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魔王様の大冒険  作者: 美山 鳥
第5章 勇者ベレグの帰郷
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処刑場の戦い②

 「貴様ら、なにをしている! こんな奴などさっさと片付けろ!!」


 業を煮やしたリゲックの怒声がコルオーンたち4人に投げ掛けられる。


 「ちっ、うっせぇなぁ……」


 コルオーンは辟易へきえきとした様子で顔をしかめる。


 「しょうがねぇ。ルザとベレグは接近戦で攻めろ。俺とバズラウドが遠距離から援護してやらぁ」


 「なっ…貴様、海賊風情がこの白薔薇の勇者に命令する気か!?」


 「るせぇ! さっさと動けっつってんだよぉ!!」


 ベレグはコルオーンにめ付けられて表情を強張らせる。なんとも頼りない勇者だ。


 「うぉぉぉぉ!」


 先頭はハンマーを振り上げたルザ、その後ろにベレグが続く。


 「ふんぬぅ!」


 力任せに振り下ろされたハンマーが唸りをあげる。が、その攻撃は空振りとなった。回避を容易く成功させると反撃にでる。


 「うがぁぁぁぁ!!」


 《剛力》を発動させて放った一撃はルザの右肩をとらえて大打撃を与えた。片膝をついて苦悶の表情をみせる。


 「おまえなんか、おまえなんかぁ!」


 ベレグはやけくそ気味に槍を構える。しかし、恐怖からか腰が引けている。《俊足》で一気に詰め寄ると持っていた槍をメイスで叩き落とす。


 「な……な……」


 一瞬にして武器を手放してしまったベレグは困惑した様子で後ずさる。ボクは左手を強く握って拳を固める。それに気付いたベレグの表情は恐怖に染まる。


 「ぐぇっ」


 繰り出した左フックがベレグの右頬に命中して弾き飛ばす。地面を転げ回って痛がる様は普通にイメージされる勇者像ではなかった。もしも、ポポルがこんな姿を見たら幻滅してしまうに違いない。


 「随分と頼りねぇ勇者じゃねぇかぁ。戦力になりゃしねぇ」


 怒りというよりは呆れた様子のコルオーン。


 「ならば、我らで殺ればよいだけだ!」


 言うが早いかバズラウドが氷塊系下位魔術アイスボールを放つ。魔力によって作られた幾つもの氷塊が飛来する。それらをメイスで破壊しつつ後退してダガーを拾う。


 「うっ!」


 突如、左足の太ももに痛みが走り、片膝をつく。コルオーンの銃から発砲された弾丸が命中したのだ。防御魔術ガードのおかげで深手は負っていない。


 「殺すぅぅぅ!」


 左手にハンマーを持ったルザが立ち上がる。


 痛みに耐えて立ち上がりメイスとダガーを構える。ボクとルザはほぼ同時に駆け出した。お互いの間合いがみるみる縮まっていく。ハンマーが左から右へと横一文字に振られる。ボクは素早く身を屈めつつも前進を止めない。ルザの左脇を通り抜け様にダガーで切りつける。


 「ぐぁあ!」


 叫びながら傷口を押さえるルザ。その背中に止めの一撃を加えるべくメイスを振り上げる。


 「うぐっ」


 全身に電撃が走る感覚によろめく。バズラウドが繰り出した雷撃系下位魔術ライトニングボールがボクの背中に直撃した。


 どうにか踏ん張る。が、凄まじい衝撃にボクの身体は弾き飛ばされて全身を地面に激しくぶつけてしまう。ルザの強烈な一撃が炸裂したのだ。


 「痛てて……」


 激痛を堪えて立ち上がる。相変わらず相当な威力だ。防御魔術ガードがなければ致命的だっただろう。


 「のわっ」


 休む間もなくコルオーンのカットラスが閃いた。咄嗟に後退して回避する。


 「甘ぇぜぇ」


 コルオーンが銃口を向けてくる。まずい、この状況では避けることはできない。引き金が引かれ、飛び出した弾丸はボクの眉間に命中した。防御魔術ガードを全開にして防御に徹したが吹き飛ばされて鮮血が流れる。


 「とどめだ!」


 跳躍したバズラウドは仰向けに倒れているボクに槍の穂先を合わせている。


 「くっそぉ!」


 身体を右側に転がした瞬間、バズラウドの槍が地面に突き刺さった。


 「ちぃ!」


 攻撃をはずしてしまったバズラウドは槍を引き抜こうと力を込める。こちらもいつまでも寝転がっているわけにはいかない。無理矢理にでも立ち上がると、すぐさま《剛力》を発動させてメイスを一閃する。


 「ぐぅっ」


 メイスを背中にまともに受けてバズラウドは槍もろとも弾け飛ぶ。次のターゲットをコルオーンに選んでメイス構える。


 「うわっ」


 突然の出来事だった。ハンマーを手放したルザが抱きついて締め上げてきた。スキンヘッドには血管が浮かび上がり、顔面は真っ赤だ。


 『ほほぉ。これは貴様程度の《剛力》では簡単には脱け出せんぞ。どうするのだ?』


 これまで沈黙していたリバス様が他人事のように言ってくる。実際、すでに《剛力》を発動させているにもかかわらず脱出できないでいたりする。こうなったら奥の手を使わざるを得ないか。


 「くっくっく…。いいぜぇ。よくやった! そのまま放すんじゃねぇぞぉ」


 残忍な笑みを浮かべたコルオーンがカットラスの側面を舐めてみせる。


 「手こずらせてくれたじゃねぇかぁ。だが、それもここまでだぁ。その首を切り落としてやらぁ!!」


 コルオーンがカットラスを閃かせようとした瞬間、ボクは右手に宿る魔王の紋章の力を解放した。


 ボクは全身に力が漲ってくるのを感じていた。

いつも読んでくださってありがとうございます。

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