疑惑②
「レウオさんとメルーさんは自分たちが発見したそれを放置するのは危険と判断し、わたしに預けにきた。その太古の遺物を見た時、わたしにはそれが何なのかわからなかった。握りこぶしくらいの大きさの真っ黒な色をした石で全体に赤い紋様が描かれ、強い魔力を感じ取れた」
『ふむ、封魔石だな。たしかに珍しい物には違いない。知らぬのも無理はなかろう』
トゥナムの説明を聞いていたリバス様が呟いた。封魔石って何なんだろう? 聞いたこともない。
「わたしはスヴェインを呼んでそれが何なのか心当たりないかと訊ねることにした。彼はなかなか博識だったからね。スヴェインはその石を暫く見つめていたが、結局、正体はわからないが屋敷で管理すべきだと提案してきた。わたしもそれがいちばんだと考え、その意見を採ることにした。そして、スヴェインはその石を持って屋敷の地下室へと向かった」
「その石は今も屋敷の地下室に?」
尋ねるボクにトゥナムは首を横に振る。
「数日後、石のことが気になって地下室へ行ったが石はなかった。スヴェインは賊が侵入したのではないかとして島中の捜索をしたが手がかりは全くつかめず数日が過ぎた。そもそも石を保管していた地下室は隠し部屋となっていて、屋敷の人間ですら存在を知る者は少ないうえに、特殊な鍵と封印魔術が施されているため容易に侵入することはできないはず。そこで、スヴェインに疑惑を持ち始めたのだ」
なるほどね。その状況だとスヴェインが怪しく思えてくるのはわかる。
「わたしは確たる証拠もないままにスヴェインを問い詰めた。その時だ。石の捜索を継続していた男が海辺の高台に怪しい一団がいるという情報を持ってきた。わたしはすぐに駆けつけたが、そのような者はどこにも見当たらなかった。代わりに現れたのがアークデーモンだった」
『あのスヴェインとかいう男は油断ならぬ相手なのは気づいていたが……。今の話を聞くかぎりではアークデーモンをけしかけたのは奴とみて間違いなかろうよ。封魔石とは魔物を封じるための魔具の一種だ。封じられていたのはアークデーモンだったのであろう。あの男は封魔石からの解放を条件としてアークデーモンの力を借りることにしたというところか』
ここまでの話を聞いていたリバス様が推理を披露する。
「ルベタはわたしが見た太古の遺物に関して心当たりはあるかい?」
トゥナムにはリバス様の声が聞こえないんだからしょうがないか。
「それは封魔石っていう魔具だと思う。封魔石は魔物を封じるための物なんだ。おそらくその石にアークデーモンが封じられていたんじゃないかな。スヴェインは封魔石からの解放を条件にアークデーモンの力を借りてる可能性が高いね」
ついさっき聞いたばかりのリバス様の推理を披露する。
『おのれ、よくも自分の推理のようにぬけぬけとぬかしたものよ』
しかたないじゃないか。相手はリバス様のことを知らないんだから。
「そうか! さすがだね! それなら納得できる」
そんなことを知るよしもないトゥナムは感心している。ううっ、なんだか罪悪感のようなものを感じてしまう。
「意見が合わなくなったわたしを暗殺し、代わりに弟のリゲックをフォラス領主に据えたというわけか」
「ああ。リゲックはスヴェインの口車に乗せられて、ゴロツキや傭兵くずれを戦力として迎え入れたんだね」
「そうだな。リゲックには野心家で短絡的な一面があった。スヴェインにとっては扱いやすい存在だったのだろう」
「レウオさん、メルーさん、それにリゲックたちを殺害したのはなぜだろう?」
ボクはふと思い浮かんだ疑問を言葉にする。
「レウオさんとメルーさんに関しては口封じだろう。二人とも封魔石に興味を持っていたからね。万が一にもそれが何なのか知られるのを恐れたんじゃないかな。リゲックたちを殺害した理由は本人に聞くしかなさそうだな。考えの相違があったのかもしれない」
「スヴェイン、悪い奴! おで、絶対に許さない!!」
びっくりしたぁ! それまで黙っていたガボが突然に大声をあげる。
「落ち着くんだ、ガボ。これはわたし達の推測であって確証はないんだ」
「要するに、流れ者だったスヴェインはフォラスの発展を望んでいたダザンさんの理想を実現するため行動している。しかし、それを達成するために手段を選ばず強行策をとっている。さらにはフォラスの武力強化のために魔界の魔物とも契約までしているようだ……と。こんなところか」
「我々の推測ではそうなるね」
「まずは本人を問い詰めるしかないってことだな。それならすぐに行動を起こそう!」
ボクは魔大剣ヴィデルガラムを手に立ち上がった。
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