魔王ルベタ④
改稿済みです。
文中の《 》はスキル名です。
「さて、と」
改めて辺りを見回す。ボクは崖の下の小さな浜辺に立っている。
見上げれば、けっこうな高さがある。あんな所から落とされてよく無事だったものだよ。いや、無事とは言えないか。一応、死んじゃってるわけだしね。
「どうやって上に戻ろうかなぁ……」
『飛べばよかろうよ』
途方に暮れているボクにリバス様が言う。たしかに飛べれば楽なんだけど?
「そんな事ができるんですか?」
『我を誰だと思っておる。魔王リバスに不可能などない。スキルを使えば容易いことだ』
「スキル?」
『我が修得しておる数多のスキルの一つに《飛行》があるのだ』
リバス様は得意気だ。空を飛ぶことができるなんて、さすがは魔王様!
「それで、スキルはどうやって使うんですか?」
『そんな事も知らぬのか。やれやれ、このような無知な者と肉体を共有せねばならぬとは嘆かわしいことだ』
ほんとに一言多い人だよね。ボクはさっきまで文句なしの最弱モンスターだったんだから仕方ないじゃないか。そもそも、こんな面倒な状態になったのはリバス様に原因があるのに…。
『しかたない。スキルについて説明してやらねばならぬようだな。スキルとは己に備わった特殊能力のことだ。いかに貴様とてここまでは理解できよう?』
カチンとくるけど黙って頷く。
『修得しているスキルの中から使用したいスキルをイメージすればよいだけだ。それが今回は《飛行》というわけだな』
うーむ、特殊能力をイメージするとはどういう事なんだろう。正直なところ、よくわからない。だけど、聞き直したらバカにされるんだろうな。
『まずは自分の身体が浮かび上がるイメージをしろ』
リバス様の助言に従う。両目を閉じて集中する。
身体が浮かび上がるイメージか。よし、とにかくチャレンジするしかない!
………………
身体が軽くなったような感覚がして薄目を開けてみる。
「うわっ、浮いてる!?」
身体が浮いていることに驚いて集中力を欠いたためなのか、すぐに着地してしまった。
『《飛行》を使ったのだ。浮いて当たり前であろう。そんな事で集中力を欠くとは情けない。もう一度だ』
冷静なツッコミを受ける。疑っていたわけじゃないけど、自分の身体が浮かんでいたら誰だって驚くよ。正確にはリバス様の身体なんだけど……。
何はともあれ、ここから脱出しなきゃいけない。ボクはさっきと同じようにして《飛行》を使う。身体は少しずつ上昇していき、今度は崖の上まで戻ってきた。
「やったぁ! 脱出成功だ!!」
歓声をあげる。
また、落ちてしまわないようにゆっくりと前進して安全な所まで移動する。
後ろを振り返る。太陽は水平線の向こうに沈みかけている。落ちたのは昼前くらいだったはず。
「もう夕暮れかぁ。今日はひどい目に遭ったよ」
沈み行く夕陽を眺めながら呟く。最弱モンスターだったボクが魔王になっちゃうなんて信じられない。今でも実感はない。夢を見てるのかとさえ思えてくる。だけど、これは現実なんだ。紋章が宿る右手を強く握る。
ボクなんかが魔王としてやっていけるとは到底思えないけど、できるだけのことはやってみるつもりだ。
気持ちを前向きにすることで、これから始まる新しい生活に少しだけ希望が見えた気がした。
読んでくださって、ありがとうございます!
次話は2022/4/5(火) 21:00に投稿予定です。