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魔王様の大冒険  作者: 美山 鳥
第6章 裏切りと捕らわれた魔王
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疑惑①

 「ところで、ボクに力を貸してほしいことがあるとか?」


 海産物をふんだんに使った豪華な食事を終えて一息ついたところで訊いてみる。


 「ああ。だけど、その前に聞いておいてほしいことがある。レウオさんとメルーさんの事件についてだ。この件に関してはルベタも調べてたんだろう?」


 「うん。何か知ってるのか?」


 トゥナムは少し間をあけてから話し始める。


 「わたしは何か裏があるんじゃないかと考えている。ルベタの意見を聞かせてくれ」


 「同じさ。本能に目覚めたとしても記憶が全く残っていないというのも気になるよね」


 トゥナムは首肯する。


 「わたしは、ガボの後頭部に刺さっていたという針が怪しいとみている。なんらかの因果関係があるとみて間違いないだろう」


 たしかにそうだ。いきなり後頭部に針が刺さるなんて不自然だし、それから暫くして突然暴れだしたというのも妙だ。しかし、今となっては針を調べることもできない。


 「わたしはその針には対象を興奮させるような何かが仕込まれていたんじゃないかと推測している。ただ、これには証拠も何もないのだがね」


 トゥナムが推論を披露する。


 「そうだとして、いったい誰がなんのためにそんな事をしたんだろう?」


 「目的ははっきりとはわからない。だけど、ガボに針を刺したのはおそらくスヴェインだろう」


 「スヴェインだって!?」


 予想もしていなかった人物の名前が出てきたことに大声をだしてしまう。トゥナムは静かに頷く。確信があるようだ。


 「まさか、信じられないよ。……何か根拠はあるのか?」


 「わたしがアークデーモンに襲われて海に投げ出された時、一瞬だがスヴェインの姿が見えた」


 「……見間違いとかじゃなく? 本当にスヴェインさんだったのか?」


 「ああ。それだけじゃない。ルベタはスヴェインが近くにいる時に気配を感じたことはあるかい?」


 改めて問われると、たしかにスヴェインさんの気配はほとんど感じたことがない。それじゃ、あれはスヴェインさん自身が意図的に消している?


 「……いつも気がついたら近くまで来ている」


 「やはりな。あれはスヴェインが自らの気配を消しているんだろう。意識しているのか習慣となっているのかはわからないが、な」


 「本当にそんな事をできるのだとすれば、彼はいったい何者なんだ?」


 長い沈黙がおとずれた後、トゥナムが重い口を開いた。


 「フォラスにやってくる前、スヴェインがどんな生活を送っていたのかは知らない。彼はその事を誰にも話していないだろう。ただ、流れ者だったということは父から聞いたことがある」


 「それじゃ、お父さんはスヴェインの過去を知っていたのか」


 「どこまでかはわからないがね。父も詳しくは知らなかったのかもしれない」


 「それでも信じられないよ。あのスヴェインが……」


 「わたしの考えを順を追って話そう。聞いてくれるね?」


 ボクは黙って頷く。トゥナムはそれを確認すると静かに話し始めた。


 「スヴェインがこの島にやって来たのが数年前。屋敷を訪れた彼は一晩の宿を乞い、我が父ダザンはそれを快諾した。その夜、父が何者かに襲われる事件が発生した。剣術の腕前は相当なものだったにもかかわらず、全く相手にならなかったそうだ。そんな父の窮地に駆けつけたのが偶然にも宿泊していたスヴェインだった。父の提案によってスヴェインは執事兼用心棒として屋敷で働くようになったんだ」


 ここまでは聞いた感じだとスヴェインに怪しい動きはないように思える。ただ、スヴェインにとって少し都合がよすぎる気もしなくはないけど……


 「スヴェインがフォラスを豊かにしようと奮闘する父をサポートし続けて何年かの月日が流れた。長年の無理がたたったのか父は病床にふせるようになった。スヴェインはそんな父の面倒もよく看てくれたよ。しかし、結局は……」


 ここでトゥナムは大きく息をつく。


 「その時のスヴェインの落ち込みようは側で見ているわたしたちも辛くなるほどだったよ。だからこそ、わたしやリゲックもスヴェインに信頼を寄せるようになったのだ」


 そりゃそうだよね。そこまで仕えてくれれば誰だって信用するに違いない。


 「わたしが亡き父の跡を継いでフォラス領主となってからもスヴェインはサポートをしてくれていた。しかし、やがてお互いの意見が食い違うようになったのだ。スヴェインはフォラスの武力を強化して領土を拡大すべきだ提案した。それこそが島の人々の生活を豊かにすることになるのだとね。だが、わたしはその意見には反対だった。そんなことをすれば周辺諸国との間に争いが生じるのは明らかだ。事実、幾つかの国はフォラスに対して警戒を強めていたようだ。それらの国の中には世界有数の軍事国家として知られているものもあった」


 トゥナムの判断は正しいように思う。そんな状況で独立を強行すれば戦争に発展する可能性は想像に難くない。


 「そうして、わたしとスヴェインは幾日にもわたって話し合いを重ねたのだが平行線のままだった。そんな時、レウオさんとメルーさんが島の中央に広がる森で太古の遺物を発見するという出来事が起こった」


 「太古の遺物って、それはいったいどんな物なんだ?」


 ボクの質問にトゥナムは黙って俯いてしまう。ややあってボクと視線を合わせてきた。

いつも読んでくださってありがとうございます。

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