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魔王様の大冒険  作者: 美山 鳥
第5章 勇者ベレグの帰郷
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堕ちた勇者④

 翌朝、ベレグはスヴェインが用意した朝食を摂った。それから屋敷で飼育されている馬に跨がってチセーヌへ向かけて街道を進んでいた。


 昨日の悪夢のような出来事が脳内で再生される。リゲックたちの無惨な最後にアークデーモンの圧倒的な強さ。紋章を解放した時のルベタも相当な強さだった。だが、アークデーモンには歯がたたかなかった。


 「しっかし、あいつが生きてたとはなぁ……」


 ガボのことだ。何年も前に死んだと思っていたが、ルベタを救ってあの場から離脱したあのオーガは間違いなくガボだった。


 (わからねぇ。ガボが命懸けでルベタを救う理由はなんなんだ? そもそも面識すらあるわけがない)


 ベレグにはどうなっているのか、さっぱり見当もつかない。状況からみて、ルベタとガボが生きている可能性は高い。となれば、何らかのアクションを起こすはずである。スヴェインならばこれくらいのことを予測していないわけがなかった。


 ルベタとガボがタッグを組んだ場合、あのアークデーモンを倒すなんてことはあり得る。自らの保身のためにも今のままスヴェインに協力し続けていいのか迷うところだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「おっ、チセーヌか」


 あれこれと思考を巡らせている間にチセーヌが見えてきた。勇者として覚醒するまで農民として暮らしていた村だ。


 勇者に覚醒して光属性の魔術を使えるようになり、意気揚々と旅にでた。しかし、現実はあまくなかった。世界には並みの者では太刀打ちできないようなモンスターがゴロゴロいた。まして、ベレグが使える光属性魔術は目眩ましするフラッシュしかなかったのだから余計である。


 そんな現実を知って絶望したが、すぐに帰れば笑い者になるという思いからそれもできなかった。さらに言えば、チセーヌから勇者が誕生したことを喜んでいたポポルに幻滅されるのが怖かったのだ。


 それからは、他のパーティが弱らせたモンスターに止めを刺したり、それでも敵わないと思えば迷うことなく逃走した。気がつけば、ヘタレ勇者と呼ばれるようになっていた。


 「ちっ、おもしろくねぇぜ。だが!」


 ここにきて、経緯はどうあれフォラスの領主になれるチャンスがめぐってきたのである。しかも、うまくすれば魔王を倒した英雄になれる。まさに千載一遇の好機を絶対にものにしたいと願っている。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 早速、昨夜の打ち合わせ通りの説明をしようとチセーヌの住人を広場に集めた。


 「ルベタが魔王だったって話は本当なの!?」


 レミィが信じられないといった様子で尋ねてくる。


 「ああ、本当さ。あいつは俺たち人間の敵だったんだ」


 「そんな……」


 その場に愕然と立ち尽くすレミィ。かなりのショックを受けているようだ。


 「ちくしょう! ルベタのやつ、オイラたちを騙してたのか!!」


 「そういうことだ。あいつはアークデーモンとオーガを従えてリゲック様やコルオーン、ルザを殺害したんだ。いや、それだけじゃない。レミィやポポルの親父さんやお袋さんも……」


 堪えきれずに泣き崩れるレミィとポポル。それを見た村人からも口々に怒声があがる。


 「やっぱり魔族なんて信用しちゃいけないんだ! 赦さない、絶対に赦さない!!」


 ポポルは悔しさと怒りに涙して地面を何度も殴り付ける。


 「赦せないのは俺だって同じさ! レミィやポポルの信用を裏切るなんて最低だ!! やつは心から殺りくを楽しんでいた。人間の命なんてなんとも思っちゃいないんだよ。あいつはきっとまた姿を現す。その時はみんなで協力してやつを倒すんだ!! 無惨に殺された犠牲者のためにも、世界の平和のためにも!」


 拳を掲げて鼓舞するベレグに呼応して村人たちも拳を掲げる。


 「みんなが力を貸してくれれば心強い! 戦うための武器はスヴェインが用意して届けてくれるはずだ」


 問題はここからだった。俺は意を決して話を切り出す。


 「よく聞いてくれ。俺たち人間にとって魔族は強敵だ。相手が魔王となれば尚更に! だからこそ、みんなの力をまとめる指導者が不可欠だ。スヴェインは俺が指導者に相応しいと推薦してくれている。どうだろう、みんなの力を俺に預けてくるないか!?」


 これこそが最大の目的であった。この場でベレグが指導者だと認めさせることができればルベタたちを倒した後、フォラス領主の地位に就くことも容易にできる。


 「ベレグは卑劣な魔王ルベタを一度は撃退した勇者だからな!」


 「俺も異論はねぇぞ!」


 「頼んだわよ、ベレグ!」


 「私達を勝利に導いてちょうだい!」


 「勇者ベレグ、万歳!」


 作戦が成功し、ベレグは口元を歪めていた。

いつも読んでくださってありがとうございます。

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