からでもよいのだがな?』


 「嫌です。リバス様がなんと言おうと断固として拒否します」


 『やれやれ強情なことだな……』


 きっぱりと答えたボクにリバス様は呆れているようだ。


 「リバス様だって仲間がいたんじゃないですか?」


 『我にはそのような者は必要ない』


 「でも、お城の住んでたんですよね? だったら一人ってことはないのでは?」


 『無論だ。だが、奴らは仲間などではない』


 「手下ですか?」


 『一応はな。だが、我は奴らを信用してなどいない。いつ誰が裏切るかわからぬからな……』


 「淋しいこと言いますね……」


 「貴様が甘く、浅はかすぎるだけだ」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 そんな会話をしているうちにボクたちは領主邸の近くに到着した。ピラックの港が近いためか街道にもある程度の人通りはある。ボクは《不可視》を使って屋敷へ続く丘の坂道を登っていく。


 さて、ここからが本番だ。正門の前には相変わらずゴロツキ風の男二人が見張りに立っている。まずは彼らに気付かれることなく壁を越える必要がある。見張りの死角へと移動し、足音に細心の注意を払いつつ跳躍する。さらに使用スキルを《飛行》に切り替えることで壁の向こう側に降り立つことができた。再び《不可視》を使って姿を消すと侵入できそうな所を探して敷地内を移動する。


 「はぁ、やっぱり魔族は恐ろしいもんなんだねぇ。リゲックだけならともかく、レウオさんやメルーさんまで殺したっていうじゃないか。海賊からピラックを救ったのも最初から仕組まれてたっていうじゃないかい」


 「ああ、そうさね。それで利用したあとはあっさりと殺すんだろう? 血と涙もないよ、まったく!」


 裏口のまでやってきた時、使用人のおばさん連中の井戸端会議が聞こえてきた。


 『勝手なことを言ってくれる!』


 リバス様の口調は腹立たしげだ。


 「ガボからの情報だと屋敷の使用人たちには休暇を出したってことでしたけど、もう戻ってきてるんですね」


 『おそらく貴様がここへ来ることを想定してのことであろう。貴様の性格上、こやつらがいては存分に戦うことはできまい?』


 うっ……。そんなことまで見透かしてるのか。ますます見つかるわけにはいかなくなった。ドアが開けっ放しになっている裏口から屋敷内へと入る。


 「内部に潜入できたのはいいんだけど、村長はどこに閉じ込められてるんだろう?」


 ガボも村長のいる部屋までは特定できなかったらしい。


 『地下の可能性が最も高いのではないか? 行くならば気を付けることだ。見つかれば少々厄介なことになろう』


 たしかに。地下で見つかってしまったら最悪の場合は閉じ込められることも考えられる。まさにミイラ取りがミイラになった状態だ。屋敷の地下には隠れ家の洞窟に通じる出入口があるはずだけど施錠されていては使えない。


 いつまでもこうしてるわけにもいかず、地下へと進むことにした。村長を早く見つけてここから離れたいよ。こんな所にいては心臓に悪いというものだ。

 

 ここへ初めて訪問した際にバズラウドと戦うために地下室に案内された。その時の記憶を頼りにして地下へと続く階段を難なく見つける。周囲に誰の姿もないことを確認して《不可視》を解除する。その後、索敵魔術エネミーサーチで周辺を警戒しながら階段を慎重に下りていく。


 今のボクでは《不可視》と索敵魔術エネミーサーチを併用することはできない。もっと鍛練しなきゃ。


 屋敷の地下には幾つかの部屋がある。その中のどれかに村長が捕らえられている可能性が高い。とはいえ、片っ端から扉を開けて確認していては危険なうえに効率が悪い。こんな場面では索敵魔術エネミーサーチが効果を発揮する。通路にいながらにして部屋の内部をある程度探ることができるのだ。もっとも、気配から室内にいる大まかな人数を知るくらいのことしかできないのが問題なんだよなぁ。リバス様ならもっと詳しく探ることもできるんだろうけど……。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「おぬし、何を企んどる?」


 不意に聞き覚えのある声がした。村長だ! ボクははやる気持ちを抑えて、なるべく静かに移動する。


 「いえいえ、企むなどとんでもございませんよ。わたくしはただフォラスのことを思っているだけなのです」


 続いて聞こえた声に表情が凍りつく。スヴェインもいるようだ。二人は地下通路の最奥の一室にいた。ここからは索敵魔術エネミーサーチから《不可視》を使って進む。スヴェインならボクの索敵魔術エネミーサーチに気づくかもしれないからだ。《不可視》も決して安全ではないかもしれない。だけど、見つかるリスクはこちらのほうが低いように思われる。


 「フォラスのためじゃと?」


 「ええ。今は亡きダザン様はフォラスの繁栄を心から願っておられました。わたくしはその意志を継ぎたい。それだけでございます」


 開けられたままのドアから部屋の中をそっと覗く。村長は後ろ手に手錠をかけられて拘束されていた。


 「たしかにダザン様はフォラスの繁栄を願っておった。しかし、おぬしがやろうとしとる事とは別の意味でじゃろう。おぬしはフォラスを武力強化しようとしとるようじゃが、それでは近隣諸国との摩擦は避けられん。最悪の場合、フォラスの民にどれほどの犠牲がでるか……」


 悲痛な表情を浮かべる村長に対してスヴェインは無表情なままだ。


 「あなたに理解してもらおうなどとは思っておりません。しかし、大義を成すためには多少の犠牲は問題ないでしょう。それにわたくしには切り札ともいえる戦力がありますので戦争になったとしても対処できるのですよ」


 「アークデーモンか?」


 スヴェインは無言のまま何も答えようとしない。


 「魔界のモンスターであるアークデーモンを従えることができるのはなぜじゃ?」


 村長からの問い掛けにクククと笑うスヴェイン。


 「その質問に答えるつもりはありませんし、あなたが知る必要もございません。……さて、あなたともう少しお話ししていたいところなのですが、わたくしにもやらねばならないことがございます。それでは……」


 スヴェインは村長に一礼して部屋を出るとドアを閉めて地下を足早に去っていく。どうやらボクには気づかなかったようだ。なんだか急いでいる様子だったけど、どうかしたのだろうか?


 『妙だな』


 リバス様が独り言のようにポツリと呟く。何か引っかかることでもあるのかな? だけど、今は村長を救出して一刻も早くトゥナムの元へ戻るのが先決だ。


 ドアノブを回して扉を開け、素早く室内に入る。


 「ルベタ殿!」


 既に《不可視》を解除しているためボクの姿を視認した村長が声をあげる。


 「静かに。助けにきたよ。歩けるかい?」


 「うむ」


 手錠を外している暇はない。幸いにも村長は下半身は自由が利くようだから自力で歩いてもらうことにした。

いつも読んでくださってありがとうございます。

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