堕ちた勇者②
「な、なぁ。あの化け物……アークデーモンがトゥナムさんを殺ったのか?」
高台を後にして今や主なき館となった領主邸へと向かう道すがら、ベレグは疑問をスヴェインにぶつけた。
リゲックの兄トゥナムは剣術と魔術の使い手でフォラス島一番の強者だった。そんな人物が島にいるモンスターに殺られるなんて考えにくい。それに、アークデーモンの目撃者もいる。
「ええ、そうですよ」
あっさりと肯定するスヴェイン。今や共犯となったベレグに隠し立てしても意味がないということである。
「なぜだ! あの人を消してまでこの島のを支配したかったのかよ!?」
「まさか。わたくしはそのようなものに興味はございませんよ」
「だったら、何が目的なんだよ!?」
詰め寄るベレグにスヴェインは首を横に振る。
「お答えするつもりはありません。ただ、わたくしにも自分の考えというものがございます。そのためにはトゥナム様には死んでいただくしかなかった。できるならば避けたかったのですが大変残念なことです……」
ベレグは黙考する。
(まぁ、いい。危険を冒さずに魔王退治の大功績を得られるのなら願ったり叶ったりというやつだ。これでレミィだって俺に振り向いてくれるはずさ。今まで俺をバカにしてきた奴らを見返すことも! 俺はこのチャンスをものにして地位も名誉も金も手に入れてやる! もちろんレミィもな!!)
そんな歪んだ思いにベレグの口元が緩む。
「……なんだよ?」
スヴェインの冷ややかな視線に気付く。
「いえいえ、何もございませんよ。ただ、つい先ほどまで命乞いをしていた方とは思えなかったものでしてね」
「なっ! 俺はあんたらに協力してやってるんだぜ! なんたって俺には魔族に対して有効な光属性魔術があるんだ。その気になればアークデーモンを倒すことだって!!」
ムキになって反論する俺をスヴェインが鼻で笑う。
「そうですね。そういうことにしておきましょう。ですが、一つだけ忠告しておきましょう。あまり彼を刺激しないほうがよろしいかと。せっかく命拾いしたのに殺されては無駄になりますよ?」
ベレグは、その一言で恐怖が甦ってくるのを感じた。少しでも優位に立つために強がってはいるが、もしもアークデーモンと戦うことになれば確実に殺される。
「こ、この近くにいるのか!?」
「ええ、いますよ。彼はわたくしの憑依しているのです。つまり、常にわたくしと共にあり五感を共有というわけですね」
ベレグは答えを聞いて凍りつく。その様子を嗤うスヴェインに怒りを感じるが悔しさを堪えるしかなかった。
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