処刑場の戦い③
ボクはいまだに締め付けているルザの腕を振りほどく。あれほど強く感じたルザの腕力が今は弱く思えるから不思議だ。
「なっ!?」
スキルを使用したわけでもないのに腕を難なくほどかれて驚愕するルザ。これが魔王の紋章の力なのか。本当に凄いものだな。フルグローブをはめているため、周りからは魔王の紋章を確認することはできない。それ故に何が起こっているのかわからないだろう。
『魔王の紋章は宿主の強大な力を与える。今の貴様ではその力を十分に引き出すことは叶わぬであろう。が、こやつら程度ならば問題なく片付けられるはずだ。しかし、油断はするでないぞ。紋章の力は貴様ごときに御せるものではない。暴発させぬよう、精々気を付けるのだな』
リバス様が忠告してくれる。こういうところって案外親切だったりするんだよね。
「ま、まさか! この凄まじい魔力は……魔王か!?……本物……なのか…」
バズラウドが信じられないといった表情をしている。
「この圧倒的な魔力を見せつけられれば信じるしかねぇだろうがぁ!」
コルオーンは身構えるもののボクとの間合いを広げている。
「化け物がぁ!!」
コルオーンがピストルを発砲する。紋章の力を解き放っている今なら弾丸を視認することも容易だ。ボクは飛んでくる銃弾を避けて反撃に転じる。
「がはっ」
コルオーンはボクの蹴りを受けて後方へと吹き飛ぶが、カットラスを杖代わりにしてどうにか立っている。手加減したのに想像以上の威力だ。
「なぁ、このまま引いてくれないか? もう勝負はついてるはずだ」
「そ、そうだな! ここで無理して戦っても仕方ないよな。俺は賛成だ!」
ボクからの提案にベレグが真っ先に賛同する。
『ふん、怖じ気づきおったか。軟弱な勇者め』
リバス様が侮蔑したように吐き捨てる。理由はともかくこれ以上誰の血も流さないで済むのならかまわない。
「ふざけるな! 魔王を殺せば晴れて英雄の仲間入りなんだぞ!! この好機を逃がすわけにはいかん!!!」
納得できないバズラウドは火炎系下位魔術を連発しながら間合いを詰めてくる。無数の火の玉が命中するが紋章の魔力を解放しているボクにダメージを与えることはできない。
「ちぃっ、やはりこの程度では効かぬか! ならば我が槍で串刺しにしてくれる!」
何度となく繰り出された攻撃を全てかわしきるとメイスで槍を弾く。体勢を崩して隙だらけとなったバズラウドにアッパーカットを炸裂させた。宙を舞い、背中から着地したバズラウドの真横にメイスを突き立てる。圧倒的な力の差を見せつけられて戦意を失くしたようだ。その表情は恐怖に染まっていた。
「さて、他にボクと戦う人はいるかい?」
コルオーン、ルザ、リゲックに視線を送りながら問う。三人は一様に黙して俯いている。これでは埒があかない。今回の件の首謀者だと思われるリゲックを相手に話を続けることにした。
「ボクとしてはこれ以上の戦いは望まない。それでも続けるのなら……」
リゲックに一歩近づくと慌てた様子で2・3歩さがる。
「くそっ、いい気になりやがって……。まぁ、いいだろう。ここは我々が引き下げってやる」
リゲックは悔しさと恐怖を抱きつつも強がってみせている。これだけ力に差があると弱いものいじめをしているような気分になってくる。
「なら、ボクは失礼させてもらうよ」
言い残してボクはかつて処刑場だったという高台を後にした。
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