帰郷
海賊たちの襲撃から一週間が経った。すっかり全快したボクは三日ほど前からピラックの復興作業を手伝っている。
ちなみに、レミィとポポルもチセーヌには帰らずピラック復興に尽力している。その間のチセーヌの畑の管理は村の人たちが代行してくれているそうだ。そして、ランツァ村長はまだ入院継続中である。
「お疲れ様! そろそろお昼にしましょう」
レミィがおにぎりを乗せた皿を持ってきてくれた。
「もう、そんな時間だったのか」
ボクは作業の手を止めて腰を下ろす。空は青く日差しは眩しい。そして潮風は肌に心地いい。
「はい、どうぞ」
レミィがお茶を水筒からカップに注いで差し出してくれる。ちょうど喉が渇いていたボクはそれを一気に飲み干す。そして、空になったカップに再びお茶が注がれる。
「手伝ってくれて嬉しいし、すごく助かってるんだけど、退院して間もないんだから無茶しないでね」
レミィが心配そうに見つめてくる。
「これくらい平気さ。レミィこそ大丈夫なのかい? ボクが入院してる間も復興作業の手伝いをしてたんだろ。病院へも欠かさず見舞いに来てくれてたし、疲れとか溜め込んでるんじゃないか?」
「ちゃんと休憩をとりながらやってるから平気。ありがと」
「そっか。それならいいんだ」
ボクは台に置かれた皿からおにぎりを一つとって頬張る。絶妙な塩加減で美味い。
「どう?」
「美味しいよ。これってもしかして?」
「エヘヘ…」
少し照れたように微笑するレミィ。
「やっぱりレミィが作ってくれたのか」
「よく気付いたね」
「うん、なんとなくだけどさ。それにレミィの料理って何でも美味しいもんね」
それから、ボクとレミィは他愛ないお喋りしながら昼食を済ませる。こんな一時にも安らぎを感じるなぁ……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
作業を終えて広場へとやってきた。なにやら騒がしい。何事かと群衆をかき分けて進む。
「どうして、あいつらが!?」
そこに立っていたのは海賊コルオーンとルザだ。二人はボクの姿を見つけるとニヤニヤと嫌な笑みをうかべながら歩み寄ってくる。
「いよぉ、まだ居たのかよぉ」
「おまえたちこそ、随分と堂々としてるんだな」
「ほぉ、そりゃどういう意味だぁ?」
「警備隊に連行されたんじゃないのか? それとも脱走か?」
言った瞬間、コルオーンとルザはゲタゲタと嗤いだす。
「おいおい、何を言い出すかと思えばよぉ。ルザよぉ、こいつ、なんにもわかっちゃいねぇみてぇだなぁ」
「おバカ、おバカ!」
相変わらず腹の立つ連中だ。
「知らねぇみてぇだから教えてやるよぉ。よぉく聞けよぉ。俺たちがその警備隊なんだよぉ! しかもだぁ、バズラウドに代わって、この俺が隊長殿なんだぜぇ!!」
耳を疑いたくなるようなことを言い出したぞ。
「ふざけるな! 一週間前に町をめちゃくちゃにした奴が警備隊? しかも隊長だと!?」
納得できないといった様子でラルバンが詰め寄る。
「まぁまぁ。俺たちは嘘なんか言っちゃいねぇぜぇ。なんなら、リゲックの旦那に確認してもらってもいいんだぜぇ」
おそらく事実だろう。リゲックならそういうことをしても不思議ではない。
「ルベタ、こんな奴らなんか追い出してくれよ!」
群衆の一人が叫ぶ。
『と言っておるが、どうするのだ?』
たしかに力ずくで追い出すことは可能だろう。だけど、この場で戦闘を行えば被害者がでてしまうかもしれない。
「リゲックがおまえたちを警備隊に入れたのなら、それに対してボクが口を出すつもりはない。だけど、チセーヌやピラックの住人じゃないからこそ警備隊と事を構えることだって躊躇わない」
「てめぇ、何が言いたいんだぁ?」
刺すような鋭い視線を向けてくるコルオーン。
「そのままの意味だよ」
一歩も引かないボク。一触即発の緊迫した空気が流れる。
「おやおや~、これは何の騒ぎかな? もしかして、僕の帰郷を祝しての盛大なお祭りなのかい?」
いきなり現れた人物のとんでもない一言に一同の視線が集中する。純白の鎧に身を包み、槍を持った騎士風の美青年がサラサラの金髪をかきあげて微笑んでいる。誰だ?
「ベレグ兄ちゃん!!」
いつの間に居たのか、ポポルが声を弾ませた。
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