罠②
『さてさて。ヘタレ勇者は回りくどいやり方で呼び出して何をするつもりなのやら』
「さぁ? さっぱりわからないです。ただ、楽しい時間というのは期待できない気がします」
リバス様と会話しながら、小袋の中に入っていた一枚のメモに記された場所へと向かっている。
チセーヌに戻ってきて昼食を済ませ、一息ついてから出発して今は昼下がり。天気は晴天。絶好のお昼寝日和だというのに少し憂うつな気分だ。
「それにしても、どうして海辺の高台で待ち合わせなんでしょうか」
『死体の処理が楽だからかもしれぬな』
さらりと返ってきた言葉に身震いする。
「ま、まさか。一応は勇者なんですよ。いくらなんでも殺人だなんて。それはありませんよ」
『まぁ、行ってみればわかることだ。……などと言ってる間に到着したようだな』
リバス様の言葉通り、行く先に高台へと続く階段が見えてきた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『ほぉ、貴様にはどうあっても生きていられては困るようだぞ』
高台へとやって来たボクを待っていたのはベレグだけではなかった。バズラウド、コルオーン、ルザ、そしてリゲックの姿まである。
「さて、このメンバーがボクになんの話があるのかな?」
ベレグは黙ったまま俯いている。
「まぁ、そう急かすなよ。見ろよ、ここからの景色を!」
リゲックはボクに背を向けると、見渡す限りの水平線に向かって両腕を広げる。
「この景色をボクに見せるために呼び出したのか?」
「ああ、そうだ。だが、それだけじゃない。もう一度だけチャンスをやろうと思ってな」
振り返ったリゲックと視線がぶつかる。
「チャンス?」
「警備隊に入らねぇか? 悪いようにはしない。おまえほどの腕なら金も権力も思いのままになるだろうぜ」
「その件は断ったはずだ。ボクの考えは変わらない」
再びキッパリと断る。リゲックは舌打ちしてボクを睨め付けてきた。
「だったら、この島から即刻出ていってもらおうか。そして、二度と近付くんじゃねぇ。これは領主としての命令だ!」
「君に命令される覚えはないよ。どうしてもボクをフォラスから追放したいというのなら納得できる理由を示してほしいものだね」
「……やっぱりてめえとは上手くいかねぇみてぇだな」
「そうだね」
ボクも同感なので肯定する。
「ところで、どうしてこんな所に高台が作られたのか知ってるか?」
リゲックが突然に話題を変えてくる。いったい何を言いたいのだろうか。
「さぁね」
短く答える。リゲックは鼻で笑って話を続ける。
「だったら、教えてやるよ。今でこそ海を見渡せるスポットになりつつある。だが、本来へ処刑場として作られたんだぜ」
『ここなら遺体の処理に困らんからな。目の前の海に放り込めばよいわけだ』
リバス様は冷静に納得しているようだ。
「……そうなのか。どうして、このタイミングでその話を?」
リゲックが冷ややかな笑みを浮かべた。
「わかってるだろう。今からてめぇの処刑をするんだ。俺様に従わないのなら邪魔者でしかねぇからな」
予想通りの残念な展開にため息をついてしまう。
「しかたないな。だけど、無抵抗でやられるつもりはない。くるなら覚悟してもらうよ」
言いつつ、右手にメイス、左手にダガーを構える。今回の敵は5人。楽勝とはいかないだろう。
「この面子を相手に一人でやろうってのか。その度胸だけは誉めてやるよ。しかし、俺様に逆らった罪はきっちり償ってもらおうか!」
言い終わるが早いか、リゲックは懐からピストルを取り出す。それを合図としたかのように他の4人もそれぞれの武器を構えた。
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