海賊撃退戦、勝利!
「……勝った……」
コルオーンとルザが気絶していることを確認して、ようやく勝利の実感がわいてきた。
『やれやれ、この程度を相手にここまで苦戦するとは先が思いやられるな。だいたい貴様は無駄な動きが多すぎる』
はぁ……、体が重い。勝利できて安堵したからか疲労感がどっと押し寄せてくる。リバス様のダメ出しも頭に入ってこない。
「ルベタ!」
声のしたほうを見る。瞳に涙を浮かべて駆け寄ってくるレミィの姿があった。
「よかった!……」
涙声で一言だけ言うと、ボクに抱きつくレミィ。微かに肩が震えている。
『貴様、我の話を聞いとらんな』
呆れたようなリバス様の声がする。
「そういえば、町の中にいた海賊たちはどうなった?」
「町のみんなでやっつけたみたいよ。ルベタが戦ってる姿を見て、立ち向かう勇気がわいたんだって!」
「そっか。よかった」
素直に嬉しい。勇気を持ってくれたこともだけど、ボクが誰かの役に立てたことが誇らしかった。
リバス様と融合する前のボクは常に逃げることばかりを考えていた。それが海賊一味に立ち向かって勝利できた。リバス様にしてみれば大したことのない出来事だろう。でも、ボクにしては大きな一歩だ。今後の自信にも繋がる気がする。
勝利の余韻に浸っていると、複数の男たちがやって来た。このならず者みたいな連中には心当たりがある。
「よぉ、ご苦労。こいつらは俺たちが連行していくぜ」
「君たちは警備隊か?」
「おぉよ」
「もう少し早く駆けつけることもできたんじゃないか? そうすれば被害はもっと少なかったはずだ」
「うっせぇよ! 女に抱きつかれて鼻の下を伸ばしてるような奴な言われたかねぇな」
警備隊の連中は小バカのしたように嗤う。
「ルベタを嗤う資格なんてないわよ」
「んだとぉ! このアマァ!!」
レミィの反論に親衛隊の一人は激昂して拳を振り上げる。固く瞼を閉じるレミィ。だけど、そうはさせない。ボクは腕を掴んで相手を睨めつける。《剛力》を発動させているため振りほどくこともできないようだ。
「放しやがれ!」
「海賊たちをさっさと連れて行きなよ」
「ちっ、いい気になってんじゃねえぞ!」
警備隊員たちは、安っぽい捨て台詞を残し、海賊を引き連れて屋敷へと引き返していった。
「ベーッ!」
レミィが遠ざかっていく警備隊の背中に向かって舌を出す。また新しいレミィの一面を知ることができたな。
「お疲れ。ルベタのお陰で助かったぜ」
警備隊と入れ違いにやって来た男は満面の笑顔を見せている。この人はたしかピラックの商人ラルバンだ。ポポルと一緒に来た時に会ったんだよね。
「ラルバンも無事だったんだね。よかった」
「ラルバンさんも町中で暴れまわってた海賊と戦ってくれてたの。すっごく強かったんだから」
ラルバンは豪快な笑い声をあげる。
「なぁに、ルベタに比べりゃ大したことはしてねぇよ」
「さすがは元警備隊の隊長さんね」
「えっ? ラルバンって警備隊にいたの?」
レミィの言葉に反応する。
「警備隊といってもリゲックの野郎の代じゃねぇぞ。先々代と先代……つまりリゲックの親父さんと兄に仕えてたんだ」
「へぇ、リゲックに兄がいたのか」
「ああ。先々代がリゲックの父ダザン様、先代が兄トゥナム様だ。まぁ、リゲックの野郎が当主になって引退したがな」
その時、脳裏にある人物の顔が浮かんだ。
「それじゃ、スヴェインさんとも知り合いなのか?」
頷くラルバン。
「知ってるさ。あいつはダザン様を誰よりも尊敬していた。ダザン様が亡くなったあとも屋敷に残って、その志を引き継ごうとしてるみてぇだな」
「じゃあ、トゥナムさんって人はどうしてるんだ?」
その質問がでた瞬間、ラルバンはもちろん、レミィも表情を曇らせてしまった。
「と……とにかく! 今はルベタの治療が最優先なの!!」
強引に話を切り上げるレミィ。そして、ボクを病院へと連行されるのだった。




