悲しき勇者
港から戻ってきたボクとレミィは起床したみんなと食卓を囲んでいる。
焼きたてのパンがカゴに盛られ、魚介スープから立ち上る香りが食欲を刺激する。あとはとれたての野菜を使ったサラダが並べられている。
「そういえば、コルオーンはどうなったんだ?」
ベレグのことをふと思い出す。
「さぁな。成果はあんまり期待できないとは思うんだがな」
ラルバンがパンをかじりながら返答する。
「今朝から姿が見えないよね。何かあったのかな」
心配そうにするレミィの隣でポポルがニヤリと笑う。
「やっぱりベレグ兄ちゃんのことが心配なんだな」
「そりゃそうよ。私たちの代表でリゲックの所へ行ってくれてるんだもん」
「へ? 心配してる理由ってそれだけなのかよ」
返ってきた返事に拍子抜けしたような様子のポポル。
「他に何があるの?」
「……ううん、なんでもないよ……」
レミィはポポルが何を言いたいのか理解できないようだ。そこにラルバンが豪快な笑い声をあげる。
「こいつぁあ、ベレグの奴が哀れなもんだな。叶わぬ恋ってやつか!」
「え、ベレグが誰かに恋してるの!?」
レミィが興味津々といった雰囲気で話題にくいつく。
「はぁ……。姉ちゃんはほんとにこういう事には鈍いよなぁ」
半ば呆れたように言うポポル。レミィはムッとした表情になる。
「なによ。それじゃポポルは相手が誰だかわかるっていうの?」
「そんなの、姉ちゃんに決まってるじゃんか。普通、気付くだろ」
レミィは食事の手を止めたまま口をポカンと開けている。
「そ、そんなことあるわけないじゃない! ポポルの思い過ごしよ」
「だったらさ、もしもベレグ兄ちゃんが告白してきたらどうするんだよ?」
「どうするって、そりゃお断りするわよ。だって、私にとっては幼なじみとしか考えたことないし、恋愛対象とは思えないもん」
本人のいない所で勝手に想いを暴露された挙げ句にフラれてしまうなんて、ベレグが可哀想になってきた。
ボクがベレグに同情していると、扉を開けてベレグが現れた。なんて間の悪いタイミングなんだろう。
「ハーハッハッハッ! おはよう、諸君! 食事中に失礼するよ。あぁ、気にせず食事を続けてくれたまえ。そうだ、この白薔薇の勇者ベレグの武勇伝でも聞かせてあげようか?」
ベレグは前髪をかきあげて笑顔を見せる。どうやら話は聞かれていないようだ。
「どうかしたのかい? もしかして、白薔薇の勇者を前にして緊張してるかな?」
一同の様子がいつもと違うのに気づいたらしい。だけど、随分と的外れなことを言っている。
「それより、コルオーンの件はどうなったんだ?」
ラルバンが場の空気を変えようとする。グッジョブだ、ラルバン!
「そのことか。白薔薇の勇者と呼ばれる俺が自ら出向いたんだ。成果がないわけがないだろう?」
「なに、どうにかできたのか!?」
自信満々のベレグ。期待していなかったラルバンは身を乗り出す。
「無法な行動をしないよう厳重に注意するそうだ」
次いで出てきた言葉にラルバンはガックリと肩を落とす。レミィも失笑している。
「な、なんだと言うんだ。この俺がわざわざ代表してリゲックの所まで行ってやったんだ。少しは感謝してもいいんじゃないか?」
「ご苦労さま。朝食はまだでしょ? 一緒に食べない?」
不機嫌そうにしているベレグにレミィが食事を勧める。途端にベレグは表情を明るくした。なんと単純なことだろう。
「レミィ、やはり君だけは俺の味方だね。君が僕を思う気持ちはわかってるよ」
片眼を閉じてウインクするベレグ。レミィは悪意のない無視状態だ。
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